登録 : 2015.06.22 23:43 修正 : 2015.06.27 18:10

朴槿恵大統領が18日午後、大統領府でファン・ギョアン新任総理大臣に任命状を与えている=大統領府写真記者団//ハンギョレ新聞社
 無能という言葉は今や朴槿惠(パク・クネ)大統領について回る枕詞になってしまった。 セウォル号の惨事とマーズ(MERS)事態を経て、国民は朴大統領がいかに無能であるかを底の底まで知った。彼女は国家の危機局面において自分がどこに立つべきか、そして大統領として果たすべき役割が何であるかも分からず右往左往した。 国民の生命と安全に責任を負うべき大統領と国家が、事実上存在していないのだ。

 しかし、朴大統領よりファン・ギョアン首相候補者の方が心配だ。 朴大統領の無能さは既に定評があるので、国民はそれに合わせて生きて行く方法を探せば良い。 無能はまた、何もしないという無為にもつながるから、韓国社会に致命的な害悪をもたらしはしない。 それによる国家的混乱で国民が莫大な被害を受けはするものの。

 ファン首相候補者は違う。 彼は決して無能ではない。 何もしない人間ではいよいよない。 統合進歩党解散に見るように、決めた目標は最後までやる。 解明されていない幾多の不正疑惑にもかかわらず、首相の国会承認を目前にしているではないか。

 彼が人事聴聞会を準備する態度と聴聞会での発言を見ながら、最初に浮かんだ単語は「厚黒」だった。 「厚黒」は「面厚」と「心黒」を合わせた言葉で、厚顔で(面の皮が厚く) 心が黒い(腹黒い)という意味である。 清が傾くことを心配した中国人李宗吾が主唱した「厚黒学」から出た言葉だ。 李宗吾は中国古代の歴史をあまねく調べたあげく、勝者になるためには厚黒(面の皮が厚く腹黒)でなければならないと力説した。

 ファン首相候補者は李宗吾の厚黒学に忠実だった。 いままで落馬した普通の候補者とは全く違っていた。 マスコミが多くの疑惑を提起しても、「聴聞会で明らかにする」と言ってマスコミ報道を徹底的に握りつぶした。 疑惑が提起される度に即時釈明に出て“自販機”なるあだ名を得たイ・ワング首相とはまるで違う。ファン候補者が無対応で徹したため、マスコミもそれ以上疑惑提起を続けることができなかった。 過去に中途で降りなければならなかった首相候補者たちの経験から学んだことかも知れないが、単に1年や2年学んだ実力ではなかった。

 ファン候補者はまた、自分に不利な資料は国会に提出せず最後まで押し通した。 野党側聴聞委員がいくら急き立てても、個人の秘密保護などを理由にそれを黙殺した。 野党としては資料がないので検証しようにもできない。 そのようにして3日間の聴聞会はあっけなく終わった。

 野党は資料提出拒否に対して謝罪を要求したが、それさえも貫徹できなかった。 実質的に聴聞会の主導権を握ったファン候補者は、謝罪ではなく「包括的遺憾表明」をすると言っているようだ。 それも首相任命後の話だ。幾多の不正疑惑が提起され、野党から不適格判定を受けたファン候補者が、逆に刀の柄を握って振るう形になったのだから、すごい反転ではないか。 相当な厚黒の境地に達しなくては成し遂げ難い“勝利”だ。

 ファン候補者のこのような性向は一日二日のことではないようだ。 彼は法務部長官だった2013年6月、国家情報院大統領選挙介入事件の特別捜査チームが公職選挙法違反容疑を適用してウォン・セフン元国情院長の逮捕状を請求すると言うと、これを拒否したことがある。 その理由としたのが「法律家の良心」だった。 一般の人々は相手が良心をかけて言うと言えば概して本気だと信じてくれる。ファン候補者は一般人のこんな常識を最大限に利用しようとしたのだろう。 勝者になるためには良心さえも市場で犬や豚を取り引きするように売り飛ばすことが出来なければならないと教えるのが厚黒学だ。 彼の反民主的な政治性向や解明されていない兵役・脱税などの疑惑だけでも首相としては不適格だが、さらに大きな問題は彼のこのような厚黒処世術である。

チョン・ソック編集人 //ハンギョレ新聞社
 李宗吾は、清末に押し寄せる外勢を退け国を救うための手段として「厚黒」を主唱した。 単に勝者になるための「厚黒学」を説いたのではなかった。 ところが「救国」という厚黒の本質はかなぐり捨てて、厚顔さと腹黒さという処世術だけを取るならば、救国どころか国を亡国の道に導くことになる。 ファン候補者がそのようにして国を危険に陥れる人物ではないか、案じられるところだ。 それで、朴大統領の無能よりファン候補者の厚黒の方が恐ろしい。

チョン・ソック編集人 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-06-18 01:09
http://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/696386.html 訳A.K(1976字)

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