セヌリ党のウォン・ユチョル院内代表(議員団長)が15日、北朝鮮の核とミサイルに対して我々も核武装しなければなければならないと訴えた。過去にも何人もの議員が私見として核武装論を持ち出したことはある。しかし政権与党の院内代表が韓国の国会代表の演説で公式にこの問題を提起したことは意味が違う。望ましくもなく可能でもない話を今のような敏感な時期に公論する深意が気になる。
ウォン代表は「我が国も自衛権の次元の“平和の核”とミサイルで対応することを含めて生存戦略を考えるべきだ」として、1992年に朝鮮半島の非核化宣言で撤収した米国の戦術核の再配備や、自主的に核開発をするなど対北朝鮮の抑制手段を真剣に考える時期であると述べた。しかしウォン代表が言う「平和の核」は言葉遊びの極みである。北朝鮮が核開発の名分として掲げているのが「米国の先制攻撃に対応するための防衛的兵器」という論理だ。「平和の核」と「防衛的兵器」に何の違いがあるのか。核開発に着手する瞬間、私たちも北朝鮮のように全世界の非難を受ける不良国家に転落するだけである。友好国である米国は容認すると考えるなら誤算だ。9・11テロ以降、米国は「大量破壊兵器拡散防止」を対外政策の最優先課題としている。
しかも韓国の核開発は日本、台湾など周辺国の核武装をドミノ倒しのように招く可能性がある。北朝鮮もまた核保有を正当化して軍備競争を加速化するだろう。結局「平和の核」は成り行きまかせになって北東アジアは史上例がなく不安定で危険な地域になることは明らかだ。
米国の戦術核兵器を朝鮮半島に再び配備しようという主張も現実性がないのは同じだ。米国が再配備に同意するかも疑問だが、THAAD(高高度防衛ミサイル)の配備にさえ強硬な中国とロシアが「攻撃用」の戦術核兵器の朝鮮半島配備にいかなる態度を見せるかは火を見るように明らかだ。特に韓国は、1990年代の非核化宣言と戦術核兵器撤収を契機に世界中から平和的で模範的な原子力利用国家という評価を受けている。このような信頼が国際的地位を高めて経済安定を図るにも大変重要に働いている。信頼と繁栄を一度に失うかも知れず、効力もなくて危険なことこの上ない「核賭博」をなぜしようとするのかセヌリ党に訊ねたい。
ウォン代表は「個人の所信」というものの、国会代表の演説内容を大統領府と全く相談しなかったはずはなかろう。与党代表が非現実的な発言をするようにさせておいた理由は何なのか気になる。もし4月の総選挙を控えて「政治的に損はない」という判断をしたのだったとすれば、これほど無責任な発想はない。朴槿恵(パククネ)大統領は与党の核武装論についてはっきりした立場を表明すべきである。
韓国語原文入力:2016/02/15 20:24