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[コラム]野党のリーダーたちへ

登録:2016-12-14 06:46 修正:2016-12-14 08:48
朴槿恵大統領弾劾訴追案可決以後、大統領の即刻退陣を要求する第7回週末ろうそく集会が開かれた10日夜、市民が集会を終えた後、清雲洞事務所前で爆竹を鳴らしている=イ・ジョンヨン先任記者//ハンギョレ新聞社

 世界各国の革命史には多くの政治的リーダーの名が刻まれている。ピープルパワー革命のコラソン・アキノ、ビロード革命のヴァーツラフ・ハヴェル、チューリップ革命のローザ・オトゥンバエヴァ…。しかし2016年大韓民国のろうそく革命には政治リーダーの名前がない。政治家たちは革命の主役ではなくエキストラだ。野党のリーダーは革命の牽引者ではなく受恵者だ。

 政権交替は時代の交替に対する熱望の産物である。変化を渇求する国民の熱望を集め、組織し、伝播するのが野党リーダーの任務だ。しかし私たちはいつの間にか、時代変革の熱望が先に立ち政治はその後に付いていく様相となっている。政権交替の可能性がいつにも増して高くなったにも拘らず、未来がなぜか不安な感じで近付いてくる所以である。

 朴槿恵(パク・クネ)大統領に対する国会の弾劾訴追案が可決されて、政局の重心は急速に早期大統領選へと移動している。大統領選挙の高地に向けた野党圏の走者たちの熾烈な角逐戦も始まった。「弾劾は終点ではなく新しい大韓民国建設の出発点だ」と野党リーダーは口をそろえて叫んでいる。しかし彼らは、自分の大統領当選がろうそく市民革命の完遂であり、新しい大韓民国建設のスタートだと思ってはいないか。今後展開される百家争鳴の改憲論議に加えて目まぐるしい合従連衝、3者必勝論等々の政治工学的算法が乱舞し始めれば、ろうそくの意味は一層あせていくだろう。

 野党勢力の角逐戦は30年前の悪夢を思い出させる。野党のリーダーたちは87年の「二人のキム氏の分裂」を一貫して批判してきた。しかし今や、自らにこの問いを投げかける時が来た。「私にそんな批判をする資格があるか、もしや過去の過ちを再び繰り返しているのではないか」と。楽観と油断そして性急な祝杯は、失敗への近道だ。

 現時点で野党の前に置かれた課題は明らかである。時代に逆行する「朴槿恵(パク・クネ)印の諸政策」の廃棄とともに、韓国社会のあらゆる積弊を解消する事だ。不公正で不平等な世の中を打破し新しい時代を開く作業は、単に政権交替後の課題ではない。「政治権力」による積弊解消と「市民権力」による積弊解消の意味は天と地ほどの違いがある。少なくとも憲法裁判所の決定が出されるまでは、積弊解消が大統領選の準備より優先順位に置かれなければならない。それは新しい社会建設のための「地ならし」の性格も持つ。課題は多いけれども核心は言論と検察の改革だ。権力の動向に応じて自在に変身する「豹変の鬼才」たちに本来の位置を与え、権力との歪んだ関係に永遠の終止符を打つべき時だ。鉄は熱いうちに打たねばならない。

 本来、市民革命が成功すれば先ず最初になされるのが投獄された政治犯の釈放である。しかし我が国では解職された言論人の復職すら、いまだ何の便りもない。公正報道の原則を守ろうとする真の言論人を弾圧しながら絶えず「朴飛御天歌」(訳注:王の事績を称えた李朝時代の歌集『龍飛御天歌』をもじったもの)をうたい上げた放送社の核心部は依然としてそのままなのにである。いま野党の政治家たちは放送改革よりは、いかにすれば大統領選への街道で放送の好意をより得られるかに神経を使っているのかも知れない。

 総合編成チャンネル(総編)問題に至ってはもっと深刻だ。JTBCを除く他の総編の素早い変身は実に卑劣としか言いようがない。総編の変身は「朴槿恵以後」のための生存策に過ぎず、暴言と偏向、歪曲と誇張など本質は何も変わっていない。報道・教養・娯楽など番組の放送編成指針違反はもちろんのこと、放送の公的責任と公正性確保義務なども徹底的に無視している。来年3月に予定されている総編の再承認審査に、野党はどんな態度で臨むのか。与・野・政協議体の時代に野党には「法の原則」を貫徹する道も生じた。にも拘らず野党は総編を正しく立て直すことよりは総編の歓心を買うことに一層の関心を傾けているようだ。

 検察改革も、組織内の「ウ・ビョンウ師団」掃討程度で終わる問題ではない。権力の動向と関係なく、検察が中立的・独立的に動くための制度的方案を見つける事は容易ではない。市民の検察改革に対する熱い要求は、検事長級以上の直選制など革命的方案に対する積極的検討の必要性まで提起している。ひょっとして野党勢力は政権交替を既成事実化し、検察を権力の剣として使う誘惑に惹かれているのではないか。

 新しい大韓民国建設は決して掛け声だけでは成し遂げられない。野党自ら既得権を放棄し、勇気をもって体当たりできない限り、新しい世の中は夢のまた夢に過ぎない。重要なことは掛け声ではなく実践だ。いま実践可能な事から行動に移すのが、新しい時代建設のスタートである。

キム・ジョング論説委員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-12-12 20

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/774360.html 訳A.K

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