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[寄稿] 韓国法治主義の中国化リスク

登録:2015-11-05 00:33 修正:2015-11-05 06:43

 日本の安倍晋三首相はどうして朴槿恵(パク・クネ)大統領の面前で懲役1年6カ月を求刑された日本人記者のための「適切な対応」を直接的に要求できたのだろうか? 彼は韓国の裁判所が公判審理を終えたことを知っていただろう。 今月26日に宣告日を定めたことも知っていただろう。 それでも彼は韓日首脳会談で朴大統領に向かって「適切な対応」を要請した。

 これは韓国の法治主義を認めない言動だ。 言論の自由を弾圧するなという訓戒をしたのだ。 安倍首相とはどういう人か? 彼は1997年に「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」を作って初代事務局長になった人だ。 この会は第2次安倍内閣19人の閣僚のうち9人を占める程に強かった。 皆が固く団結して日本の歴史教科書が“自虐史観”に偏向していると攻撃した。 彼らの焦点は教科書から軍慰安婦叙述を削除することだった。 慰安婦募集の強制性を何が何でも否定した。 そのような人から韓国の大統領が直接に言論の自由訓戒を聞く境遇になった。

 安倍の言動はち密な戦略だ。 韓国は1987年の6月抗争を契機にアジアの民主的法治の可能性として注目された。 韓国より前に日本の法治主義が出現したが軍国主義に堕落した。 韓国の法治主義はアジアの新たな代案だった。 中国は情報公開条例をはじめ様々な法を作る時、日本より韓国を多く参考にした。 韓国の法治主義の頂点は開城(ケソン)工業団地だった。 ここで北朝鮮は韓国の法治主義を観察し、16の規定を作って実験した。 北朝鮮がついに「羅先(ラソン)経済貿易地帯法」に行政訴訟手続きを設けると規定したことは、注目に値する発展だった。 「不動産管理法」に土地と建物の登録台帳を導入したことも開城工業団地の経験による所産だ。

 しかし韓国の法治主義は国際通貨基金(IMF)救済金融事態後の労働者解雇とキャンドルデモを行う市民に対する弾圧を経ながら動力を失った。 日本は韓国の法治主義の可能性を認めていた。 そうした中で朴槿恵政府の日本人記者に対する弾圧が起こり、法治主義でも日本が優位であると内外に宣言したのだ。 日本の戦略はち密だ。 日本の主導権は常に韓国を劣等と規定するところから出発した。

 権力が単一の歴史教科書を作り選択権のない青少年に教えるという立法予告に対して、47万人の韓国国民が意見を提出した。 権力者はインターネットでの受け付けもせず、ファックスは一部の時間には切ってあった。 国民の参与を阻めないと見るや、国民の意見を検討すらせずに確定告示をした。 唯一史観を生徒たちに注入するために法がその手段になり手続きになった。

 私はこの事態を韓国法治主義の“中国化”と呼びたい。法治主義とは何か? 権力を法に服従させ、国民の基本権を保障することがその本質だ。しかし、歴史教科書国定化告示は法が権力の支配手段になった事件だ。 権力者ひとりの領導の前に法が服従したのだ。

 新中国を建設した中国共産党が領導する中国モデルは中国人民の選択かもしれない。 しかし、法が権力者の領導に尽くす中国化は韓国の目標にはなりえない。 中国教育部が検認定する中国の歴史教科書は8種ある。 このうち北京では朱漢国教授が執筆した北京師範大学出版社版と李ウェイ科教授の人民教育出版社版教科書を多く選択している。今後、韓国の国定唯一歴史教科書について中国人の前で何と言えば良いのだろうか?

ソン・ギホ弁護士 //ハンギョレ新聞社

 法の名の下に唯一史観を注入する国定化は、法治主義と相容れない。 アジアで輝かしい法治主義魅力国家の韓国になろうとするならば、国定化告示を撤回しなければならない。 安倍の訓戒を聞かされてまで、彼の足跡に従い、彼の戦略に奉仕しようというのか。

ソン・ギホ弁護士(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/readercolumn/715940.html 韓国語原文入力:2015-11-04 18:44
訳J.S(1665字)

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