文在寅(ムン・ジェイン)大統領がシンガポール訪問最終日の13日に行った「シンガポールレクチャー」で、南北経済共同体構想と朝鮮半島平和ビジョンを明らかにした。昨年7月、ドイツで明らかにした「ベルリン平和構想」に次ぐ第2の平和構想と言える。1カ月前の歴史的な朝米首脳会談が開かれた場所で、南北の平和と繁栄の構想を語ったのは意義深いことだ。
文大統領の「シンガポールレクチャー」は、多方面において1年前のベルリンの構想の発表と対比を成している。ベルリン構想は最悪の朝米対立の中で、北朝鮮を対話の場に呼び込むための努力に焦点を合わせていたが、シンガポール演説は南北首脳会談と朝米首脳会談を通じて非核化議論のテーブルが設けられた状況を反映し、“非核化以降”のビジョンを提示することに重きを置いた。南北経済協力と共同繁栄の未来像を提示することで、北朝鮮の非核化を促す意図が明確に読み取れる。北朝鮮が文大統領の構想に積極的に応え、朝鮮半島経済共同体の建設に協力する日が一日でも早く訪れることを願う。
南北が新しい経済地図を描きながら経済共同体の建設に進むためには、まず国際社会の対北朝鮮制裁が解除されなければならないのは、言うまでもない。文大統領は制裁解除の条件とされる「北朝鮮の非核化の履行」を強調したのは、その意味で当然のことだ。文大統領が演説で明らかにした通り、北朝鮮が経済発展に総力を傾けたいなら、非核化履行案をさらに積極的かつ具体的に提示する必要がある。同時に米国は北朝鮮が非核化を加速化できるよう、それに見合う包括的処置を速やかに推進しなければならない。
文大統領が朝鮮半島における平和の増進に向けて、ASEAN(東南アジア諸国連合)議長国のシンガポールが積極的な役割を果たすよう要請したのも目を引く。文大統領は、シンガポールが北朝鮮を国際社会の一員として取り込んで、普通の国になれるよう助けてほしいと訴えると共に、韓国とASEAN間の協力と交流の枠組みの中に北朝鮮を包容することの重要性を力説した。北朝鮮は多国間安保協議体としては唯一、ASEAN地域フォーラム(ARF)に加盟しており、対北朝鮮制裁が強化される前までASEANと経済協力を進めてきた。北朝鮮とASEANの関係発展の基礎が整っているわけだ。韓国政府はASEANが北朝鮮の国際社会への進出を助けられるよう、さらに積極的な役割を果たす必要がある。
文大統領が演説後の質疑応答で「国際社会の前で朝米首脳が直接した約束を守らないなら、厳重な審判を受けるだろう」と述べたのは、特に注目に値する。北朝鮮と米国が「完全な非核化」と「北朝鮮の体制保証」を約束したことを想起させ、両国に約束の履行を求める圧力をかける発言だ。普段の文大統領らしからぬ強い口調だが、朝米首脳会談以降、あまり進展が見られない今の局面では必要な発言と言える。政府は、文大統領の「シンガポール平和構想」が実を結ぶことができるよう、朝米交渉の促進に全力を傾けてほしい。