平昌(ピョンチャン)冬季五輪の祝賀のために北朝鮮のキム・ヨンナム最高人民会議常任委員長が9日、韓国を訪問する。キム委員長は名目上は北朝鮮の国家元首だ。北朝鮮としては平昌五輪に最大限の優遇をすると見ることができる。また世界各国の首脳が大勢参加する五輪開幕式を通じて、北朝鮮が外交努力をするというシグナルと見られ、肯定的に評価するに値する。
大統領府は「歓迎」の立場を表明して「高官らの対話など多様な意思疎通の場を設ける」と述べた。政府はキム委員長の訪問を契機に、南北関係改善と朝鮮半島の平和論議が平昌以後も続くように礎を築かなければならない。さらに最近、駐韓米国大使のビクター・チャ氏の内定撤回で米国のトランプ政権内の強硬派の「鼻血戦略」の主張が議論になったために、より一層平和的ムード作りに努力しなければならない。米国も「圧力と制裁」ばかり強調して最初から門戸を閉じずに、北朝鮮と米国の対話の可能性を残しておくように願う。トランプ政権は制限的な対北朝鮮軍事打撃を意味する「鼻血戦略」について、行政府の内部でそのような議論をしていないと否認した。しかし、韓米の多くの専門家は相変らず憂慮と不安を隠せずにいる。米国が軍事オプションではない対話に向かって進む姿を見せてこそ、トランプ政権の話が信頼されるようになるだろう。
北朝鮮もまた、真に米国との対話を望むならば、平昌五輪の開幕式前日に開かれるパレードで最小限の誠意を見せることが必要だ。いくら「パレードは国内行事」と北朝鮮が主張しても、米国本土の攻撃を念頭に置いた大陸間弾道ミサイルをおおっぴらに示して誇示するならば、これは米国との対話の障害物として作用するほかはない。
文在寅(ムン・ジェイン)大統領は5日、国際五輪委員会の総会の開幕式演説を通じて、68年前に両親が北朝鮮から退去してきた家族史に言及し、「その年の冬は朝鮮半島に深く刻まれた辛い歴史」と話した。韓国と北朝鮮が開幕式に同じ立場と五輪史上初めての南北合同チームが出場する平昌五輪は、昨年末でも想像しがたいことだった。もはやスポーツを通じた“平和”が“平昌”だけで終わってはならないだろう。“平昌”を足がかりに朝鮮半島が平和に向かって行けるよう、国民皆が力を集めなければならない時だ。