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[社説]梨泰院殺人、今さらでも正せてよかった

登録:2016-01-30 06:53 修正:2016-01-30 08:17
アーサー・パターソン被告(右)//ハンギョレ新聞社

 1997年に発生した「梨泰院(イテウォン)ハンバーガー店殺人事件」の真犯人として起訴された米国人アーサー・パターソン被告に29日、懲役20年の実刑が宣告された。犯行当時未成年者だった被告人に法が許す最高の刑が下されたのだ。見ず知らずの人を何の理由なしに遊び道具として残忍に殺した「快楽殺人」に対する相当な処罰である。

 裁判所が明らかにした通り、証拠と情況は既にパターソン被告を示していた。被害者と真犯人と目撃者だけいた狭いトイレで殺人が繰り広げられ、一緒にいたエドワード・リー氏は上着に若干の血がついていた反面、パターソン被告は頭と両手、上下の服が血まみれだった。パターソン被告が事件直後に手を洗って犯行に使われた刃物を捨てた点など様々な状況を見るとパターソン被告が犯人というリ氏の陳述により信憑性があると見るのは理に適っている。

 それなのに19年前の検察は真犯人と目撃者をあべこべにした。解剖検査疑義意見書で犯人の背が被害者より高い可能性があるという一言と嘘発見器結果を盲信したためだ。嘘発見器の正確度は97%であるが、単に1%の誤差でも苦しめられる被害者が生まれえるならば独立した証拠としては認められない。検査方法や機械も完全に信頼し難い。このため裁判所は、嘘発見器の結果を限定的に状況証拠としてのみ受け入れたのだ。これを犯人を取り違えた決定的理由としたことは、当時の検察の決定的失敗だ。他の証拠と情況がほとんどパターソン被告側に対して初動捜査を引き受けた在韓米軍犯罪捜査隊がパターソン被告の疑惑事実を確かめて引き渡したのに、韓国の検察はこれをひっくり返した。理解できない的外れの足を踏み外した捜査だった。

 検察のミスを当時の1・2審の裁判所が正せなかったことも問題である。1・2審の裁判所は真犯人と目撃者を取り違えた検察の誤った判断をそのまま受け入れて真犯人のパターソン被告に証拠隠滅疑惑などの軽い刑だけを宣告した。事実をまともに調べて裁いたのかいぶかられる。パターソン被告の陳述の信憑性を疑った大法院(最高裁)が再び再審を指示して原審を破棄・差し戻ししなければ真相は永遠に葬られたはずだ。単純な殺人事件の犯人さえまともに断罪できない「3流国家」という揶揄を犯人からされるほどだった。

 誤った捜査と起訴、粗末な裁判は被害者と遺族の痛みをいっそう深くするだけでなく正義の実現をさまたげて司法制度に対する不信感を高める。今回と同じようなことは再び繰り返してはならない。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016/01/29 18:38訳T.W

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/728515.html

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