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[寄稿]日本の排外主義

登録:2018-12-02 18:44 修正:2018-12-02 23:25
山口二郎・法政大学法学科教授//ハンギョレ新聞社

 目下、日本のテレビ、新聞のニュースが追いかける最大の話題は、カルロス・ゴーン氏が巨額報酬を有価証券報告書に記載しなかったという容疑で逮捕された一件である。日産自動車を立て直した世界的経営者が逮捕されたのだから、衝撃は大きい。

 しかし、逮捕から十日経っても、事件の全体像は見えてこない。事件の第一報を聞いたときに、私は巨額脱税や粉飾決算などの重大犯罪につながるのかと想像した。しかし、そのような展開を示唆する報道はない。有価証券報告書の記載漏れだけなら、政治資金収支報告書の誤りなどと同様に、違反を指摘し、修正させるという程度で話は終わるはずである。刑事事件に詳しい法律家からは、検察の暴走と指摘する声も上がっている。また、日産自動車の経営権を日本人に取り戻すためのクーデターに検察が乗ったという説もある。

 大量の人員整理によって日産を立て直し、自分は十億円単位の巨額報酬をもらう経営者に対して、社会的非難はあるだろう。私も、首切りをいとわないだけの人物を経営再建のカリスマともてはやすことには疑問を感じる。しかし、それと刑事責任は別問題である。まして、日本企業のトップに外国人が君臨するのは面白くないという感情論はくだらないと思う。

 この事件を契機に、日本の刑事司法の野蛮さについて国際的な関心が向けられていることは、人権保障を充実させる上では、良いことである。日本では、逮捕されると最大20日間勾留され、検察官の取り調べを受ける。容疑を否認している場合は、ほとんど勾留が認められ、弁護士以外は接見できない場合も多い。長期間の勾留によって容疑者を追い詰め、自白を得ることで起訴に持ち込む日本の手法は、人質司法とも呼ばれている。これは冤罪を生む原因となってきた。刑事事件の取り調べについても、日本はグローバルスタンダードを取り入れるべきである。ゴーン氏の事件を契機に、国際的な批判に耐えられる刑事司法に変えていくことが望まれる。

 同じ時期に、日本の国会では外国人労働者を拡大するための入国管理法の改正案が審議されている。これについて、人手不足に対処するため、急を要すると政府は説明している。しかし、その中身は極めてあいまいである。どのような条件を備えた人を合法な労働者とするのか、具体的なルールはすべて政令など、役所のルールに任せるという。また、今まで技能実習生制度の下で、外国人を劣悪な条件、低賃金で酷使する悪弊が続いてきたことをいかに是正するかも明らかでない。外国人を日本社会に受け入れる仕組みが全くできないままで、また、外国人労働者に対する人権保障の仕組みも明確でないままで、外国人を入れれば大きな問題が起こるのは必至である。

 日本企業を動かしてきたエリート経営者の外国人には犯罪の疑いをかけて抑圧し、途上国の外国人は安価、便利な労働力として利用しようとしている日本では、一定のルールに基づいて外国の人々と対等に付き合うという感覚が根付いていないと痛感させられる。

山口二郎・法政大学法学科教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2018-12-02 18:17

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/872693.html

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