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「梨泰院殺人事件」の真犯人、19年ぶり明らかに

登録:2016-01-29 22:42 修正:2016-01-30 08:03
裁判所 「犯罪恐ろしく罪質が悪い」 
法定刑の上限である懲役20年を宣告 
リーも共犯と認めたが処罰できず
アーサー・パターソン被告(右)//ハンギョレ新聞社

 「梨泰院(イテウォン)ハンバーガー店殺人事件」の真犯人が19年ぶりに法廷で明らかになった。当初、この事件の目撃者から犯人となったアーサー・パターソン被告(37)は、2時間ほど続いた裁判で、宣告が近づくにつれ、首を左右に振ったり、汗を拭くなど、いらだちを隠せなかった。

 ソウル中央地裁刑事27部(裁判長キム・ギュホン)は29日午後、殺人容疑で起訴されたパターソン被告に「一面識もない被害者チョ・ジュンピル氏(当時22歳)を特別な理由もなく、凶器で殺害したのは、その犯行手口があまりにも恐ろしく、罪質が悪い。この事件で、被害者は若い年齢で命を失い、家族には今までも精神的衝撃と苦痛が残された」とし、懲役20年を宣告した。この刑量はパターソン被告が犯行当時18歳だった点を考慮したものだ。特定強力犯罪処罰法は、殺人のような特定の強力犯罪を犯した際、犯人が18歳未満の場合は、死刑又は無期刑に処す代わりに、懲役20年を最高刑に宣告するように定めている。

事件捜査当時、検察「リーが犯人」と判断 
パターソン、出国禁止されず米国行き 
両方起訴しなかった検察、批判免れない見込み

 裁判所は犯行に使われた凶器のグリップが短く、鋭いため、短い時間で凶器をやり取りするのは難しいことから、被害者を刺した人は1人だと判断した。また、被害者が犯人とかなり近い距離で攻撃され、犯人の全身に血液がたくさん付着した可能性が高いと見た。当時、パターソン被告は、両手を含め全身に血液が多く付着していた一方、当初犯人とされたが無罪を宣告されたエドワード・リー氏(37)は、上着にスプレーで吹きかけたように少量の血液が付着しており、パターソン被告とは異なり、手を洗うためにすぐにトイレに行かなかった。裁判所はこれを基に、「パターソンの陳述は一貫性がなく、客観的な証拠と符合していないため、信憑性がない」と判断した。検察が2011年に再捜査をして新たに提示した「血痕形態の分析」が、この判決に影響を及ぼしたのだ。

 また、裁判所は、リー氏も犯行に加担した事実を認め、事件の共同正犯だと判断した。しかし、リー氏は、すでにこの事件で無罪の確定を受け、同じ事案について二度裁判にかけられないという原則(一事不再理)に基づき処罰は除かれた。

 裁判所は「リーがパターソンに犯行を煽り、被害者がナイフに刺されて血を流しているにもかかわらず、これを止めようともせず、友人に犯行を誇示した」とし「リーは当時犯行を見物するためにトイレについて行ったのではなく、トイレに他の人が入って来るのを監視し、被害者を制圧するためについて行ったものと見られる」と明らかにした。

 パターソン被告は宣告直後、涙声で弁護人に何かを訴えようと近づいたが、すぐに法廷警衛4人に囲まれて法廷を後にした。

 結局、裁判所が2人を事件の犯人と判断したことで、当初、2人を共犯で起訴しなかった検察は、非難を免れなくなった。検察が初期捜査をきちんと行い、パターソンが米国に逃げるのを防いでいれば、真実が明らかになるまで、19年という長い年月を要することはなかったはずだからだ。当時、検察は犯行が起きた現場にリー氏とパターソン被告の2人がいたが、剖検医師の所見と嘘発見器の結果を主な根拠に、リー氏だけを殺人容疑で起訴した。これは、初動捜査を担当した米軍犯罪捜査隊(CID)がパターソン被告を犯人と判断した調査結果を覆したものだった。検察のミスは、初期捜査だけでなく、その後も続いた。1998年9月、リー氏に対し無罪が確定されると、チョ氏の家族は、2カ月後パターソン被告を殺人疑いで告訴した。しかし、パターソン被告は、検察が出国禁止を延長していない隙に、翌年8月、米国に出国した。

 裁判が行われている間、俯いていた被害者チョ氏の母親イ・ボクス氏(74)は、パターソン被告に有罪が宣告されると、ハンカチで涙を拭いた。イ氏は判決後、記者団に「しっかりとした判決が出て、気が楽になり、すっきりした。犯人が捕まらなかったので、生きた心地がせず、ジュンピルに罪を犯しているような気がしたが、心を鬼にしてここまでやってきた。もうジュンピルも安らかに眠れるだろう。助けてくださったすべての方々に感謝申し上げる」と述べた。また、彼女は「もうすっきりしているが、エドワード・リーにも大法院(最高裁)で無罪判決を下したことがあるから、これからの展開を見守りたい。エドワードも同じ殺人犯だ。一事不再理のため、責任を問えないというのは話にならない」と述べた。

 パターソン被告の弁護人であるオ・ビョンジュ弁護士は、宣告直後控訴する方針を明らかにした。オ弁護士は「この事件の犯人がパターソンではないと確信している。無実の人が処罰されないように、控訴審で正確に真実が究明されることを望む」と述べた。

ソ・ヨンジ、キム・ジフン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: 2016-01-29 19:33

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/728545.html 訳H.J

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