チェ・ドンウク総長の民事訴訟は‘チェ・ドンウク 対 権言癒着’の勝負
出生の秘密は韓国のテレビドラマでよく使われる素材だ。 こっちのチャネルでも、あっちのチャンネルでも婚外情事とか出生の秘密とかいう話を扱ったドラマの洪水だ。 さらには最近ある通信会社の広告には人気週末ドラマに婚外夫婦として出演したタレントがパートナーを変えて出てきて「データが二倍」と叫んでいる。 ‘蓄妾を薦める社会’という話を思い出させる広告だ。
<朝鮮日報>報道に触発されたチェ・ドンウク検察総長婚外子式論議は、出生の秘密という素材をドラマの領域からニュースの時間にまで拡張したという意味を持つ。 視聴者たちは出生の秘密を扱ったドラマが終わるやいなや、ニュースでまた再び同じ素材の話に出会わなければならなかった。 そしてこのような類のドラマが通常‘どん詰まり’の性格を持つように、現実もやはりどん詰まりへと流れた。 いや、ドラマよりはるかに激しい。 視聴者たちは手に汗を握って見守っているが、出生の秘密が明らかになる前にドラマを強制的に早期放映終了し主人公を追い出すやり方がいったいどこにあるのか。
ところではっきり言ってしまえば、チェ総長の婚外子式疑惑を提起した記事こそが権力と朝鮮日報の婚外情事の結果ではないかと思う。 これは記事の遺伝子をあえて鑑識してみなくても自ずと察することができる。 学籍簿と血液型など国家機関が介入しなくては簡単には得られない内密な私生活情報、この報道に前後した権力の動きなど、各種の情況は権力と朝鮮日報間の隠密な交接の疑惑を抱かせるに充分だ。 報道の‘種’は権力のもので、朝鮮日報はその種を受けて育てた畑ではないかという疑問が当然に提起されざるを得ない。
この間、公職者ないし公職候補者に対する言論の検証作業は数えきれない程多かったが、権力と直接交感して高位公職者を追い出したのは類例のないことだ。 検察の国家情報院大統領選挙介入に対する捜査結果に反感を抱いていた人々が意気投合して検察総長婚外子疑惑報道という‘偉大な戦士’を誕生させたとすれば、十分に報道機関に永く残る記念碑的作品たる資格が充分だ。
この戦士の卓越した戦闘能力はすでに立証されているが、それならその本性はどうなのか。 果たして真の子供なのか、でなければ偽りと闇の子供なのか。 その可否は結局チェ総長の婚外子として名指しされた子供の実子有無によって仕分けされるだろう。 チェ総長が朝鮮日報を相手に出した民事訴訟の結果が非常に気になる理由だ。 事実、この訴訟の外的形式は‘チェ・ドンウク 対 朝鮮日報’だが、その実質的内容は‘チェ・ドンウク 対 権力’であり‘チェ・ドンウク 対 権言癒着’だ。 したがって、その結果は単純にチェ総長個人の名誉問題次元を超えて、政治社会的な深刻な意味を内包している。
実子有無を切り分けるための遺伝子鑑識が実際になされるのか、そしてその結果がどのように出てくるかを予断することは難しい。 もしチェ総長の実子であると判明すれば、権力と朝鮮日報間の隠密な接触疑惑ははるか彼方へ置かれるだろう。 児童の私生活や人格、尊厳性の蹂躪問題なども敬遠されて埋められるだろう。 そしてチェ総長は蓄妾人物の上に嘘つきという烙印が捺され、出生の秘密を扱った歴代ドラマ主人公中で最悪のキャラクターとして残るだろう。
しかし、もし朝鮮日報のチェ総長婚外子報道が虚偽であることが明らかになるならばどうなるだろうか。 それは単純に朝鮮日報の敗北ではなく権力の総体的敗北であり、権力と言論の不倫関係の破綻を意味する。 大統領府は今、チェ総長に対する監察を強行し何らかのきずでも捜し出そうと血眼になっているが、かと言ってこの過ちを覆い隠すことはできない。
何よりも滑稽になるのは私たちの国家機関の情けない情報収集能力だ。 大統領府民政首席室と国家情報院などが総出動して、現職の検察総長の裏調査を隅々までしたにも関わらず、結局無駄骨だったとすれば、これほどの恥さらしの種がどこにあるだろうか。 これら機関の存廃問題までも挙論されなければならない状況になる。 もし初めから誤った情報であることを知った上で工作を行ったのであれば、罪はより一層重い。 その後暴風は権力の根幹を揺るがすほど深刻なことにもばりうる。 権力がその時になってこの偉大な戦士が自身の実子ではないとこっそり逃げ出すことになってはならない。
最も重要なのは結局真実だ。 出生の秘密を素材にした史上最大のブロックバスタードラマは、もう幕が上がった。
キム・ジョング論説委員 kjg＠hani.co.kr
訳J.S(2185字)
