本文に移動

[寄稿]トランプの北朝鮮に対する“政治資本”の投資

登録:2018-07-02 06:26 修正:2018-07-02 09:16
ジョン・フェッファー米国外交政策フォーカス所長//ハンギョレ新聞社

 ドナルド・トランプ米大統領は、このような話を好む。

 あなたが銀行に行って300万ドルを借りたのに、返済できないとすれば、それはあなたの問題だ。しかし、銀行から3億ドルを借りたのに、返済できないとなれば、それはあなたと銀行、両方の問題になる。そのため、膨大な投資を行った銀行はあなたが失敗するようにほうっておけない。あなたの成功はすなわち銀行の成功になる。

 トランプは、北朝鮮に似たような投資をした。その投資は金銭的なものではない。平壌(ピョンヤン)には“まだ”トランプタワーもない。

 その代わり、トランプは北朝鮮に大規模な“政治資本”を投資した。彼は、米国のあらゆる対外政策の既得権層の助言を無視し、シンガポールで北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長に会った。彼は、北朝鮮指導者が本当に非核化に着手する意向があるかどうかをめぐり冒険をしている。

 もう彼は莫大な投資をした北朝鮮との新たな試みが失敗で終わることを望んでいない。失敗は北朝鮮だけでなく、トランプ自身の問題になるからだ。

 トランプはすでに何度も北朝鮮に前払金を支払った。第一に、シンガポール首脳会談後の記者会見で、彼は金正恩を「非常に才能があり」、「非常にスマートで」、「非常に立派な交渉家」だと宣言した。北朝鮮の指導者が宣伝に活用できる大変素晴らしい贈り物だった。

 第二に、トランプは今年の夏に行われる予定だった韓米乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン合同演習を中止した。彼は自分の軍参謀たちや韓国政府と協議することなく、一方的にこのような決定を下したものとみられる。

 第三に、マイク・ポンペオ国務長官の最近の発言からして、トランプ政権は非核化に向けた厳格なタイムテーブルを主張していない。

 民主党やマスコミ、外交政策専門家たちはトランプが愚かな投資をしたと見ている。トランプは彼らにシンガポールの成果について、非常に悪い点数を付けられた。彼らは、北朝鮮がトランプを戦略的に圧倒しており、首脳会談で署名した共同声明はすべて“ショー”であり、内容が伴っていないと主張する。北朝鮮が非核化に向けた具体的措置を取るという点についても、極めて懐疑的だ。

 しかし、米国の外交政策エリートたちの分析は間違っている。トランプの投資はすでに重要な配当金をもたらした。

 南北は、南北関係改善に向けていくつかの重要な措置を協議している。彼らは南北共同連絡事務所の開設に向けて開城(ケソン)工業団地で作業をしている。離散家族再会を再開するための交渉も行われている。

 ここで非常に重要なのは、トランプが南北和解の進展を妨害していないという点だ。金正恩との首脳会談が成功したことを証明したい一心で、トランプは南北が具体的計画を作成するのに役立つ環境を整えている。

 もちろん、経済制裁という主要な障害が残っている。しかし、すべての制裁には例外がある。南北は、関係の進展に合わせて、開城工業団地のような合作事業を制裁の例外に含ませる案を模索しなければならない。

 しかし、このようなことを実現するためには、シンガポールでの首脳会談が非常に成功的であり、トランプが北東アジアの平和に貢献したという“有用なフィクション”を維持する必要がある。米国行政部が非核化のタイムテーブルを決めていないことは重要ではない。行政府が首脳会談の結果を議会にまだ報告していないのも、問題にはならない。

 重要なのはトランプがベンチャー企業の成功に投資をしたことだ。ベンチャー企業が失敗すれば、トランプも失敗することになる。したがって、トランプは失敗を望まない。

 同じく、金正恩もトランプの後任者が誰であれ、トランプを相手にした方がはるかに交渉しやすい点を理解しなければならない。金正恩が朝米関係の変化を望むなら、これから2年間、機会の窓は開いている。

ジョン・フェッファー米国外交政策フォーカス所長//ハンギョレ新聞社

 そうなれば、南北は完全かつ検証可能で不可逆的な平和に向けた具体的な処置を取るチャンスを掴めるだろう。シンガポール首脳会談は、実質的で中身のある内容で埋まるだろう。言い換えれば、南北は、多くの人たちが夢と希望を持って投資したがる、大きくなりすぎて簡単には潰せないような南北合弁事業を成し遂げられるだろう。

ジョン・フェッファー米国外交政策フォーカス所長(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/851444.html韓国語原文入力:2018-07-01 21:44
訳H.J

関連記事