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[社説]法的責任なき慰安婦問題の最終解決はない

登録:2015-12-28 23:19 修正:2015-12-29 05:54
光州・全羅南道地域に夜半に雪が降った中で、17日午前、光州市庁前に建てられた日本軍慰安婦犠牲者の「平和の少女像」に雪が積もっている=光州/ニューシス

 韓日両国政府が28日、日本軍慰安婦問題に対する合意案を発表し、この問題が「最終的且つ不可逆的に解決される」と宣言した。 だが、両国の外交長官がこの日ソウルで会談を行った後に発表した合意案は真の解決法とは距離がある。 何よりも慰安婦制度という“国家犯罪”に対する日本政府の法的責任が明確にされていない。

真の解決法とは距離がある韓日合意

 両国政府の合意は、日本政府は慰安婦問題に対する責任を痛感し、安倍晋三首相は心から謝罪と反省の気持ちを明らかにし▽日本政府の予算で慰安婦被害者のための事業を展開し▽両国政府が今後国際社会でこの問題を巡って互いに批判することを自制するという内容だ。 また、韓国政府はソウル日本大使館前の慰安婦少女像の移転などのために努力することにした。 このような内容はこれまで安倍政権が慰安婦問題さえ否定していたことに較べれば非常に前向きであることは明らかだ。 安倍政権が慰安婦問題に対する「責任」に言及し、被害者に対して「謝罪し反省」したことは初めてでもある。 歴史修正主義の立場に立ってきた安倍政権としては新たな一歩を踏み出したということもできる。

 だが、今回の合意は以前の歴代日本政府が提示したものの受け入れられらかった方案の限界を抜け出していない。 1993年、当時の河野洋平官房長官が慰安婦動員の強制性を認めた「河野談話」を発表した後、95年に日本で「女性のためのアジア平和国民基金」が発足した。 この基金が97年に韓国人慰安婦被害者に200万円を初めて支給し、橋本龍太郎首相名義の謝罪書簡を伝達した。 この方案は日本政府の法的責任を認めなかったために解決法にはならなかった。 日本側が出した資金も被害者に対する賠償金ではなく支援金の性格だった。 その後、日本政府は2012年にいわゆる「佐々江案」を当時の李明博(イ・ミョンバク)政権に提示したが、これもまた不充分なものだった。 この案は、日本首相が韓国大統領に謝罪し▽駐韓日本大使が慰安婦被害者を訪問し謝罪し▽日本政府の予算で補償するという内容だった。 今回の合意は支援金の金額がやや増えただけで、以前出された案を総合したものと大差ない。 安倍政権は河野談話を継承するとは言ったが、河野談話に入っていた「強制性」という表現は抜け落ちた。

 今回の合意について、両国政府が「最終的かつ不可逆的解決」と宣言したのもおかしい。 法的責任を認めない案に対して両国政府が「最終」と判断する権利はない。 今回の合意がどこまで慰安婦被害者と韓国国民、国際社会が受け入れられる内容なのかを見守ることが正しい態度だ。

 韓国政府の中途半端な姿勢も指摘せざるをえない。日本が出した未完の解決法に、韓国政府が付き添っている姿だ。 これは歴代政府が法的責任を強調してきた立場とも反する。 韓国政府が慰安婦被害者を支援する財団を設立し、そこに日本が金を出すことにした方式も理に適わない。 政府が慰安婦少女像について言及したことも適切ではない。 政府は今回の合意に先立ち慰安婦問題の最も直接的な当事者である被害者たちの意見を聴く手続きさえ経なかった。 このような態度が「慰安婦問題の年内妥結」を明らかにした朴槿恵(パク・クネ)大統領の立場や韓米日協力を強調してきた米国を考慮した結果なら一層大きな問題だ。 原則に反する内容を「外交的解決法」として国民に強要してはならない。

 日本が本当に慰安婦問題の最終解決を望むなら、すべきことは難しくない。 複雑な論理を展開するのではなく、法的責任を潔く認めれば良い。 これは歴史的事実を客観的に受け入れることでもある。 日本政府は1965年の韓日協定で「植民地支配のすべての法的責任が終結した」と言っているが、慰安婦問題は当時議論もされなかったし、1990年代初期に国際問題になった問題である。 国連なども「日本軍慰安所は国際法に違反した戦時性奴隷制」という見解を繰り返し確認した経緯がある。 世界のあちこちで慰安婦少女像が立てられたのも「未だ解決されていない戦争犯罪」という思いが共有されているためだ。 法的責任を認めさえすれば、他の争点も簡単に解決することができる。 慰安婦被害者たちが最も願うものも、賠償や支援ではなく法的責任の認定だ。 これを迂回しようとする限り、慰安婦問題は決して完全に解決されはしない。

今回の案を基に新たな交渉を始めるべき

 慰安婦問題は今回の合意で「最終解決」されたのではなく、今ようやく出発点に立ったと言える。 過去を否定してきた安倍政権が初めて以前の歴代日本政府の認識水準に到達したという話だ。 どんな道が真の解決法なのかは、両国政府がよく知っているはずだ。 どれほど韓日外交関係が重要でも、問題を糊塗する形で覆おうとしてはならない。 両国は慰安婦問題の最終解決を言うのではなく、真の解決法のために新たな交渉を始めなければならない。

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/723768.html 韓国語原文入力:2015-12-28 19:30
訳J.S(2238字)

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