中国の韓国に対する“THAAD(高高度防衛ミサイル)報復”が度を越している。事実上、中国政府が各種の報復措置を主導している。大国を自任する国としては稚拙で、韓中関係の根本を害しかねないという点で危険だ。
観光と旅行を総括する国家旅遊局が2~3日、全国の主要旅行会社幹部を呼び韓国への観光客送出禁止方針を通知したことは、中国政府の歪んだ姿をよく見せる。物証を残すまいと口頭で指示した姿からが狡猾さまで感じられる。THAAD用地を提供したロッテは、すでに不買運動や商品撤収など全方向的な圧迫を受けていて、文化商品・化粧品・免税店の被害も拡大している。中国のこうした行動は、2012年尖閣諸島(中国名 釣魚島)領有権問題で衝突した日本を相手に2年以上にわたり取った旅行制限措置を想起させる。この措置で、以後に日本を訪れた中国人観光客と日本の対中国輸出は10%程度減った。
中国の行動は、合法的な民間経済活動を制裁対象としている点で国際規範に外れる。THAAD配備の主役である米国は脇に置いて、中間に挟まった韓国を狙うことも正しくない。さらに重要な点は、こうした報復が問題の解決に全く役立たないという事実だ。両国国民の感情が悪化すれば、他の対話も影響を受けることになる。中国としても経済的被害を受けざるをえない。国交正常化25周年をむかえる韓中関係が、このように大きな壁にぶつかることは中国も望まないだろう。
韓国政府のいい加減で無力な姿も指摘せざるをえない。朴槿恵(パク・クネ)政権のTHAAD配備決定には当初から問題が多かった。今からでも配備過程を保留し、次期政権が再検討するようにすることが正しい。中国の反発が予想されたのに、それを放置した外交力も情けない。そのうえに与党がTHAAD問題を反対勢力に対する政治的攻勢の手段とするのにはあきれる他はない。与党の一部では、中国の反発が激しいのでむしろ次期政権が定着する前にTHAAD配備を急ぐ“先取り”をすべきだという主張まで出てきている。
中国は自身が強調する“新型大国”らしく、品格ある姿を見せることを望む。両国の国家戦略に差異があろうと、敵に対するように行動することは禁物だ。互いに疎通を強化して、共存共栄のための試みは中断することなく続けなければならない。その過程でTHAAD問題、ひいては北朝鮮核問題に対する合理的解決法も出て来るはずだ。