私が東京特派員として勤務していた2011年3月、東日本大震災が起き、続いて福島原発事故が起きた。その後も2年半ほど、私は東京で勤務した。そのためなのか、今もこんな質問を時々受ける。「今は東京に行っても問題ないですか?放射能は大丈夫ですか?」
測定資料を一度見てみよう。7日午前10時、東京の測定地点5カ所のうち大気中の放射線量が最も高い太田区は、時間当り0.037マイクロシーベルトだ。韓国原子力安全技術院が提供した同じ時刻の最近測定資料によれば、ソウル瑞草区の放射線量は時間当り0.137マイクロシーベルトだ。ソウルが東京の3.7倍高い。ソウルはそれほどに危険だろうか。そんなはずはない。ソウルの自然放射線量が東京よりはるかに高いだけだ。東京の放射線量は、福島原発事故の影響で一時大きく跳ね上がった時も、きわめて一部の地域を除いてソウルより低かった。
私たちは放射線に対してある面では過度に心配し、またある面では過度にのんきだ。福島から遠く離れた地域であっても、日本に行けば放射線のために危険だと考え、日本の食品はどれも食べてはならないと心配する人が多い。その一方で、数百万人が暮らす人口密集地の近くに、あれほど多く作った韓国の原発には理解し難いほど鈍感だ。
どこの国でも原子力発電を推進する人々は、原発は安全だ、大事故は決して起きないと言う。しかし、人間のすることには「絶対安全」はありえないということを、福島原発事故は改めて確認させた。日本は地震のために事故が起きたのであり、韓国ではそんな大きな地震は起きないと言う人もいる。そんなことはない。三国史記によれば、「恵恭王15年(779年)3月に慶州で地震が起き、民の家が崩れ死者が100人を超えた」とある。家が崩れこの程度の人命被害が出たとすれば、途方もない規模の地震であっただろう。まだ人類の技術では地震を予測することはできない。また自然災害より心配なことは南北間の熾烈な軍事的対峙の状態だ。
日本の福島原発は、東京に電気を供給するために作られた。東京から直線距離で230キロメートルも離れたところに作ったので、送電損失は甚大だ。それでも消費地からそんなに遠く離れたところに作った理由は、万一の事故を憂慮してのことだ。韓国ではそんなことさえも考慮されていない。8基の原子炉がある古里・新古里原発は、半径30キロメートル以内に340万人が暮らしている。地域住民は原発を枕に眠っているようなものだ。もちろん大きな事故が起きれば、30キロメートルの外側だからといって安全なわけではない。福島原発事故は日本に大きな被害を与えたが、被害がこの程度で終わったことが実は幸運だった。東京が人が住めない場所になるところだった。
原子力発電は発電コストが安く、親環境だという人もいる。そんなことはない。廃炉費用、使用済核燃料をはじめとする核廃棄物の処理費用を後回しにしているので、今の発電コストが安く見えるだけだ。これを考慮すれば、原子力発電は経済面でも効率的でない。数百年以上にわたり不安を拭えない核廃棄物を考慮すれば、温室ガスが出ないから親環境だという主張も滑稽だ。
5日、蔚山(ウルサン)近海でマグニチュード5.0の地震が起きた。多くの人が原発を心配したという。地震が深い眠りを揺り起こしたとすれば、有難く受け入れよう。韓国が原子力発電政策をこのまま続けても問題ないのか、考え直す契機にしよう。