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[社説] ワシントンポスト売却が投げかける教訓

登録:2013-08-07 21:28 修正:2013-08-08 07:46

 <ニューヨーク タイムズ>とともに米国世論、さらには事実上世界世論を主導してきた<ワシントンポスト>が、インターネット企業アマゾン・ドット・コムの創業者ジェフ ベゾスに売却された。ワシントンポストの理事会議長兼最高経営者であるドナルド・グラハムは5日(現地時間) 「数年間の経営難に処して他の所有者がポストをよりうまく経営できるという考えの末に売却を決めた」と発表した。インターネット時代が追いつめた紙新聞業界の危機を象徴する事件であり、非常に衝撃的だ。

 1877年に創刊されたワシントンポストは、1933年の競売を通じてグレアム一族に渡って以来、4代にわたった80年間、グレアム一族の支配の中で成長してきた。地方紙として出発したこの新聞が世界的な権威紙にそびえ立つことになったのは、1971年に米国政府の圧力を突き破りベトナムに対する米国の政治・軍事的介入に関する秘密研究を盛り込んだ‘国防部報告書’を報道して、翌年リチャード・ニクソン大統領を辞任に追い込んだウォーターゲート事件を特ダネ報道してからだ。その過程で、当時発行人だったキャサリン・グラハムが国益優先主義に対抗し言論の自由を守るために示した決断と勇気は今でも理想的な報道機関社主の模範として残っている。

 しかし世界的権威紙の名声もインターネットによる変化の風には勝てなかった。特にインターネットになじんだ若い読者層が離脱して、1993年に83万2332部で歴代最高を記録した部数は、今年3月に半分レベルである47万部余りに急減した。部数の減少は広告にも影響して、ポストは最近7年連続赤字に3年連続営業損失を記録し、昨年は5300万ドルという史上最大の赤字を出した。インターネット時代と、紙からデジタルに転換される画期的な変化にうまく適応できなかったためだ。最近発表された<ニューズウイーク>とニューヨークタイムズの姉妹紙である<ボストングローブ>の売却もその原因は同じだ。

 ワシントンポストの売却は我が国の新聞産業にも示唆するところが大きい。インターネットなどニューメディアが呼び込んだマスコミ環境の変化は、私たちは米国に負けず劣らずだ。2010年に29%であった家庭の新聞購読率がわずか2年で半分にもならない11.6%に落ちたという最近の調査(情報通信政策研究院‘紙新聞とインターネット新聞の閲読現況とパターン分析’)は我が国の新聞の危険指数がいかに高いかをよく示している。

 だが、ニュースを伝える技術がいくら変わっても、ニュース自体の重要性が変わることはない。特に民主主義国家において健全な言論の存在は必須だ。新聞業界を含む私たちの社会が、新しいメディア環境でも言論が本来の役割を果たせるよう皆が努力しなければならない所以だ。

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/598539.html 韓国語原文入力:2013/08/06 18:50
訳T.W(1269字)

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