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[社説] 原発誘致賛否を問う三陟の住民投票を阻んではならない

登録:2014-09-03 01:52 修正:2014-09-03 08:15

 三陟(サムチョク)市の“原発誘致申請撤回住民投票”要求が果たして拒否された。国家事務は住民投票の対象ではなく、原発は国家事務に当たると安全行政部と三陟市選管委が有権解釈を下したためだ。住民参加の拡大という趣旨で作られた住民投票法を紙切れにする誤った決定だ。

 まず安全行政部と選管の責任判断自体に問題がある。同市の住民投票要求は、原発建設ではなく誘致申請撤回の賛否を問うものだ。誘致申請の主体は同市であるから、当然に自治事務に該当するものだろう。申請が自治事務ならば撤回もまた自治事務であることはあまりにも明白だ。三陟はまだ原発の場所として確定しておらず候補地に過ぎない。国家事務が始まったとは見がたいわけだ。

 しかも同市の原発誘致申請撤回には市民の圧倒的多数の意思が折り込まれている。2010年の同市の誘致申請自体が住民投票の実施を前提にした“条件付き申請”だった。最近、同市議会は原発誘致申請撤回住民投票同意案を全会一致で可決した。前回の地方選挙で62.4%の支持率で当選したキム・ヤンホ市長の筆頭公約は原発白紙化だった。福島原発事故以後、安全問題が台頭して住民の意思が急変したのだ。

 他の事業との公平性の問題もある。放射性物質廃棄場を選定する際には住民投票を経なければならないのに、廃棄場よりはるかに脅威となる施設の原発に対してのみ住民投票を阻むならば論理的矛盾であり、立法の不備と言える。これを補完するために原発建設の前には必ず住民投票を経るように定める電源開発促進法改正案も国会に提出されている。

 仮に原発問題が国家事務だとしても、中央政府の該当分野の長官が求めればいくらでも住民投票を行える。それなのに政府が躍起になって住民投票を阻もうとする理由は容易にわかる。住民投票を実施すれば誘致申請撤回の結論が出ることが明らかだと見ているためだ。

 政府は扶安(プアン)で住民の意思を無視して放射性物質廃棄場を押しつけたが、途方もなく問題化した末に結局は撤回せざるをえなかった。その反対に、慶州(キョンジュ)では住民投票を通じて比較的順調に廃棄場の誘致を確定した。原発誘致のような敏感な問題を多数の住民の意に逆らって進めれば、必ず失敗するということを分かりやすく示す例だ。

 原発誘致は地域住民の生活に決定的な影響を及ぼす。生命と直結した問題でもある。それでも住民投票の対象ではないと言うなら、いったい何が住民投票の対象になるというのか問わざるをえない。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/653868.html 韓国語原文入力:2014/09/02 18:21
訳T.W(1159字)

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