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[特派員コラム]中国はトランプの善戦を期待?

登録:2016-10-20 23:07 修正:2016-10-21 08:10
ドナルド・トランプ米国共和党大統領候補が今月12日、フロリダのレイクランドで演説している=レイクランド/AFP聯合ニュース

 未だに中国ではドナルド・トランプ氏の中国語表記が完全には整理されていない。米大統領選挙まで2週間程度しか残っていないが、“トランプ”(特朗普)と“チュァンプ”(川普)という表記方式が混在している。中国官営メディアを中心に“トランプ”に落ち着きそうではあるが、インターネットや中国以外の中華圏メディアは“チュァンプ”を好む。多くの場合、二つの表記は併記されている。

 当初から中国の人々は“チュァンプ”という名前にかなり興味を感じたようだ。“チュァンプ”を文字通りに読めば、四川省式標準語という意味になる。韓国式に言えばしばしばコメディの素材になる「慶尚道式標準語」程度のニュアンスだろうか? インターネットには「私も初めはそういう意味だと思った」というコメントが随所に見られる。

 選挙の過程でトランプ氏がともすれば対中国貿易の不均衡に触れ「中国たたき」を日常的に行ってきたことは中国でも広く知られている。彼は「中国に米国を強姦させはしない」という卑劣な単語を多用し、中国製品に45%の関税をかけるという見えすいた脅しまでした。だが、中国からすると、米国大統領選挙で火が点く中国牽制論、あるいは中国脅威論は目新しいことではない。近くは2012年にミット・ロムニー共和党候補が、中国の「為替レート操作」を主張したし、遠くは1980年にロナルド・レーガン共和党候補が前任のジミー・カーター民主党政権の「台湾断交」を問題にした。今日の中国に対するこうした攻撃は、むしろ成長の象徴であり国際的地位の向上を裏付けるものである。しかも選挙が終われば勝者は鋭鋒を和らげるのが常だった。

 このような文脈で「中国たたき」の重さを差し引けば、中国がヒラリー・クリントン民主党候補よりトランプ候補の当選を好むだろうという世間の見方は一層説得力を増す。クリントン氏は中国の人権問題に常に強硬な態度を取ってきたし、「中国制裁」と受け止められたバラク・オバマ行政府の「再均衡」政策時期に米国外交の指令塔である国務長官だった。彼女の豊富な経験が中国にとっては負担になる。

 反面、トランプ氏は中国の体制や人権問題を直接取り上げたことが殆どなく、中国の安保にとって負担になる在韓・在日米軍など米国の海外駐屯軍とその役割にむしろ懐疑論を提起してきた。中国の影響力を制限させかねない環太平洋経済パートナーシップ協定(TPP)脱退の旗じるしを先に掲げたのもトランプ氏だった。彼は南シナ海問題への不干渉の立場も明らかにした。

 トランプ氏は共和党の主流人物ではないが、米中修交を引き出したリチャード・ニクソン元大統領や、中国で「最高の関係」と評される第2期のジョージW・ブッシュ政権のように、共和党執権が中国に有利という見解もある。そのうえ事業家としてのトランプ氏は、彼が所有するホテルに使われた中国産鉄鋼材のように中国と密接な関係を結んでいる。

 もちろん多くのことが不確実性の領域に留まっているトランプ氏に、中国がむやみに支持し期待しているわけではない。李克強首相は先月米国を訪問し、誰が当選しても米中関係は安定的に維持されるだろうと、言わずもがなの話をした。19日の3回目のテレビ討論の後、多くの中国専門家がクリントンの勝利を予想したという報道も出てきた。

キム・ウェヒョン北京特派員//ハンギョレ新聞社

 ただし、明らかなことは、中国が今回の米国大統領選挙をあざ笑っているという点だ。今月8日、中国共産党の機関紙である人民日報の社説に当たる「鐘声」は、今回の選挙の泥仕合様相と歴代最多の選挙費用に言及し、「米国は騒々しい選挙が制度的優位を象徴するものだと自慢し、さらにこれを根拠に中国を不作法になじった。莫大な自信と傲慢さはもはや慎むべきだろう」と胸を張った。混濁した選挙がすべてトランプ氏の責任かは論議の余地があるが、はっきり言えることは「アメリカを再び偉大にする」というトランプ氏のメッセージは、裏返せば現在のアメリカは偉大ではないということを自ら認めることでもある。

キム・ウェヒョン北京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/766632.html 韓国語原文入力:2016-10-20 19:20
訳J.S(1792字)

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