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[寄稿] AIIBとワシントン・コンセンサスの終末

登録:2015-04-27 21:45 修正:2015-04-28 07:37
アジアインフラ投資銀行(AIIB)の概要 //ハンギョレ新聞社

 600年前、明の鄭和提督は途方もない船団を率い大洋を渡りアジアとアフリカを探険した。 当時、世界経済の中心は東アジアであった。 産業革命以前のヨーロッパは永く停滞していたし、東洋は進んだ技術と文化を誇り黄金時代を花開かせていた。 今、中国は資金を武器に再び全世界に影響力を及ぼす帝国の夢を見ている。 最近中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)は創立会員国として57カ国が参加し盛況を博した。 米国のプードルから中国の愛玩犬に変身したと言われながら英国が参加を宣言し、他のヨーロッパ国家も英国に従った。 不透明な支配構造を理由にこの銀行を支持せず、他の国家にも圧力を加えた米国はがかなり不満だろう。

 このような変化の背景は、やはり世界経済秩序の再編だ。 1990年代から中国など新興経済国の経済成長が先進国を圧倒し、金融危機以後にもこれらの国々の成長展望は相対的に明るい。 特に3兆7000億ドルを超える外国為替準備金と途方もない規模の市場に基づいた中国の経済力は誰も無視できないのが現実だ。 しかし、国際機構に関してこれらの国々の影響力は僅かで、2010年には国際通貨基金も中国の投票権を3.8%から6.07%に高めるなど新興国の持分を高めることを決めた。 だが、米国議会は相変らずこの改革案を拒否しており、中国はアジアインフラ投資銀行やブリックス(BRICS)の新開発銀行など新たな機構を設立することに精魂を込めている。

 アジアインフラ投資銀行の成功と国際社会の期待もまた、世界銀行と国際通貨基金に代表される米国主導の国際金融体制に対する批判とも関連が深い。 米国が拒否権を握っているこの機構の支配構造改革は遅々として進まず、多くの国家の不満が強い。 また、市場原理主義に基づいて開発途上国に提言した財政緊縮と自由化、そして経済開放を内容とする“ワシントン・コンセンサス”は貧困の解決に失敗した。 したがって、ポスト・ワシントン・コンセンサスに関する種々の議論が行われたが、国際機構は別に変わろうとしなかった。 最近も世界銀行はエチオピアで、この機構が後援する開発プロジェクトで多くの貧困層が居住地から追い出され激しい批判を受けたし、社会的保護基準を守れなかったことを自ら認めた。 しかし金融危機以後、国際機構内でも市場原理主義経済学の退潮は明確になっている。 国際通貨基金は先日、資本の統制を認め所得不平等を批判したし、今年3月には労働組合の弱体化が不平等の深化と関連が深いという研究結果を報告した。 また、資金支援の条件として緊縮を強調しているが、2010年アイルランドに対する支援過程では社会的影響を考慮する前向きな姿を見せた。

イ・ガングク立命館大学経済学部教授//ハンギョレ新聞社

 この機構の改革はまだ先は長いが、中国が主導する国際金融機構の登場はこれらの変化とワシントン・コンセンサスの終末を加速する展望だ。 先日は、国家資本主義に基づく中国式経済発展戦略である北京コンセンサスが国際社会の注目を浴びもした。 しかし、中国の対外援助は人権や環境問題などに関する憂慮が大きく、北京コンセンサスも民主主義の抑圧と所得格差の深化を内包している。 したがって、中国の浮上と共に国際社会が新たな開発のコンセンサスを作るために知恵を集めなければならないという声が強い。 韓国は高度成長と金融危機、そして構造調整を全て経験したという点で、この過程での役割が小さくないだろう。 もちろんその前に私たちがしなければならないことは、民主主義は不十分なのに、規制緩和の主張は相変らずあふれる韓国経済の現実に関し真剣に悩むことだ。 急変する世界経済秩序の前で、時代の変化を読んで自らを振り返り未来を準備する見識が要求される。

イ・ガングク立命館大学経済学部教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/688634.html 韓国語原文入力:2015-04-27 18:44
訳J.S(1702字)

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