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[記者手帳]THAADと独士派…そして本物の「独士」のための弁明

登録:2017-06-19 04:35 修正:2017-06-19 07:31
キム・クァンジン前国家安保室長(左)とハン・ミング国防長官//ハンギョレ新聞社

 独士(トクサ:韓国語で毒蛇と同じ発音)派。名前からしてすさまじく、恐ろしい。独士は「ドイツ陸軍士官学校」の略語だ。韓国軍は1965年からこれまでドイツ陸軍士官学校、ドイツ連邦軍(ドイツ軍)にほぼ毎年陸士生徒1人を含め、将校2~3人を派遣してきた。

 数年前から人事の季節になると、軍内部では「また独士か」との批判の声が上がった。ドイツ陸軍士官学校留学生出身が進級や補職で頭角を表したからだ。陸士24期から43期までドイツ陸軍士官学校に留学した22人のうち、16人が将軍になった。(陸士の期数に40を加えると、一般大学に入学した年度になる)

 「独士」をめぐる議論が軍外部で起こったのは今月初め、THAAD(高高度防衛ミサイル)報告漏れの渦中だった。「THAAD追加搬入に関する故意的報告漏れが可能だったのは、(内部に)なれ合い構造があったからだ。特定の人脈に振り回されてきたから、このような出来事が起きたのではないか」(共に民主党のホン・イクピョ政策委員会首席副議長)

 独士派問題の中心にはキム・グァンジン前国家安保室長がいる。キム前室長は過去10年間にわたり軍人事や政策を牛耳った実力者として知られる。昨年THAADの配備・導入の過程を見ると、キム・グァンジン前室長、リュ・ジェスン前国防部国防政策室長などドイツ陸軍士官学校留学生らが中核的役割を果たした。

 一部では独士派と独士を一緒くたにして、国防を私物化した安保積弊の代名詞のように批判するが、私はドイツ陸軍士官学校(ドイツ連邦軍)に対するこのような指摘は不当極まりないと思う。国防改革と各分野の積弊を清算する際、ドイツ連邦軍から学ぶべきことが多いからだ。

 第二次世界大戦で敗戦した後、1955年に西ドイツが創設したドイツ連邦軍の軍事教育の2大軸は「内面指導」( Innere Führung)と「任務型指揮」(Führen mit Auftrag)だ。特に、内面指導はヒトラーとナチ党の軍隊としてドイツ軍が犯した歴史的な過ちを繰り返さないため、確立したドイツ連邦軍の公式指揮原則だ。内面指導の究極の目的は、民主主義を守護する軍を育成し、「制服を着た市民」としての軍人を具現することだ。

 第二次世界大戦当時、ドイツ軍は優れた戦闘力を誇ったが、随所で性的暴行や略奪、民間人の虐殺など非人道的な犯行を犯した。戦争が終わって故郷に帰ってきたドイツ軍たちに、家族は「どうしてそんなことができたのか」と問うた。彼らは「命令には絶対服従せざるを得なかった」と答えた。

 朴槿恵(パク・クネ)政権当時にも同様の状況が起こった。当時、文化体育観光部の公務員らはブラックリスト(文化芸術界支援排除のリスト)について「不当だと思ったが、指示を拒否できなかった」と話した。組織の中で、個人が不当な指示に抵抗することは難しい。このため、ドイツ連邦軍は所属の軍人に人間の尊厳性や人権を侵害する命令を受けた場合、不服従の権利を与え、そういう命令を下した上官を申告するようにした。国政壟断の事態を制度的に遮断するために、公務員にドイツ連邦軍のような「不服従権利」を与える案も検討してみる必要がある。

クォン・ヒョクチョル地域・エディター//ハンギョレ新聞社

 最近、THAAD関連報告漏れについて「政治が過度に介入して軍の特殊性と固有の領域を無視している」という軍内部の不満もあるだろうと、私は推測する。以前私が国防部を担当した頃に会った軍当局者たちの中には、「民間人が軍事問題に干渉すれば、戦闘力が弱まって結果的に敵の利益につながる」と主張する人も少なくなかった。文民統制の原則と衝突するこのような発想は危険だ。軍隊がナチス・ドイツ軍のように社会とかけ離れた「国家の中のもう一つの国家」になりかねないからだ。

 私はTHAAD報告漏れが単なる軍の綱紀確立レベルの問題ではなく、「国軍がいかなる哲学的基盤に基づいて組織を運用するか」の問題だと考えている。この質問が国防改革の第一歩になると思う。

クォン・ヒョクチョル地域・エディター(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/799262.html?_fr=st1 韓国語原文入力:2017-06-18 20:10
訳H.J(1826字)

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