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[社説]圧倒的な弾劾案可決が国民の命令だ

登録:2016-12-08 23:29 修正:2016-12-09 04:55
朴槿恵大統領に対する弾劾訴追表決を翌日に控えた8日夜、国会本庁前で共に民主党所属議員と党職員たちがろうそくを掲げ弾劾可決の決意を示している/聯合ニュース

 歴史の夜が明けた。国会は9日午後本会議を開いて朴槿恵(パク・クネ)大統領に対する弾劾訴追案を採決する。大韓民国は今、重大な岐路に立った。

 朴大統領に対する弾劾訴追は損なわれた憲法の秩序回復のための第一歩であり民主主義復活のための長い戦いの始まりだ。チェ・スンシル氏ら秘線(影の実力者)はもちろん、朴大統領本人が犯した各種の憲法秩序の破壊を原状に戻して、傷ついた国民の自尊心を治癒する重大な手続きである。大統領の弾劾は「憲政の中断」ではなく憲法の手続きを遵守する「憲政の持続」であり、この地の民主主義が強力に働いていることを示す生きた証拠だ。大韓民国の主は国民であり、すべての権力は国民に由来するという憲法第1条の精神を再確認する過程でもある。

否決されれば「議会制民主主義」の崩壊

 朴大統領の弾劾をめぐって「国論統一」が成されてすでに久しい。朴大統領をその職から退くようにせねばならないという求めは世代や階層、理念や地域の違いを越えている。最近の世論調査の結果でも弾劾賛成の回答者は78・2%に達している。国民の代理人である国会はこのような国民の意思に忠実に従いさえすれば良い。委任者の意を敬うことがまさに議会制民主主義の根幹である。国会が弾劾案を圧倒的な票差で成立させることはいかなる名目や理由でも逆らえない歴史的な課題である。

 弾劾案の予想採決結果をめぐって、いまだに諸説が飛び交っているのは、それゆえナンセンスかつ悲劇だ。特に憲政破壊の「共犯」であるセヌリ党が弾劾案の賛成の増減率の鍵を握るというアベコベの現実は嘆かわしいことこの上ない。セヌリ党をめぐって「内侍宦官党」とか「政界引退党」などという各種の嘲弄と風刺がわき起こり、党支部事務所の前に白い菊の花が置かれる意味をセヌリ党関係者はきちんと悟らねばならない。それなのに大統領派は弾劾案の通過阻止のために最後まで必死の力をふりしぼっおり、非大統領系もまたたなびく葦の様相から抜け出せないでいる。

 弾劾案否決の事態は想像することさえおぞましい結果につながる。ろうそくの灯はたいまつに変わり、そのたいまつは与野党を問わず政界全体を焼き尽くしてしまうだろう。弾劾案の否決は政治の終焉、国会の没落を意味する。国民の意思に反して国民を負かそうとする政党や政治勢力に待っているのは破滅と没落だけだ。直接民主主義の要求をまともに表わすことができない議会制民主主義は、もはや存続する意味がない。政治が民意を裏切って派閥の利害関係によって動く現実はもう終わるべきである。政界はこれ以上ろうそくの灯の忍耐心をテストしないことを望む。

 さらに弾劾案が否決されると、朴大統領は来年4月退陣の立場まで撤回する可能性が濃厚だ。実際、大統領府のある主要参謀は「弾劾案が否決された場合、来年4月の退陣というセヌリ党の党論は履行されるのだろうか」というマスコミの質問に、「党論はすでに割れている」と語っている。弾劾案否決を「政治的免罪符」として受けとめて大統領職を最後まで維持するという意味だ。弾劾という憲法の手続きまで失った状況で、市民の怒りの矛先がどこに向かうかは全く予測しえない。弾劾案の否決は果てしなき混沌の序幕である。

 「セウォル号の7時間」を弾劾理由に盛り込んだことが良いかをめぐってもさまざまな意見が出ている。「大統領の職務放棄は弾劾の理由にならない」や「朴大統領があのときに現場にいても変わりはなかった」などの主張も出ている。しかしそれは本質ではない。セウォル号の船内に閉じ込められた生徒たちが冷たい海中に「水葬」されていくその瞬間に「ヘアーセット」をしていたという事実一つだけでも朴大統領は弾劾されてしかるべきである。国民の安全と命を自身のヘアースタイルより軽んじる大統領には、すでに大統領の資格がない。愛の不在、生命に対する共感力の不足、非人間的な性格は何よりも重要な大統領弾劾の理由だ。

 朴大統領が弾劾されるべき正当性は7日に開かれた国会の国政調査特別委でも改めて確認された。「チェ・スンシル氏と大統領は同等と感じた」「共同政権と思った」「序列1位はチェ・スンシル」、「チェ・スンシルが見るキム・ジョン文教体育部次官は随行秘書」など、チャ・ウンテク、コ・ヨンテ両氏の驚くべき証言であふれかえった。陰の実力者による国政壟断と壊れた国家システムのみすぼらしい姿はうごめく言葉となって国民の胸にあいくちのように突きささった。「合法を装い不条理に国庫を開けて、国家ブランドと自尊心の関わる国策事業において一つの国家の精神が八つ裂きにされたわけだ」(ヨ・ミョンスク元委員長)という話は、朴大統領弾劾の理由を雄弁に訴えている。

朴槿恵大統領の弾劾訴追案表決を翌日に控えた8日夕方、ソウル汝矣島の国会前で「朴槿恵政権退陣非常国民行動」の主催で開かれた「朴槿恵即刻退陣・応答せよ国会時局大討論会」で市民がろうそくを掲げ即刻弾劾を叫んでいる=キム・ミョンジン記者//ハンギョレ新聞社

弾劾は新しい大韓民国のための出発点

 弾劾案の成立は終わりでなく始まりであり、「パククネ・ゲート」の終着駅でなく大韓民国の新しい未来に向かう出発駅だ。公的領域を私有化した勢力に対する辞任の次元を越えて、それを可能にした古い制度と環境、システム全体を新しく変える契機だ。弾劾案成立は「ろうそくの灯の涙」で国家をきれいに浄化し、新しい民主共和国を築く始まりであり、真の意味の市民革命の完遂に向けた大長征の第一歩だ。今や大韓民国はその出発線上の岐路に立っている。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016/12/08 18:22(2289字)

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/773894.html 原文: 訳T.W

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