登録 : 2016.08.31 23:19 修正 : 2016.09.01 06:28

 朴槿恵(パククネ)大統領は今月29日、「北朝鮮の核とミサイルは単純な不安要因ではなく、安保にとって極めて深刻な現在の脅威」として、北朝鮮を核兵器保有国として認めた。韓米両国は以前から北朝鮮を事実上の核兵器保有国として認める動きを見せてきた。今年7月8日、韓国へのTHAAD配備決定を発表する際にも、韓米両国は「北朝鮮の核と大量破壊兵器、弾道ミサイルの脅威」をその理由に挙げた。北朝鮮を核兵器保有国家とは認められないと言っていた以前の政策が失敗したことを自認したのだ。

 朴槿恵政権は対北朝鮮政策が失敗したことを認めながらも、制裁と圧迫一辺倒の従来の政策を再検討することなく、巧妙に責任を回避している。THAAD配備の決定で世論を糊塗し、国論をTHAAD賛成とTHAAD反対に分裂させただけでなく、第3の配備地の検討方針を発表し、反対派をさらなる分裂に導いている。THAAD砲隊が2個は必要という主張が提起され、原子力潜水艦の配備を求める声まで聞こえる。金正恩(キムジョンウン)政権の危機論が流れ、「政権交代」が新たな目標として提示されている。そしてこのような論議が飛び交う中、朴槿恵政権の政策の失敗は徐々に忘れられている。

 朴槿恵政権は無能であると同時に、有能でもある。北朝鮮の核武装を手をこまねいて見ているほどに無能だが、自分の失敗を「人のせい」にすることに関しては、他の追随を許さないほど有能だ。早く対処すべきだった「北朝鮮核問題」を放置し、事態の深刻化をもたらしたのが問題の本質なのに、THAAD配備への反対は国論を分裂させることだと主張し、「返し技」をかけている。大統領府民政首席の不正が問題となっているのに、それを告発した特別監察官が国の綱紀を乱したとして攻勢をかけているのも、同じ手法だ。

 さらに深刻な問題は、国内政治では「返し技」がそれなりに成功しているが、国民がその内幕を知っていても、安保問題がかかった南北関係では返し技を返し技とさえ気づかない場合が多い。「百戦錬磨のつわものたち」が集まった野党でも、THAAD賛成か反対かをめぐり甲論乙駁を繰り広げている。「特別監察官」が違法行為をしたかどうかをめぐって議論しているうちに、「民政首席」を忘れてしまうようなものではないか。なぜ対北朝鮮政策と安保の失敗については誰も問題を提起しようとしないのか。THAAD配備をめぐる賛否両論は、政府の返し技が威力を発揮したことを裏付けている。

ソ・ジェジョン日本国際基督教大学政治・国際関係学科教授//ハンギョレ新聞社
 THAAD配備は「焦点ぼかし」でもある。サード配備決定を発表する2日前の7月6日、北朝鮮は朝鮮半島非核化に関する重大な政府報道官声明を発表した。「朝鮮半島の非核化」は金日成(キムイルソン主席)・金正日(キムジョンイル総書記)の遺訓だとして、先代の権威を前面に出したのみならず、労働党、軍、人民の意志まで掲げて非核化の意志を表明した。もちろん、ただ非核化を行うということではなく、5つの条件を掲げたという限界はある。しかし、その条件とは、ジュネーブ合意や6カ国協議で合意された内容を繰り返すレベルだ。むしろ決まり文句だった在韓米軍の撤退を、「南朝鮮(韓国)で核の使用権を握っている米軍の撤退を宣言すること」を求めるとして大幅に緩和した。韓国における核使用権のない米軍の駐留は認めるということなのか、あるいは米軍の撤退を「宣言」するだけで、実質的な撤退はしなくても良いということなのか、解釈の余地を残した。このような可能性を残した北朝鮮の提案は、THAAD賛否両論の中で忘れられている。

 だからこそ、現在のTHAADをめぐる論争は危険だ。夢中になって議論を戦わせているうちに,返し技と焦点ぼかしとは気づかなくなってしまうからだ。その影で、非核化交渉の可能性を開けておいた北朝鮮の提案は完璧に忘れられている。北朝鮮の意図が何か、どのように確認すべきなのか、議論そのものが初めから遮断されてしまったのだ。

 今からでもTHAADではなく、朝鮮半島の非核化について議論すべきだ。

ソ・ジェジョン日本国際基督教大学政治・国際関係学科教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: 2016-08-31 18:27

http://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/759334.html訳H.J

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