日帝による強制徴用の賠償をめぐる韓日間の対立が、誰がより臆病なのかを判別する“チキンゲーム”の様相を強めている。最高裁判所(大法院)が昨年10月、新日鉄住金や三菱などの日本企業に日帝強制徴用被害者への賠償を命じたが、日本政府は「1965年の請求権協定で解決された問題」だとし、該当企業に「賠償拒否」の指針を下した。
徴用被害者側は、日本が最後まで応じない場合、これら企業の差し押さえ資産を売却する計画だという。しかし、資産の売却が執行されれば、日本政府は報復に出ると公言している。報復関税などの制裁は、日本にも被害が大きく、断行するのは難しいという分析もあるが、安倍晋三政権がそのまま見過ごす可能性は低い。日本の制裁が韓国の対抗措置を招くことは必至であり、韓日間の類を見ない経済戦争につながりかねない極めて危険な状況だ。
歴史をめぐる韓日間の対立は、昨日今日の問題ではない。にもかかわらず、今この時期に激しい破裂音が鳴り響く背景には、両国の政治環境をめぐる条件と状況の変化がある。冷戦時代、安定的な韓日関係は、経済発展のために日本の資本と技術が必要だった韓国にとって、朝鮮半島を安保の生命線と考えてきた日本にとって、また韓日両国を東アジア反共の砦として築こうとした米国にとって重要だった。このため、過去の歴史問題は韓日関係を揺さぶらない程度で取り繕うよう強いられた。
ところが、1990年代以降、冷戦の解体や韓国の民主化の進展、韓日間の経済格差の縮小などと共に、情況が変わり始めた。これまで押さえられてきた過去事の真相究明と被害者賠償要求が噴出したのだ。これに対し、安倍政権が国内の右傾化ムードに後押しされ、強硬対応を表明したことで、過去の歴史問題をめぐる対立が最高潮に達している。北朝鮮の核の脅威が浮き彫りになった1990年代中盤以降は、韓日関係を韓米日3角安保協力の枠組みで管理しようとする試みもあったが、これも最近、朝鮮半島情勢が対話局面に転じてからは、実効性を失った。
一時しのぎの方策であれ何であれ、直ちに強制徴用賠償問題が両国関係を破局に追い込むことを防ぐために、外交的解決策の模索が必要なのは言うまでもない。しかし、状況はそう簡単ではない。韓日外交当局は先日、実務接触を開いて協議を行ったが、互いに立場の相違を確認しただけだ。
安倍政権はこの問題について「韓国政府が解決すべき問題」だとして、妥協はないという立場を貫いている。三菱は当初、今回の訴訟過程で比較的柔軟な姿勢を示した。これまで徴用被害者側と約10回にわたり協議しており、「被害者に直接賠償するのは困難だが、家族のための奨学基金を設立するなどの補償は検討できる」という提案もしたという。ところが、最高裁の判決後、日本政府が「賠償や和解などに応じてはならない」という指針を下してから、態度を変えて協議要請に全く応じていない。
文在寅(ムン・ジェイン)政府も外交交渉に積極的に臨んでいない。このような態度を理解できないわけではない。徴用賠償は司法府の判決であり、三権分立上、政府に裁量権があまりないのが事実だ。歴史的教訓もある。1965年の請求権協定や2015年の慰安婦の合意は、過去の歴史問題の外交的解決を目指した試みだった。しかし、被害者の要求に背を向けたこれらの外交的妥協は、軋轢の解消に失敗し、後に新たな混乱の火種となった。生半可な外交的妥結には慎重にならざるを得ない。
しかし、放置は政府の職務遺棄に近い。現在、韓日関係の興亡の重荷は、徴用被害者にすべて背負わされている。賠償を取り付けるためには、日本企業の差し押さえ資産の現金化手続きを踏まなければならないが、この場合は、日本が報復措置に乗り出す可能性が高い。これは、ともすれば韓日間の正面衝突に飛び火する事案であり、徴用被害者たちが個人レベルで対応できる限界を超える問題だ。
いずれにせよ、国家全体に影響を及ぼす事案であるだけに、政府が乗り出すほかない。利害当事者である徴用訴訟代理人団や民間専門家とも話し合い、意見を求めるとともに、日本に対してももう少し積極的な姿勢で臨まなければならない。今すぐ解決策を見つけるのが難しいからといって、あきらめて放置するには、あまりにもリスクが高い。