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[社説]「MERSにかかれば補償金」が観光対策

登録:2015-06-17 07:32 修正:2015-06-17 07:57
韓国を訪問した外国人が4日、マスクを着用したままソウル駅都心空港鉄道ターミナルにいる=イ・ジョンヨン先任記者//ハンギョレ新聞社

 文化体育観光部(文体部)が15日、(韓国)政府負担で外国の観光客に安心してもらえるというMERS保険を設けると発表した。文体部が示している内容によると、MERSにかかると旅行経費や治療費に、3千ドルまで援助金を受けられる。死亡の場合最大1億ウォンまで支援するという。病気にかかったら金で補償するので安心して観光してくださいというのは、世界中のどこにもない、あきれる発想だ。

 立場を変えて考えてみよう。ある国が政情不安からテロや拉致が頻発して観光産業が危機を迎えたとしよう。その国でテロにあえば保険で補償するから心配せずに観光に来てといったらそれに応じる人があるだろうか。果たしてそのような間の抜けた観光客がいるのか疑問である。むしろ韓国はあまりに危険なためにそれほど極端な対策までしようとしているのかと考えるだろう。むしろ危険だと宣伝するようなものだという批判までされる状況だ。一言でいえば実効性は全くない机上行政の典型といえる。

 政府は22日から入国する外国人を相手にこの保険をさっそく施行するという。MERS発症初期に防疫力を集中できずに対応時期を逸した政府が、このようなあきかえるアイデアを素早く実行に移すといこともおかしなものだ。安心観光保険を発表した後にネット上で「私も外国人になりたい」という訴えがあふれている。国民はすでに19人が亡くなって5千人余りの隔離者が苦痛を味わっているのに、外国人に特別支援金を与えるという知らせは、剥奪感を呼び起こすというものであろう。観光支援も良いが、度を越してはならない。

文化体育観光部が15日発表した「MERS関連観光業界支援および対応の準備・施行案」//ハンギョレ新聞社

 政府の態度はセウォル号事件の時と似ている面もある。政府はセウォル号事件の真相究明と再発防止策にはフタをしたまま補償金から論じた。市民の不安と不信を根本的に解決することは出来ないままに問題発覚だけは防ごうという発想が相変わらずであるのだ。

 MERS事態以後、外国観光客が減って業界が打撃を受けているのだから、産業界の被害を調査することは理解できる。しかし事態が難航しているときほど問題の根本原因を指摘することが重要になる。今必要なことは政府がMERS拡散防止に総力を挙げて正確な情報を迅速に公開することだ。それが国民でも外国人でも分けへだてなく不安を鎮める最善の方法である。文教体育省のアイデアは官僚が仕事をしているように見せかける詐欺効果はあるかも知れないが、政府がこのような発想にとりつかれている限り事態の解決はいっそう遠ざかるほかあるまい。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015/06/16 18:45

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/696197.html 訳T.W

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