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[コラム] 危機を危機と認識できない“朴槿恵危機”

登録:2015-05-26 00:21 修正:2015-05-26 07:31

 朴槿恵(パク・クネ)政権に対する憂慮が、老若男女も理念の左右に関係なく全方向的に噴出している。 大統領が国と国民を心配するのは当然だが、むしろ国民が大統領と国を見て心配しなければならない逆転した状況が広がっている。

 任期がほとんど折返し点に達した朴槿恵政権は今、国の内外で最大の危機に直面しているといっても過言ではない。 朴大統領が2年半にした仕事が何なのかを調べれば、危機の深さがどの程度なのかを察することができる。 “100%の大統領”どころか“30~40%程度の大統領”から抜け出せないほどに大統領の力は落ちて久しく、国は事案毎に分裂している。 経済は福祉でも成長でもない正体不明な路線の中で空しく下り坂を歩んでいる。 初期には絶対に上手くやると自画自賛した外交・安保でも、北朝鮮と日本に対して自ら設定した“タリバン的基準”に足をとられてフラフラしている。

 野党議員の話によれば、大統領ならば自身の任期中にしておきたいいわゆる“大統領事業”を予算に入れて押しつけるのが普通なのに、二度の予算を審議してみても確実にこれと思われるような予算はなかったという。 金大中(キム・デジュン)大統領時のベンチャー支援、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領時の世宗(セジョン)市・革新都市、李明博(イ・ミョンバク)大統領時の4大河川のような大型事業は目につかず、予算審議もそれほど緊張感がなかったという。浪費的な事業は当然行わない方が良いが、“創造”とか“未来”とか言って騒ぎ立てたことを思えば、それに見合う行動が伴っていないのは確かなようだ。 朴大統領の業績で思い出されるのは、統合進歩党解散の他には何もないという話が出てくるほどだ。

 ソンワンジョン・スキャンダルに関わって辞退したイ・ワング前首相の後任に、統合進歩党解散およびソンワンジョン・スキャンダルをはじめ重要な懸案が弾けるたびに大統領の“舌”の役割をしてきたファン・ギョアン法務長官を指名したのを見れば、朴大統領の現状を見る目がどれほど自己中心的で鈍感なのかを知ることが出来る。 他の人々がどう言おうが“マイウェイ”を貫く強情と独善しか見えない人事だ。 パク・サンオク大法院(最高裁)判事承認の時のように数の力で押しつけようという考えだろうが、ファン長官の首相指名と共に与野党協力や統合の政治は水泡に帰したと見るのが正しい。

 政治が多少騒々しくとも、経済が順調ならばまだマシだが、経済事情は一層問題だらけだ。 円とユーロの持続的な劣勢により輸出動力が大幅に弱まり、20~30代の就職未経験失業者が過去12年間で最高値の9万5千人に達するほどに青年失業が固定化している。 韓国開発研究院が20日に発表した今年の成長率修正展望は今後一層悪化するだろうと予告している。 当初3.5%から3.0%に展望値を修正したが、3.0%と言っても、そこに基準金利の追加引き下げ、税収目標値の達成などほとんど不可能な条件をいくつか付けられていることを考慮すれば2%台の成長に終わると公言したに等しい。 そして経済首長であるチェ・ギョンファン副首相の存在感は時間の経過とともに薄れている。

 外交・安保問題については一層難しい。金正恩(キム・ジョンウン)国防委員会第1委員長のロシア訪問取り消し、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)射出試験、ヒョン・ヨンチョル人民武力部長粛清、パン・ギムン国連事務総長訪北許可取り消しと続いた北朝鮮の不透明な様子から見て、困難があることは事実だが、“にもかかわらず”の姿勢で北朝鮮と対話し協力を引き出すことだけが朝鮮半島問題に関する韓国の立場を強める道だ。 ところが、ヒョン・ヨンチョル処刑説の生半可な公開と、それに対する大統領の相次ぐ批判発言で北を刺激し、自ら韓国の立場を縮小させている。 このような形が続けば、6月の韓米首脳会談は“朝鮮半島問題の米国化”を加速する場になることが明らかだ。

オ・テギュ論説委員室長 //ハンギョレ新聞社

 イタリアの哲学者アントニオ・グラムシは「危機とは、古いものが滅びつつあり新しいものがまだ生れていない状況」と言った。 しかし、朴大統領の危機はむしろ危機を危機として認識できないことではないだろうか。“唐太宗の魏徴”(直言する人)のような人物は見当たらず、ゴマすりばかりがいるのが本当の心配ごとだ。

オ・テギュ論説委員室長(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/692710.html 韓国語原文入力:2015-05-25 18:51
訳J.S(1937字)

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