政府が開城(ケソン)工業団地(開城工団)の稼動を一方的に中断させてから、今月10日でちょうど1年を迎える。現在も再開の目途が全く立たない状況だ。開城工団問題は、全てにおいて失敗した朴槿恵(パク・クネ)政権の対北政策の中でも、痛恨の過ちだった。できるだけ早く正常化に向けた努力を開始しなければならない。
北朝鮮側労働者5万4千人を雇用していた123社に至る韓国企業は、苦痛の日々を送っている。これまでの被害額は2500億ウォン(約248億円)の営業損失をはじめ、1兆5千億ウォン(約1490億円)に達する。協力企業5千社もかなりの被害を受けており、1千人以上が仕事を失った。政府の支援があったとはいえ、5千億ウォン(約490億円)に満たない規模であるうえ、その大半は無利子の融資か毎年数千万ウォンの保険料を払ってきた経済協力保険金である。開城工団に参加した企業家たちがさらに胸を痛めているのは、南北経済協力の実験場であり、“小さな統一”が毎日行われていた空間を失ったという事実だ。彼らの多くは再稼動に向けた希望を胸に、(開城工団に)戻る日を心待ちにしている。
政府の電撃的な工団の閉鎖決定は、南北合意に反するだけではなく、必要な協議の手続きさえ無視したものだった。政府は北朝鮮労働者の賃金が核・ミサイル開発に転用されているとの理由を挙げたが、その証拠は示せなかった。核問題と工団を直接関連付けたこの決定で、南北関係は完全に途絶え、核問題はさらに悪化した。この決定がいかなる根拠に基づき、どのような過程を経て下されたのかも、不透明である。あちこちで露呈した朴槿恵政権の国政の乱脈ぶりがこの決定でも繰り返された。
開城工団の再稼動は簡単なことではない。国連の対北朝鮮決議案と直接衝突するわけではなくても、さらに強い対北朝鮮制裁が必要だという国際社会の世論があるからだ。とくに米国ではドナルド・トランプ政権が発足して以来、強硬な声が高まる兆しを見せている。しかし、平和と協力の場である開城工団は核問題と分離されなければならない。さらに、このようなモデルがうまく行くと、核問題を平和的に解決するための雰囲気作りも容易になる。工団の再稼動が新しい南北関係の出発点になり得るのは言うまでもない。
開城工団の再稼働を求める声は、野党を越えて保守層でも広がっている。朴槿恵政権の初代統一部長官を務めたリュ・ギルジェ北韓大学院大学教授ですら、「開城工団を安保的な圧迫手段としてしまうと、国際社会で統一について語れなくなる」として、工業団地の再開を主張した。