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[コラム]また9月になれば

登録:2018-08-03 01:40 修正:2018-08-03 06:10
チョ・ギウォン東京特派員//ハンギョレ新聞社

 毎年9月になれば、日本の関東地方の各地で関東大震災朝鮮人虐殺被害者慰霊祭が開かれる。今年も事務所に早目に慰霊祭開催を知らせる手紙が来た。1日には最も代表的な行事である東京都墨田区の横網町公園での追悼式が開かれる。8日には東京東部の荒川堤防で追悼式が開かれる。すべて関東大震災当時「朝鮮人が井戸に毒を入れた」というようなデマを口実に軍隊、警察、自警団が銃や日本刀、竹槍で朝鮮人を殺害した場所と関連したところで開かれる慰霊祭だ。

 今年は関東大震災朝鮮人虐殺に関連した行事が真夏の東京ですでに開かれている。韓国系商店が密集した東京の新大久保にある高麗博物館では、「朝鮮人虐殺と社会的弱者―記憶・記録・報道」というタイトルで、先月4日から企画展示会が開かれている。先月21日からは東京の世田谷区にある小劇場「ザ・スズナリ」で「九月、東京の路上で」という演劇が公演されている。この演劇は、ノンフィクション作家の加藤直樹氏が書いた同名のルポを基に劇団「燐光群」が作った演劇だ。

 行事が真夏から続いている理由は、日本の市民社会が日本社会に吹いている関東大震災朝鮮人虐殺の事実否定の動きに危機感を感じているためだ。

 昨年8月、小池百合子・東京都知事は横網町公園で開かれる朝鮮人虐殺追悼式に追悼文を送らないと宣言した。公園に追悼碑ができた1970年代以後、歴代の都知事で追悼文を送らなかった人はいなかった。当時、小池都知事はすべての関東大震災犠牲者に対する追悼の意を他の行事に参加して表明したので、朝鮮人犠牲者に対してのみ別に追悼文を送ることはしないと言った。彼女は、虐殺と自然災害の被害は性格が違うという批判に「様々な歴史認識があると考える」と述べた。

 小池都知事が追悼文の送付を拒否すると、横網町公園がある墨田区の区庁長も追悼文を送らなかった。朝鮮人虐殺の事実をなかったことのようにしようとする試みだという批判が絶えなかった。先月22日「九月、東京の路上で」演劇公演現場で会った作家の加藤氏は「小池知事の追悼文送付拒否は、横網町公園にある朝鮮人犠牲者追悼碑まで撤去して、事件自体を忘れ去られるようにしようとする右翼の圧力のためと見られる」と話した。

 この演劇の内容の中でも、小池知事の追悼文送付拒否事件が言及される。演劇では、関東大震災朝鮮人虐殺が広がった1923年9月の東京の風景と、2018年の東京の姿を絶えず交差させて見せ、朝鮮人虐殺が単に過去のことではないことを再確認する。

 関東大震災朝鮮人虐殺は、他民族と社会的少数者に対する差別と敵対感が極端な形で表出された悲劇的事件だった。関東大震災当時、朝鮮人だけが殺されたわけではなかった。日本人より少ない賃金を受け取り仕事をしていた中国人労働者、そして当時日本社会の主流に反対した社会主義者も共に殺された。

 2018年の日本でも、社会的少数者に対する差別の流れは相変らず目につく。自民党の杉田水脈議員は、月刊誌「新潮45」8月号への寄稿文で「LGBT(レズビアン、ゲイ、両性愛者、トランスジェンダー)カップルのために税金を使うことが賛同を受けられるか。彼らは子供を作らない、つまり“生産性”がない」と書いた。社会的弱者を差別し敵対視するこうした発言を聞いて、関東大震災の悲劇を想起させると言えば行き過ぎだろうか?

チョ・ギウォン東京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/855991.html韓国語原文入力:2018-08-02 18:53
訳J.S

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