高高度防衛ミサイル(THAAD)配備の場所をめぐる大統領府の慌てぶりが際立ってきた。大統領府のチョン・ヨングク報道官は5日、「選定されたものを変えるのは容易ではないが、要請通り他の地域も綿密に調査し、詳しく知らせる」と述べた。朴槿恵(パククネ)大統領が前日、セヌリ党の大邱・慶尚北道地域の国会議員との懇談会で行った、THAAD配備地域を星山砲隊ではなく、星州郡内の他の地域に変更することもあり得るという発言により広がった波紋の鎮火に乗り出したのだ。
大統領府が、今さら大統領の発言による事態の収拾に乗り出したのだから、辻褄が合うはずがない。「他の地域を綿密に調査してほしいという要請」を誰がしたのかということからして明らかでない。チョン報道官は、当初は「星州住民たちが要請した」と述べたが、「懇談会で要請された」と前言を翻した。ところが懇談会でも、そのような要請はなかったと出席者たちは証言する。こうなると、朴大統領の発言が国政運営の最高責任者として熟考の末に出されたものなのか、それとも怒る民心をなだめるためのリップサービスだったのか分からなくなる。
国防部の狼狽はさらにひどい。国防部は同日、「星山砲隊がTHAAD配備の最適の場所」と明らかにした。前日、朴大統領の発言が伝わった後に「要請があれば検討する」とした発言をまたもや覆した。大統領の一言で葦のように右往左往する国防部を国防の専門集団と言えるのかも疑わしい。
大統領府と国防部がこのように揺れ動いているのは、THAAD配備の「性急な推進」の一端に過ぎない。最も基礎的な配備場所の問題にさえ整然とした論理を提示できない状況で、外交や経済など他の分野の対応策が、いかに拙速かつ不良であるかは目に見えている。実際、最近の北朝鮮の弾道ミサイル試験発射に対する国連安全保障理事会の北朝鮮糾弾声明が中国とロシアの反対で採択されないなど、北朝鮮への圧力外交に赤信号が灯っているが、韓国政府にはなす術がない。中国共産党機関紙の人民日報が朴大統領を名指しで批判し、中国人の観光や中国国内の韓流コンテンツのイベントが相次いで取り消されるなど、懸念されていた中国の報復処置が現実と化しているにもかかわらず、政府は「中国が報復すると大騒ぎする必要はない」と繰り返しているだけだ。
このような無能な政府にTHAAD配備という重大な問題を任せておいていいのだろうか。今、私たちはその根本的な問いに直面している。中国の強い反発、韓国内部の対立の深化など、THAAD配備に伴う悪影響を吸収できる能力もないのに推進させておいて、右往左往する政府を信頼できない。もはや国民に代わり国会が前面に出るしかない。国会はこれ以上手遅れになる前にTHAAD配備決定が適切なのか、国益に役立つかどうかを厳正に分析し、事態を収拾させねばならない。政府もTHAAD問題に対する最終結論を国会に任せるのが、今の総体的難局を脱する「出口戦略」になることを認識すべきだ。
韓国語原文入力: 2016-08-05 17:41