昨年3月までホワイトハウスでドナルド・トランプ大統領の外交安保政策を補佐したハーバート・マクマスター元国家安保補佐官が「昨年米朝首脳会談がなければ、戦争に向かって進んだだろう」という趣旨の発言をしたと、朝日新聞が1日付で報道した。マクマスター元補佐官は、朝日新聞とのインタビューで「北朝鮮との軍事衝突を避けたいと思ったが、最悪の事態に備えるため、あらゆる軍事的選択肢を準備しておかなければならなかった」とし、このように述べたという。そして「軍事攻撃がどのぐらい現実的だったか」という質問に対し、「もし方針転換が実現できていなければ、戦争に向かって進んでいただろう」と答えた。
マクマスター氏は「方針転換」が具体的に何を意味するかについては説明しなかったが、韓国が調停した朝米首脳会談をトランプ大統領が受諾したことを指すものと見られる。昨年初めまで軍事的緊張が急速に高まった朝鮮半島の状況が、朝米首脳会談をきっかけに「対話と交渉局面」に切り替わり、戦争の危機が解消したことを確認するという点で、この発言は意味がある。
現時点でマクマスター氏の発言に注目するのは、戦争の危険を減らした朝米の非核化交渉が、ハノイでの第2回首脳会談が物別れに終わった後、膠着状態から抜け出すことができず、朝鮮半島の緊張を再び高めているという懸念のためだ。最近、北朝鮮は制限的なレベルではあるものの、短距離ミサイルを相次いで発射しており、米議会や政府では対北朝鮮制裁の強化の声が高まっている。過去に戻らないためには、朝米の柔軟な態度が極めて重要な時点だ。
昨年、「方針転換」に導き出す役割を果たしたのは韓国政府だった。そうした「転換」の結実をまだつかみ取れないからと言って、政府の政策を猛非難する保守野党とマスコミの態度は、戦争の危険性を考えると説得力に欠ける。遅々として成果が不透明な対話努力だとしても、戦争に向かって進むよりは良い選択ではなかろうか。