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【キム・ソヌの赤信号】 古里(コリ)号

登録:2014-06-06 22:57 修正:2014-06-07 08:12
キム・ソヌ 詩人・小説家

土のにおいが春から夏に変わった。凍っていた冬の土が溶けて暖かく膨らむ春の野は、この上なく官能的だ。 膨らむということは他の存在のために息をする穴をたくさん持つということ。そして春の土が夏の土になるということは、その息をする穴で新しい生命が本格的に生を営み始めるということだ。

 蛙の鳴き声が盛んな夏の土の野で、私は不安になる。 この地の人々が直面することになるまた別のセウォル号のことが、脳裏を離れないからだ。 原子力という言葉は、核という言葉の恐怖感を巧みに緩和させる。老朽化した核発電所である古里(コリ)1号機は、30年の設計寿命がすでに終わったのに、どうしたことか2017年まで稼動が延長された。度重なる故障、隠蔽、賄賂非理不正、不良部品の使用、運営管理の閉鎖的な人脈構造などがセウォル号と非常に似ている。もしコリ号が沈没した場合、直接被害の規模は300万人。 人間だけが犠牲になるのではなく、私たちが衣食住を依存して暮らしている全ての土台が壊滅する。設計寿命が満了したのに、依然として稼動している月城(ウォルソン)1号機も事情は同じだ。この狭い土地の上に23個の核発電所があり、中でも古里と月城は時限爆弾に他ならない。季節ごとに異なって感じられる土の匂いの中で暮らしたいという素朴な願いすら、じきに終わりとなりそうな恐ろしい予感が払拭されない。 この予感が“潜水艦の中のウサギ”を自任する一人の詩人の過敏さで終わることを望むけれども、はたして今何も起きていないからといって、これが何でもないことなのか。

キム・ソヌ 詩人・小説家

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/640095.html 韓国語原文入力:2014/06/01 18:18
訳A.K(801字)

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