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[社説]朝鮮日報は「間違っても責任はない」式の北朝鮮報道は止めよ

登録:2019-06-03 23:15 修正:2019-06-04 07:40
金正恩委員長が2日に観覧したと朝鮮中央通信が3日報道した軍人家族芸術公演に、失脚説が出ていたキム・ヨンチョル労働党副委員長(白丸)が同席し、健在が確認された=平壌/朝鮮中央通信・聯合ニュース

 朝鮮日報が「粛清された」として特ダネ報道した北朝鮮のキム・ヨンチョル労働党副委員長が健在と確認された。北朝鮮のメディアは3日、キム副委員長が前日に金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長に随行して公演を観覧したというニュースと共に写真を載せた。朝鮮日報の報道ははっきりと誤報となったのだ。いつまでこのような無責任な報道が続けられるのか問わざるをえない。

 朝鮮日報は先月31日付の1面で「朝米首脳会談を総括したキム・ヨンチョル労働党統一戦線部長が解任され強制労働中」と報道した。朝米非核化実務交渉を担当した国務委員会のキム・ヒョクチョル対米特別代表は処刑されたことが分かったと書いた。事実ならば大きな波紋を呼ぶ内容だった。しかし、朝鮮日報が根拠に提示したのは匿名の「対北朝鮮消息筋」が全てだった。

 キム副委員長の健在が確認された以上、キム・ヒョクチョル特別代表の処刑説も事実ではない可能性が高い。対米交渉を総括するキム副委員長が何の異常もないのに、その部下の実務責任者を処刑するというのはつじつまが合わない。韓国と米国の情報当局も「粛清説は確認されていない」として言及を避けている。3月に処刑されたというキム特別代表の姿が4月13日に目撃されたという主張も出ている。

 朝鮮日報は過去にも何度も北朝鮮関連の誤報をしたことがある。2013年には三池淵管弦楽団のヒョン・ソンウォル団長が「わいせつ物作成」疑惑で逮捕されて銃殺されたと報道したが、誤報と分かった。また1980年代には「金日成(キム・イルソン)殺害説」をまき散らすこともした。このような根拠ない北朝鮮関連の報道は、事実の有無を直ちに確認できず、誤報と確認されても責任を問わないという点のために絶えず出てくる。北朝鮮についての否定的報道に飛びつく国内の保守層に好まれるという点も誤報の量産を煽っている。

 しかし、このような無責任な誤報は「北朝鮮は信じられない国」という先入観を強化することによって対北朝鮮交渉を難しくさせる結果を生む。「交渉の代表を処刑する国なのに、このような国と交渉する必要があるのか」という懐疑論を増幅させる可能性が大きい。保守系マスコミの「間違っていようと責任はない」式の報道が、このような政治的策略の上にあるではないのかと疑いを持つ。保守マスコミは今からでも「とりあえず出してみる」といった誤った報道の慣行と決別すべきだ。さもなければ、結局は信頼喪失につながり国民と読者に無視されるほかない。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/896481.html韓国語原文入力:2019/06/03 20:20
訳T.W

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