明日、ホン・ジュンピョ慶尚南道知事が被疑者身分で検察に召還される。 検察の「ソンワンジョン・リスト」特別捜査チームが発足して約1カ月ぶりだ。 捜査速度が遅いようでもどかしいが、これで一旦は検察の捜査が重要な転換点をむかえることになった。 ホン知事の司法処理の有無が今後の捜査地図に少なからぬ影響を及ぼすためだ。
ソンワンジョン・リストに名前が上がった8人のうち、ホン知事がなぜ最初に選ばれたのだろうか。 現金伝達者の具体的な証言が出てくるなど、容疑の立証が容易なだけではないだろう。ホン知事は学校無償給食撤回で世論の非難を受けており、政府与党に負担を負わせた。 検察としては朴槿恵(パク・クネ)政権のやっかい者になったホン知事を司法処理することに格別の負担を感じずに済むという事情がある。 ホン知事が「今回は(囲碁の)劫立て(こうだて)に使うのではないだろう」と話したのもこのような情況を念頭に置いてのことだろう。
同じ論理で見れば、二番目の対象はイ・ワング前首相になる可能性が高い。聴聞会過程からあらゆる疑惑が提起され国民の信頼を失った。 ソンワンジョン・リストに名前が上がって議論になると、セヌリ党までが自主的に辞退しろと圧迫を加えた。 すでに捨てられたカードであるわけだ。 検察の身動きが一層軽くならざるをえない。
実体的真実を明らかにするのは検察の捜査意志と力量にかかっているだろうが、ひとまず二人に対する捜査までは比較的順調に進行されると見られる。 問題はその先だ。
検察がその次ぎに越えなければならない関門は、前・現職の大統領秘書室長3人だ。 これは侮れない。 ソン会長のメモや録音だけで容疑を立証することは容易でない。 三人の捜査過程では外部からの影響も加えられるだろう。 検察が大先輩であるキム・ギチュン前室長の壁を果たして乗り越えられるかが最大の関心事だ。 ソン会長がキム前室長に10万ドルを与えたという陳述があり、検察が意志さえ見せるならば司法処理はさほど難しいことでもない。
イ・ビョンギ現職秘書室長はさらに高い障壁だ。イ室長は国会答弁で「朴大統領が『(リストに)名前が上がっていたがどういうことなのか」で尋ねたので『金銭関係は全くない』と答えた」と述べている。 そして「朴大統領がそれを信じると言った」と付け加えた。 朴大統領が自身の潔白を保証したと明らかにしたわけだ。 もし朴大統領が特有の語調で「イ室長は金を受け取っていないと言ったんですよ!」とでも言えば、検察としてはどうにも動きづらくなる。事実上、捜査指針を下した格好になるためだ。
最後の第三の関門は、朴大統領の大統領選挙資金に関連するものだ。ソン会長はメッセージに「釜山市長2億、ホン・ムンジョン2億、ユ・ジョンボク3億」と具体的金額まで書いていた。 この3人は、2012年朴槿恵選挙運動本部の党務調整本部長、組織総括本部長、職能総括本部長をそれぞれ務め、核心的な役割を果した。
すでに国家情報院と国軍サイバー司令部の不法選挙介入が確認されているというのに、これら3人に不法資金が流れたことが確認されれば、朴大統領は不法に汚された選挙を通じて当選した“不法大統領”になる。 大統領としての正統性に致命的な打撃を受けることになるわけだ。 それだけにこの点に対する捜査が持つ意味は重大だ。
朴大統領もセヌリ党も表面では徹底捜査を通した政治改革を言ってはいるが、これをすんなりと信じる国民はいない。 責任を負わなければならない事件当事者が、あたかも他人事のように話す意図は何か、賢い検察が分からないわけもない。 検察がこれに寄り添って、第一関門を越えたところで有罪の立証が難しいという巧妙な法理を突きつけて、第二関門の周辺でためらったり、あるいは刃を野党側に向けるならば、政治検察という汚名を免れないだろう。
ムン・ムイル特別捜査チーム長は今回の捜査をしながら、この間検事として抱いてきた良心を失わず守って行くと誓った。 キム・ジンテ検察総長も人事を尽くして天命を待つという言葉を残した。 そういう話を口先だけに終わらせないためには、ソンワンジョン・リストの核心である朴大統領大統領選挙資金まで暴いて明らかにしなければならない。 ムン・チーム長としては、どんな捜査結果を出そうが、どのみち検事としては最後の捜査になる運命に立たされている。 彼が好んで使う言葉の通り“明澄に”検事生活を終えることを望む。