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[社説]手を取り合った金正恩・トランプ「巨大な変化」が始まる

登録:2018-06-13 12:14 修正:2018-06-13 18:27
両首脳の出会い自体が「歴史的事件」
“非核化ロードマップ”の具体化はできなかったが
今後の会談通じて朝鮮半島の平和を
ドナルド・トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩国務委員長//ハンギョレ新聞社

 北朝鮮と米国が新しい時代の扉を開いた。

 金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長とドナルド・トランプ大統領は70年に及ぶ北朝鮮と米国の敵対関係を後にし、今まで一度も行ったことのない平和大長征の最初の足跡を歴史の新しい章に記した。両首脳は12日にシンガポールのカペラホテルで開かれた初めての首脳会談で、北朝鮮と米国の関係を再構築する歴史的な共同声明に署名した。朝鮮半島の非核化と両国の新しい関係樹立を約束することによって、北東アジアの平和定着に重大な転換点を設けた。1989年の米ソマルタ会談以後、最後に残った冷戦の残滓を取りはらう世界史的前進の信号弾を打ち上げた。平和を念願する世界の人とともに、8千万の南北の民族とともに北朝鮮と米国の首脳の初めての出会いに盛り込まれた意味を深く刻む。

 6・12朝米首脳会談の最も大きい成果は、共同声明という形で「完全な非核化と体制安全保証」の約束を盛り込み、両首脳が直接署名したものということができる。これとともに両首脳は「新しい北朝鮮と米国の関係」を樹立していくことにした。このような内容を込めた共同声明を両首脳の名前で出したことだけでも、今回の会談は成功として記録されるに値する。会談が開かれる直前まで果たして合意文が出されるか、出されるならばどのような形になるかをめぐってさまざまな観測があったが、共同声明という公式性の高い形で両首脳の意志を入れたことは積極的な意味を付与されるものだ。金委員長が署名に先立ち、「世の中は重大な変化を見ることになるだろう」と述べたように、この共同声明で両国の関係が今までとは違う根本的な変化に向かう道が開かれたといえるだろう。

 今回の首脳会談で最も関心を集めたのは「完全で検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)に両国が明確に合意するかということだった。綱引きの末に、両国は「4・27板門店(パンムンジョム)宣言」を再確認し「朝鮮半島の完全な非核化のために努力する」というレベルで合意を見た。その代わり、北朝鮮が最も大きい関心を見せていた体制の安全保証に関して両国は「朝鮮半島の平和体制構築のために共に努力する」という程度で妥協した。結局CVIDとCVIGつまり「完全な体制保証」が対等交換される最も高い水準の合意には至っていないと言える。

 しかし、CVIDとCVIGの対等交換が容易ではないことは予想されていたという点を考慮すれば、この程度の合意に至ったこと自体を低く評価する理由はない。4・27板門店宣言が過去の南北間の宣言や合意を徹底的に履行すると明らかにしただけに、この内容で事実上CVIGに代わるものと見る余地もある。ま、共同声明の前文に「トランプ大統領が北朝鮮の安全保証を提供することを約束した」という文句を入れて本文の限界を補完したという点も考慮しなければならない。一歩進んで、トランプ大統領が記者会見で韓米合同軍事演習中断の意思を明らかにしたのも、北朝鮮を安心させる措置といえるだろう。北朝鮮はこれまで軍事的威嚇の中断を要求してきたが、この要求を米国が受け入れる意向を明らかにしたことは、北朝鮮と米国の関係前進と北朝鮮の非核化の加速化に重要な力になるものと見られる。

ドナルド・トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩国務委員長が今月12日、シンガポールのカペラホテルで首脳会談を行った後、共同宣言に署名している=シンガポール/ロイター、聯合ニュース

 北朝鮮の初期非核化の措置を含む「非核化のロードマップ」に関して共同声明に具体的な内容が含まれなかったことは多少残念だ。両国が完全な信頼に達するまでは越えねばならない山は多いということを見せているといえるだろう。しかし、トランプ大統領が記者会見で、北朝鮮の核は重大威嚇にならないということが確実になったとき制裁を解除すると述べたことは示唆するものが多い。北朝鮮が核弾頭と大陸間弾道ミサイルを含め、米国に実質的な威嚇になる核プログラムを廃棄することを加速化すれば、制裁解除も早くなる可能性があることを確認したものといえる。両首脳は「共同声明に指摘された事項を完全かつ速やかに履行することを約束する」と述べているだけに、今後の会談を速やかに進め、非核化の実質的進展に合意を見なければならないだろう。

 共同声明の内容のうち、朝鮮戦争の際に死亡した米軍の遺骨などを直ちに送還することにしたことは、米国の関心事に応じることなので、米国内の世論を好転させて今後の交渉の潤滑油の役割をするものと見られる。共同声明に北朝鮮の高官級者とマイク・ポンペオ国務長官が早い時期に追加の会談を持つことを約束するといっただけに、より具体的な合意は今後の交渉を通じて成し遂げられなければならないだろう。特に、今回の共同声明に含まれなかった非核化と体制保証のロードマップを明確に描き出すのは、今後の交渉で迅速に妥結すべきだ。今回結論を出せなかった終戦宣言の問題も、最大限早くかたをつけることを望む。トランプ大統領が来週北朝鮮と米国がまた会うといったため、この会談を待ってみたいものだ。

 米中関係に根本的な変化をもたらした1972年の米中首脳会談、東西冷戦の終息を予告した1986年の米ソ首脳会談を見ても、6・12朝米首脳会談が両国の関係正常化に引き返すことのないプロセスの開始になることは明らかだ。しかし、北朝鮮と米国の関係が最終目標に到達するまでには、数多くの難関が前に置かれている。両国が互いに協力し努力してこそ、この難関を解決することができる。

 今回の朝米首脳の出会いは、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が果たした仲裁者の役割に力づけられた部分が大きい。朝鮮半島の運転者として危険で難しい時も運転席から離れずに、ついに首脳会談成功まで引き出した文大統領の努力がなかったら、北朝鮮と米国はこれほど早く関係正常化の出口を開けなかったであろうことは言うまでもない。文大統領は今後も朝米関係の道案内役として、両国の関係が確固たる正常な軌道に乗る時まですべての努力を惜しんではならない。

 北朝鮮と米国は首脳会談を通じて前例のない変化を約束したが、まだ朝鮮半島非核化と平和定着の初めての関門を通過しただけのことだ。前に進まねばならない道にどんな障害物があるか分からない。このすべての難関を越えてこそ、真の平和と繁栄の時代が開かれるといえる。南北米は困難が近づくたびに互いに心を寄せ合い、知恵を発揮するよう願う。

(お問い合わせjapan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/848816.html韓国語原文入力:2018/06/12 23:44(2595字)
訳T.W

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