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[コラム]百年のマラソン

登録:2018-11-04 21:54 修正:2018-11-05 07:45
マイケル・ピルズベリーの『百年のマラソン』//ハンギョレ新聞社

 米中貿易戦争の背景とトランプ行政府の中国政策を理解するための必読書に上げられる本がある。米国ハドソン研究所の中国戦略センター長であるマイケル・ピルズベリー氏が書いた『百年のマラソン』だ。コロンビア大学で中国研究で博士学位を受けたピルズベリー氏は、レーガン行政府時代から国防総省などで仕事をし、数十年にわたり軍部をはじめとする中国の高位級人物と緊密に接触してきた中国通の戦略家だ。トランプ大統領は9月29日、記者会見で「中国に対する最高権威者であるピルズベリー」として、彼の影響を受けたことに直接言及もした。

 『百年のマラソン』のメッセージは簡明だ。中国共産党は政権を取った1949年から“最強大国”になろうというグローバルな野望を育ててき、毛沢東、トウ小平、習近平に至るまで、建国100周年の2049年には米国を倒すという目標の下で米国の技術を盗むなど、手段と方法を選ばずに覇権を追求してきたということだ。これを主導したのは、中国軍部の強硬派だとピルズベリー氏は主張する。ソ連を牽制する米中和解の大胆な戦略を立てたのも、強硬派の将軍である陳 毅・聶栄臻・徐向前・葉剣英で、習近平主席の“中国の夢”は、人民解放軍の将軍だった劉明福が書いた『中国の夢』(2009)に根元を置いていると指摘する。中国が民主主義へ向かって責任あるパートナーになると思った米国の対中国包容政策は完全にだまされたもので、米国は今や中国の浮上を阻むために全方向的な戦略を実行しなければならないという内容だ。

 10月4日、マイク・ペンス副大統領が中国に向けた「新しい冷戦宣言」と呼ばれる演説をした場所も、ピルズベリー氏が率いるハドソン研究所中国戦略センターだった。ペンス副大統領は「中国は挑発的な方法で私たちの国内政策と政治に介入している」として、中国の貿易・投資不公正行為、知的財産権“盗用”、国家資本主義の不公正競争、ハッキングとスパイ行為、一帯一路の“借金の罠外交”、ウイグル人100万人強制収用所拘禁を逐一非難した。

 米国指導部のこうした認識を考慮すれば、トランプ大統領と習近平主席の12月1日の首脳会談で米中葛藤が終わりそうには見えない。関税賦課中断程度の妥協、または“一時的休戦”を展望する見方が多い。中国の先端技術確保に対する米国の圧迫、台湾・南シナ海などを囲む戦略的対決、軍備競争は今後も高まり続け、北朝鮮核問題をめぐる米中の緊密な協力は期待し難い。

パク・ミンヒ統一外交チーム長//ハンギョレ新聞社

 新たな冷戦が長期化すれば、複雑にからまった米中経済構造のために世界は米ソ冷戦時よりもはるかに大きな苦痛を味わうことになるだろう。だが、米中両国の政治的退行が一種の敵対的共生関係を形成していて、互いに退きにくい状況を作っている。自己反省のない米国の中国たたきを恨みながらも、中国政治の退行を憂慮して、改革開放と自力更正のスローガンの間で右往左往する経済政策にため息をつく中国人も多い。最近会ったある中国人学者は「貿易戦争で利益を見るのはトランプと習近平だ。すべての問題は外部の敵のせいにして、政治と社会は思う存分統制できる口実になるから」と話した。

 中国の著名な経済学者は「米国の金融資本が利益を一人占めし、大衆はポピュリズムにすがりつき、米国は中国を敵にして危機を突破しようとする新しい冷戦を始めた。中国も戦う他はない。双方が『どっちがより悪いのか』の競争を行っている」と話した。新しい冷戦はいつまで続きそうかと尋ねた。「一方が倒れるまで」という返事が返ってきた。

パク・ミンヒ統一外交チーム長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/868758.html韓国語原文入力:2018-11-04 19:01
訳J.S

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