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ホン・ジュンピョ知事への一高校生の手紙

登録:2015-04-01 23:40 修正:2015-04-02 08:04
洪準杓慶尚南道知事が2013年4月23日、慶尚南道庁会議室で記者懇談会を行っている 昌原/カン・ジェフン先任記者//ハンギョレ新聞社

 こんにちは。 洪準杓(ホン・ジュンピョ)知事に申し上げます。

 私は慶尚南道馬山(マサン)の台封(テボン)高校1年、イ・ヒョンジンと申します。ホン・ジュンピョ知事が無償給食を廃止して以来、私たちは花開く春を楽しんでばかりはいられなくなりました。 お父さんお母さんたちの中にはハンストを始めた方々もおられます。 両親と先生、友人達の心配でいっぱいの表情と騒がしい社会の雰囲気を見ていられなくて、こうしてお手紙を差し上げることにしました。

 ホン知事は、学校は勉強しに行くところであって、ご飯を食べに行くところではないとおっしゃいましたね。 とてもびっくりしました。 ホン知事にも確かに学校に通った時代があったでしょうが、本当に模範生だったんだなと思いました。 私のような平凡な生徒たちは、ひたすら勉強だけのために学校に通うのではありません。 生徒たちにとって、学校は単に勉強しに行くところではなく、生活全部が込められた小さな宇宙なのです。 もし大人たちに会社は仕事だけをする所だと言ったら、どんな気持ちになるでしょうか。

 昼食時間が生徒たちにとってどんなにすごい時間なのかよくご存知でないホン知事に、その時間の意味を説明して差し上げたいと思います。 うちの学校は小さな全寮制学校なので、三度の食事を友達や先生と一緒にします。 それで私は少なくとも一日三回は楽しく幸せです。 友達とけんかして気まずくなっても、相手のご飯の上に一切れの肉をのせてやることで和解し、特別メニューの日には大騒ぎで奪い合って食べたりします。 これまでの学校生活を振り返ってみると、学校の中で最も熱く生きている空間は給食室だと断言することができます。 それで私は、少なくともこの空間に限っては、誰も差別されず、皆が“同じく”幸せでなければならないと思います。

 ホン知事にはおかしく聞こえるでしょうが、食事をするのも勉強です。 子供のころ、心優しいお坊さんが、「コメ一粒に全宇宙が入っている」という話をしてくれました。 その時から私は、ご飯粒を残さず食べる習慣をつけるようになりました。 机の上に劣らず食卓でも多くのことを学びます。 長く伸びたイライラするような配膳の列を立って待つことも学び、食べるのが遅い友人に自分の食べる速度を合わせながら配慮ということを覚えます。 机に向かって勉強する力も、食卓に座って育てるのです。 ホン知事は生徒たちの勉強のことをそんなにも気にかけていると言いながら、逆に勉強する力を奪っているのです。

 人が一堂に会して食べ物を公平に分けて食べることこそ、いちばん基礎的な民主主義教育だと考えます。 私たちのように食べ盛りの年頃には、毎食がお祭りです。 こんなに深い意味のあるものが勉強でないなら、いったい勉強とは何ですか?

 貧困な家庭の子供により多くの福祉恩恵を与えるという選別福祉に、私たちも反対するのではありません。 しかし、現実はそれとは余りにもかけ離れています。 実際に貧困な当事者も本当にそう感じるかどうか、考えてみられましたか? ホン知事もレッテル効果という言葉を聞かれたことがあると思います。 私はこれまで友人関係で、少なくとも貧しさのために問題が生じたことはありません。 一緒に遊ぶのにそんなことは何の関係もないからです。 一緒に同じご飯を食べているのに、貧しいからとか裕福だからとか、そんなことは何の関係もないことです。でも、無償給食が消えてしまえば、それはもう、関係のないことではなくなります。 誰々は貧しいからタダのご飯を食べて、誰々は経済的に裕福だからお金を払ってご飯を食べる。こうなったら、学校の雰囲気は一変してしまうかもしれません。 自分のうちの貧しさを食事の度に感じなければならない子供が、果たして福祉の恩恵に感謝の気持ちを持つでしょうか。 みんなが同じご飯を食べている間は貧しさが何の問題にもならないけれども、選別福祉が施行された瞬間、対象者は本当に貧しい子供になってしまいます。 ホン知事は、家庭の貧しい生徒たちのための福祉と言われますが、「辛く、心安らかでない福祉」となるのは火を見るよりも明らかです。 世の中で一番楽しく平等であるべき給食の時間に「誰々のご飯は3200ウォン、誰々のご飯はタダ」という言葉が飛び出さないことを望みます。

 無償給食を返してください。 この頃は春の日差しが暖かくて、うちの学校の生徒たちは給食のトレイを持って縁台やベンチに腰掛けてご飯を食べています。 この平和な姿をホン知事に見せてあげたいです。 どうぞお元気で。

2015年3月29日

イ・ヒョンジンより(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/rights/684744.html 韓国語原文入力:2015/03/31 10:32
訳A.K(2128字)

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