この間日本で暮らしていて様々な挫折や無力感を感じたことはあったが、胸の奥深いところで心から衝撃を受けたのはここ数日間ではないかと思う。韓国でも関連報道である程度は知られた大阪の「森友学園スキャンダル」のためだ。
このスキャンダルの内容自体は極めて簡単だ。大阪府にある森友学園という学校法人が、これまで運営してきた塚本幼稚園に続き新たに小学校を設立しようとした。問題は敷地であった。この学園は国有地である大阪府豊中市の土地(8770平方メートル)を政府の鑑定価格(9億5600万円)の僅か14%に過ぎない1億3400万円で買い入れる“奇跡”を起こす。地下にコンクリートや廃資材などのゴミが埋まっていて、これを除去するには多額の費用がかかるという理由だった。
この問題がなぜ日本政局を揺るがす巨大なスキャンダルに拡張されたのだろうか。ここからが興味深い話だ。
「戦後、日本を敵と見る占領軍が作った枠組みに今でも束縛されている。この“戦後レジーム”から脱却しなければ真の日本の姿、すなわち美しい日本を取り返せないというのが私の真心であったし、(第1次)安倍内閣の使命だった」
「マッカーサーの戦後教育が始まって、その余韻が今もずっと残っているということを具体的に見て、これではいけないと考えた。(中略)結局、それで到達したのが教育勅語だった」
二つの引用のうち前の発言は、安倍晋三首相が2009年2月「正論」という右翼雑誌との対談で明らかにした教育哲学だ。現在日本の子どもたちが国家に対する誇りと自信をなくしたのは、ダグラス・マッカーサーの連合軍最高司令部(GHQ)が戦後日本で施行した教育政策のためで、この束縛から抜け出してこそ日本が日清戦争、日露戦争で勝利して国威を発揚した明治時代の日本のような美しい国家を作ることができるという主張だ。
そしてもう一つは、今回のスキャンダルの主人公である籠池泰典・森友学園理事長がある右翼団体と行ったインタビューでの発言だ。二人とも日本の教育の失敗原因を連合軍が日本に“強要”した占領政策に求めるなど、基本的な教育観が完全に一致していることがわかる。それで籠池理事長は4月に開校する予定の小学校の基金を集める募金用紙にこの学校を「安倍晋三記念小学校」と紹介したり、安倍首相の夫人である昭恵氏を新しい学校の名誉校長に招へいできたのだ。
安倍首相の教育観が日本社会に少しずつ浸透し実際に広がったことは、まともな精神状態を持つ人ならば皆が顔をしかめるほかはない凄惨な教育の破壊であった。これを明確に示すのが先月27日に日本のマスコミを通じて公開された塚本幼稚園の2015年10月の秋季運動会の動画だった。
この動画の中で、子どもたちはたどたどしく舌足らずな声で「安倍首相ガンバレ」「中国、韓国が歴史で嘘を教えないように」「安保法制国会通過よかったです」と叫ぶ。安倍首相の夫人の昭恵氏は2015年9月、この学園で行った講演で「この幼稚園でしていること(教育)は本当に立派だ。せっかくこちらで(子どもたちに)芯ができたのに、(普通の公立)学校に行けば(熱心に受けた教育が)揺らいでしまう」と話した。
安倍首相は自身の教育哲学を通じて日本を再び美しい国に作ろうとしたが、実際に登場したことは、子どもたちに過去の軍国主義教育の象徴である“教育勅語”を暗唱させ、おもちゃの刀を持たせて「長州の武士よ、今から幕府をなぎ倒そう」と叫ぶ籠池という怪物だった。
国定教科書を押しつけた朴槿恵(パク・クネ)を大統領に選んだ韓国人の立場としては言えた義理ではないが、韓国も日本も子どもたちの胸中に憎悪と怒り、偏見と差別意識を教えてはならない。