言葉を造るのが好きな人たちが、野田佳彦前首相を「自民党野田派」の人と言った。政治信念のスペクトルが広い民主党の中で、彼は最も保守色が濃厚だった。彼は、消費税引き上げなど民主党のアイデンティティに反する色々な政策を押しつけた。2009年8月の総選挙で、45年ぶりの政権交替を成し遂げた民主党は、彼の指揮の下で昨年12月の総選挙を執り行い、壊滅したようなものだ。 以後、日本政治の顔は、保守政治の復活を越えて、民主主義の危機を心配するほどになる。
総選挙の結果は、日本の選挙制度の欠陥を間違いなく示した。自民党は、小選挙区で全有権者の24.7%の支持を得るのに過ぎなかったが、議席は何と79%(237席)を占めた。比例代表を含めても、総議席の61.2%(480席中294席)を占めた。投票率が59.3%で戦後最低という状況で、小選挙区制度では支持率の高い政党が独り占めする現象が強まったためだ。
総選挙前に行われた自民党総裁選挙でも、日本政治の暗い側面が見えた。石破茂候補(前政調会長)は、党員と党友、所属国会議員が全員参加した一次投票で全体498票中199票を得て、1位となった。しかし、過半数を得た候補者がおらず、国会議員のみが参加する決選投票が進行された。一次投票で141票に終わり2位となった安倍晋三候補が、ここで勝った。政治家たちが、民意よりは自分たちの利害関係により、事実上次期首相になる総裁を決めたのだった。
安倍首相の就任後、政権党の自民党が進む道は、民意とかなり隔たっている。2011年3月、福島原子力発電所事故が起きた後、日本人は半数以上が脱原発政策を要求している。原発輸出にも反対している。しかし、自民党政権は、原発輸出をゴリ押しし、停止している原発の再稼働をも強行する態勢だ。憲法96条や憲法9条の改正にも国民の多数が反対しているが、安倍首相は、参議院選挙後に改憲を推進する意向を明確にしている。
安倍首相が主に主張する改憲の内容は、首を傾げざるを得ない。彼は憲法9条を変えて、日本を合法的な軍隊を持ち国際社会で武力を行使する国に作りたがっている。しかし、世論の反対が激しいため、まず、憲法改正要件を緩和する96条改正を推進しようとしている。衆参両議院のそれぞれ3分の2以上が賛成しなければならない憲法改正案発議要件を、2分の1以上に緩和しようというものだ。もしそのように憲法を直せば、日本憲法は法律と同じ改正手続きを備える、珍しい憲法になる。これに対しても反対が多いと見ると、安倍首相は9条と基本権条項などはそのままにして、統治構造などについてのみ改正案の発議要件を緩和しようと提案している。
参議院選挙はあと1ヶ月ぐらい先に行われる。野党第一党の民主党の支持率が一桁台に留まっている状況で、自民党の圧勝は間違いないように見える。様々な政策では自民党に反対しながらも、日本国民は、安倍首相の経済政策が、長期不況に陥った日本経済を、もしかしたら救い出すのではないかと期待しているようだ。参議院選挙にさえ勝てば、自民党政権・安倍政権は、かなり長く続くだろう。
ところでよく調べてみると、日本国民の大多数は、アベノミクスによって裏切られる可能性が高いように思われる。通貨緩和で日本円の価値が下がり、輸出企業に対してその他の経済主体は事実上の補助金を差し出している。消費税は上がるというのに法人税は下がっていき、社会保障は減っている。物価は上がるのに、非正規職が多い状況で、給与がそれ以上に増えることを期待するのは容易でないように思われる。それほど遠からず、私たちは、日本民主主義の本当の危機を見ることになるのかもしれない。 それがもしかしたら、鏡に映る私たちの姿ではないのか、よく見極めなければならない。
チョン・ナムグ東京特派員 jeje@hani.co.kr