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[朴露子の‘韓国、内と外’] 朴槿恵(パク・クネ)、最悪の大統領

登録:2013-12-25 23:48 修正:2013-12-26 08:43
イラストレーション キム・デジュン

 この文を書くのに先立ち一つ告白しなければならない。 実は私は大統領を誰がするかについて、それほど関心がない。 大統領は誰がなろうが1997年以後、新自由主義的政策は一度たりとも変わることも修正されたこともなかったためだ。 例えば今問題になっている鉄道を見よ。 鉄道庁を鉄道公社に変えるなど大資本が鉄道に介入できる余地を最初に作り出したのは盧武鉉の時であった。 また、高速鉄道女乗務員の不法で非道徳的な多段階間接雇用も盧武鉉の時に始まったことで、女乗務員が2006年以後には何年間これに対抗し闘争したが‘民主的’政権から受けたものは弾圧しかなかった。 2009年に鉄道ストライキを弾圧し169人の解雇者を作ったのは李明博だった。 今日のストライキはまさにこのような過程の延長線上にあることで、2000年代に入り民営化立法撤回のための最初の鉄道ストライキは金大中時期である2002年にすでに起きた経緯がある。 果たして闘争する労働者の立場で見るならば、金大中や盧武鉉のような自由主義政権と、その後の極右政権の差はそれほど大きいだろうか?

 大統領に誰がなろうが政策の核心を大統領が主体になって決めるわけではない。 三星(サムスン)経済研究所をはじめとする国内財閥の頭脳集団らと海外大資本の要求を、当選に成功した政治家が進んで加減しながら経済政策だとして出すだけだ。 事実、外交政策も同じだ。 韓国の大統領が太陽政策、すなわち太陽の光が道行く人をして服を脱がせるように、北韓の市場化を誘導するという次元で制限的な対北韓経済協力を行う程度の権限があるだけだ。 盧武鉉初期のように中国に対する親和的ジェスチャーをする権限までは付与されていて、またワシントンの天子がイラク出兵のようなことを命令する時に多少不満そうな表情を浮かべる自由まではある。

 しかし一介の侯国の侯王としては、帝国の出兵命令を正面から拒否したり競争帝国である中国にジェスチャー以上に政治・軍事的に迫ることは大統領に誰がなろうがほとんど想像外のことだ。 もしかして、もう一度盧武鉉の後継者が政権を取っても、例えば南北共同軍縮をしながら北韓との軍事・安保協力を始めるなど、実際的な米・日・韓三角同盟の枠組み破ることは至難だろう。 大統領に誰がなろうと、既存の保守的基本枠が残っている限り、すなわち何らかの急進的変革が起きない限りは経済的新自由主義と政治・軍事的米帝国への服従は私たちにとってただ存在の基本条件であるわけだ。 故に大統領に誰がなり、大統領が何をするのかに対して一喜一憂する必要があろうか?

 しかしそうは言っても、朴槿恵の去る1年の執権期間が見せたものは、極右政治家出身の大統領にしても、朴槿恵(パク・クネ)があまりにも独歩的な(?) 存在という点だ。形式的民主化以後の去る25年をまるごと見て回れば、この程度まで時代錯誤的で非常識な権力が生まれたことは初めてであるようだ。 事実、このような水準の極右政治家が政党党首、そして大統領候補に上がることができたというのは、韓国政治に最高選挙職を指向する政治家の‘品質’を検証するシステムが作動していないという事実を示している。

 検証システムが作動したとすれば、今後保守にとっても災難となる‘朴槿恵執権’という名前の敗北の悲喜劇を事前に免れ得ただろう。

 朴槿恵に比較すれば、南北基本合意書の締結に乗り出した盧泰愚や、金日成と首脳会談をしようとした金泳三まで統一指向的進歩政治人に見えるほどだ。 ろうそくのあかり事態に押されて、大運河など最も妄想的な計画をそれでも撤回するなり大幅修正した李明博は疎通することのできる政治家に見えるほどだ。 事実、大韓民国の真の‘主人’、すなわち財閥の大株主たちは、朴槿恵の大統領職実行能力水準がみな暴露された今こそ、彼らの地頭格である彼女を解任すべきではないか慎重に考慮してみる必要がある。 このように進めて終局に至れば、彼らの富まで‘アンニョン(安寧)’ではいられない状況が広がりかねないからだ。

 朴槿恵の前任者である李明博の対北韓政策は完敗した。 途方もない資金と努力が込められた太陽政策を放棄したが、韓国保守の一角で期待したこととは正反対に、北韓は萎縮するどころか政権世襲の作業を比較的円滑に成し遂げ、新しい権力体系を強固にする一方で、中国投資と対中国貿易、そして下からの資本主義という個人小企業の発展に力づけられた経済成長を継続してきた。 その渦中で執権した朴槿恵は、決意さえすれば前任者の失敗を教訓にして、自分自身と同じく先祖の後光に寄りかかっている平壌(ピョンヤン)の新しい権力者との建設的関係樹立を試みることができた筈だ。 しかし彼女は絶好の機会を逃し、敵対的対北韓関係で一貫したし、対北韓関係改善の代わりに過去の‘北風’と変わりなく北側の問題を相次ぎ国内政治に利用してきた。

 正常な対北韓協力関係を持続してきた盧武鉉は、それに力づけられて米国の侯国の境遇は抜け出せないまでも、それなりに東北アジア均衡者論など米国と中国の間の等距離外交の可能性を示唆するジェスチャーで中国に呼び掛けくらいはすることができた。 これとは違い朴槿恵は対北韓対立路線を走る以上、防空識別区域を巡る今のような中-米葛藤で韓半島の住民たちの実質的な利害関係とは関係なく引き続き米国に対する無条件忠誠で一貫して大陸(中国・ロシアなど)からの疎外を甘受しなければならないだろう。 朴槿恵は対日関係においては表面では強硬姿勢を取ることによって、米・日・韓三角同盟に事実上は没入しているという事実を覆い隠そうとしているが、極度に偏向した対外政策ということを果たして隠すことができようか?

 朴槿恵の国内政治を一言で要約するなら‘対民闘争’と言うに値する。 新自由主義的イシューで一貫するのは金大中や盧武鉉と格別な差はないが、その一方で労働界に対してはその都度譲歩もして対話も進められた金・盧とは異なり、それこそ疎通も対話もない無知な弾圧しかない。 歴代政権の中に全教組と葛藤がなかった政権はないが、朴槿恵は全教組を完全に法外労組にして大韓民国を産業化された形式的民主国家の中で唯一教員労組のない国にした。 全教組と公務員労組など代表的公共部門労組に対する弾圧の圧巻は、まさに今回の鉄道ストライキに対するファッショ的と言える超強硬対応だった。 朴槿恵は‘自由民主主義’を振りかざすことを非常に好むように見られるが、いかなる自由民主主義国家でもストライキを行う労組の指導部を無条件且つ大量に拘束したりはしない。 参考までに、朴槿恵が英国の極右国務総理サッチャーをロールモデルとしているというが、サッチャーさえも1984~1985年の鉱業労働者ストライキ闘争を弾圧しながら、その指導部を拘束したことはなかった。 ほとんど1年近く続き、3人の命を奪い取るほどに20世紀後半期のヨーロッパ史上で最も激しい闘争であったのにだ。 朴槿恵は果たして‘自由民主主義’の意味を知っているのか? 労組に対する殺人的賠償金請求、仮差押さえ、労組員の職位解除と解雇などが珍しくない大韓民国でさえも、朴槿恵式‘対労戦闘’はすでに非常識と見えるほどだ。 その数多くの‘アンニョン(安寧)’大字報で、鉄道ストライキがしばしば言及されるのは果たして偶然か?

朴露子(パク・ノジャ、Vladimir Tikhonov) ノルウェー、オスロ国立大教授・韓国学

 朴槿恵は大きく誤った判断をする。 彼女が実際に指向するのは、一種の‘半ファシズム社会’のように見える。 言ってみれば「北韓と連係した」と言いながら最も規模の大きな進歩政党の国会議員をむやみに逮捕し閉じ込めてもかまわない社会ながらも、まだ水拷問や電気拷問、そして学徒護国団と新聞に対する報道指針がない、そのような‘中間的ファシズム’社会という話だ。 しかしファシズム建設において‘中道’はない。 朴槿恵がその父王の末期のような全体的破綻をあえて覚悟して、全体的な維新復活に進むことができない以上、超強硬‘対民闘争’はただ民衆の大きな反撃を呼び起こすだけだ。 これこそ禍転じて福となすとでも言おうか? 保守化しつつあった学生層までが、今は‘アンニョンハシムニカ(お元気ですか・安寧ですか)’熱風に見られるように抵抗モードに急旋回し始めた。 したがって最悪の大統領となった朴槿恵を今まで推してきた財閥一家など、この国の実質的‘主人’らは今からでもその誤りを反省して善後策を議論するべきではないかと思う。

朴露子(パク・ノジャ、Vladimir Tikhonov) ノルウェー、オスロ国立大教授・韓国学

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/616853.html 韓国語原文入力:2013/12/25 13:45
訳J.S(3643字)

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