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[現場コラム]歴史教科書国定化で揺らぐ韓国の安倍政権批判

登録:2014-08-28 10:14 修正:2014-08-28 10:45

 韓国史教科書を国定に変換する論議を始めた26日の教育部の討論会のニュースを聞き、思わずため息がでてきた。政府の今回の政策が、対日外交で韓国の国益を根本的に棄損することになるという不安な予感がしたからだ。現在最悪の関係にある韓日両国がぶつかるもっとも熾烈な前線は、ほかでもない「慰安婦問題」に代表される歴史問題だ。では、なぜ慰安婦問題は解決しないのか。いくつかの理由が考えられるが、注目すべきは慰安婦問題に関する日本の教科書の記述が持続して減っている事実にある。

 日本で教科書運動を続ける「子どもと教科書全国ネット21」の集計によれば、1997年版の日本の中学校教科書には7種すべてに慰安婦関連の記述があったが、2002年版には2種、2006年版には1種に減った。2012年12月に執権した安倍政権は教科書の執筆基準となる「学習指導要領」と「検定基準」を強化し、教科書に対する露骨な国家統制を試みてきた。「自虐史観」に染まった現行の歴史教科書を変えてしまおうと狙ってきた日本の右翼たちの宿願が現実になろうとしているのだ。

 そんな安倍政権でさえ手をつけられない政策がある。まさに今の朴槿恵政権が推進しようとする「国定」教科書制度だ。

 日本は過去の軍国主義時代に義務教育の小学校のすべての教科書を国定として使用していた。政府が全国のすべての子供たちを同じ教科書で教え、「忠良な皇国臣民」を作り上げた後に戦地へと送り、天皇のために惜しみなく死なせたのだ。敗戦後の1948年、日本は国家が教科書で国民の精神を統制するのは望ましくないとの反省にたち、既存の教科書国定制度を廃止して検定制度を実施した。その後も検定制度を通して教科書を統制しようとする国家の執拗な試みは続いたが、1962年に始まり32年間続いたいわゆる「家永裁判」などを通して、国家が教科書で国民の考えを統制するのは正しくないとする揺るぎのない社会的合意が形成された。結局、安倍政権も検定制度の枠を維持しながら、間接的な方法で教科書を統制強化する道を選ぶしかなかった。

キル・ユンヒョン東京特派員

 これまで韓国政府とマスコミは、安倍政権の教育政策と教科書の右傾化に対して「子供たちに社会の多様な意見を幅広く教えるというより、政府の見解を注ぎ込むもの」と反復的に批判してきた。今は韓国政府が、デタラメな「教学社」の歴史教科書の採択率が事実上ゼロを記録すると、子供たちの教育内容を政府が直接統制しようと国定化のカードを切ろうとしている。安倍政権より大胆なことをしようというのだ。

 被害者であっても自ら堂々とした立場になければ相手を説得することなどできない。日本はこの先、韓国政府の批判にどう対応するだろうか。国際社会の世論は、国定教科書に逆戻りする韓国とそうではない日本の歴史論争をどう見るだろうか。

東京/キル・ユンヒョン特派員 charisma@hani.co.kr

韓国語原文入力:2014.08.27 21:59

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/653139.html

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