「高高度防衛ミサイル」(THAAD<サード>)の慶尚北道・星州への配備決定後に初めてラオスのビエンチャンで24日夜に開かれた韓中外相会談で、中国は事実上の配備中止を要求した。THAADによる韓中の軋轢(あつれき)が本格化する局面に入ったといえる。
「(韓国側が)相互信頼の基盤を損なった」とした王毅外交部長の発言は、これまでの韓中関係では出ないはずの表現だ。王氏はさらに、両国の「温かみのある関係」を守るために「(韓国側が)どのような実質的行動を取るのか尋ねたい」と話した。
THAAD配備を中止しなければ、韓中関係が冷え込んでも対応措置を取るという意味だ。中国政府は8日の韓米政府のTHAAD配備決定直後にも「配備中止を強力に求める」と表明したことがある。
これに対しててユン・ビョンセ外交部長官はこれまで政府が説明してきたまま「北朝鮮の核とミサイルの脅威を防止しようとする自衛的・防衛的措置」であり、第3国を狙うものではないと述べた。
しかしTHAADは米国主導で朝鮮半島配備が決定された戦略的武器である以上、このような発言で中国の憂慮を解消することはできない。THAAD配備が計画どおり推進されれば中国の報復も具体化するほかない状況にある。
まず中国は、いかなる方法であれ軍事的に対応することは確実だ。THAAD配備が中国の戦略的安保を損ねると見ているからに他ならない。これに関連して中国が最近黄海や渤海湾海域で大規模な実戦対抗訓練を行ったことを巡り、ある中華圏のメディアは「韓国のTHAAD基地を最優先に無力化する演習」と報じた。中国が米国との軍事的衝突を想定してTHAADの防衛能力を上回る攻撃ミサイルを配備するだろうとの予想もされる。
中国が北朝鮮とロシアとの関係を強化するのはほぼ必然的だ。アセアン地域安保フォーラム(ARF)出席のためにビエンチャンに来た王氏と北朝鮮のリ・ヨンホ外相が25日、2年ぶりに外相会談をしたことは象徴的だ。今後中国の東北3省と民間レベルの北朝鮮経済協力を中央政府が認める可能性も少なくない。韓中関係の悪化と北朝鮮と中国の関係強化は北朝鮮に対する制裁効果を弱めることはもちろん、北東アジアの新しい冷戦構図を強化するほかない。核問題を解決することもさらに難しくなるだろう。
中国が韓国に対し経済的圧迫を直接加えることもできる。これに関して王氏は異例にも「1年1千万人を超した両国の人的交流」について言及した。中国の公式措置ではなくても、中国内の反韓世論が高まって両国交流が萎縮しかねない。山東省のチンタオ市が27日に大邱で開かれるビール・唐揚げフェスティバルの参加計画を取り消すと突然通知してきたのはそのような例となるかも知れない。
「THAAD軋轢」は修交24年をむかえた韓中関係の大きな障害物になることは明らかで、北東アジアにおける韓国の戦略的位置づけも萎縮させるだろう。これからでも政府は現実を直視するよう願いたい。
韓国語原文入力:2016/07/25 18:51