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[なぜならば] 安倍政権の朝鮮学校差別/師岡康子

登録:2013-06-17 21:15 修正:2013-07-27 12:43
大阪朝鮮高級学校の生徒たちが体育大会を開いている。<http://www.osakakhs.com/my_first_website/web/#000084>大阪朝鮮高級学校サイトよりキャプチャー

 昨年12月、安倍内閣は、成立するや否や、朝鮮学校の高校無償化制度からの排除方針を発表した。そして、今年2月20日、朝鮮学校の高校無償化制度からの排除を目的とする省令改訂を行うとともに全国全10校の朝鮮高校に不指定処分の通知を出した。中央政府率先しての露骨な朝鮮学校差別を受け、地方自治体による朝鮮学校差別も拡大した。これまで朝鮮学校が存在する27の都道府県すべてが補助金を支給していたのに、現時点までにその3分の1にあたる9都府県が補助金を停止した。また、大阪市、広島市、下関市、福岡市、水戸市なども補助金を停止し、町田市は防犯ベルの支給を止めたりした(抗議により復活したが)。

 政府は、拉致問題の未解決を排除の第一の理由とし、民族差別ではないと主張しているが、朝鮮学校の子どもたちに拉致問題の責任がないことは明白である。また、第二に、「総連による支配」、朝鮮民主主義人民共和国との関係を問題としているが、民族的マイノリティがその言語・文化を守るための学校を建設・維持する場合、民族団体が関わるのは当然のことであるし、北との関係は、日本政府からも韓国政府からも援助がない中、1957年から朝鮮政府が継続して朝鮮学校へ財政支援を行ってきたことが大きい。

 問題の本質は、植民地支配による責任・反省の回避、居直りに根ざす民族排外主義である。朝鮮学校は、植民地支配により奪われた民族の言葉、文化を取り戻すために、戦後ただちに在日朝鮮人が、差別された極貧の生活の中から身を削って自主的に作ったものである。本来、植民地支配に対する償いとして、朝鮮学校の建設・運営に協力・支援すべきだった日本政府は、存在自身が植民地支配の責任を問うている朝鮮学校を逆に目の敵とし、48、49年の閉鎖令、60年代後半から数度国会上程された外国人学校法案等、一貫して差別し弾圧してきた。侵略と植民地支配の罪を否定し、再び戦争できる国へ向け改憲を強行しようとしている安倍内閣は、「朝鮮=総連=朝鮮学校=生徒・学生たち」を仮想敵として作り上げ、排外主義を煽動している。

 このような悪辣な攻撃に対し、朝鮮学校関係者を中心として多くの韓国人、日本人も共同して反対運動に取り組んできた。不指定処分に対しては、すでに今年1月、大阪と愛知の朝鮮高校が提訴し、東京、福岡、広島などいくつかの地域の朝鮮高校も裁判を準備中である。

 この裁判闘争の最中、去る5月21日、国連社会権規約委員会は、朝鮮学校排除を明確に「差別」と認定し、「高校教育授業料無償化プログラムが朝鮮学校に通う子どもたちにも適用されることを確保するよう」求める勧告を発表した(第27パラグラフ)。これは、朝鮮学校へ子どもを送るオモニたち5人によるジュネーブでの委員への直接の働きかけとそれを支えた多くの人たちの取り組みによる成果である。

 2010年3月にも国連人種差別撤廃委員会から、朝鮮学校排除は「子どもの教育に差別的効果をもたらす」と警告していたが、当時はまだ法律制定前の時点であり、法律制定後、かつ、排除確定後にそれを差別と認定したはじめての勧告となった。

 国際人権諸条約の監視機関による勧告は、直接に法的拘束力はないが、条約及び法律を解釈する指針となることから、裁判における法解釈に影響を与えることは確実である。高校無償化制度は、そもそも社会権規約第13条2項(b)が、中等教育(高等学校段階を含む)は、無償教育の漸進的な導入によりすべての者に対して機会が与えられるべきことを締約国に求めていることを具体化したものである。法の根拠となった条約の解釈について最も権威ある委員会の解釈は、裁判所も尊重せざるをえない。

 通常第一審だけで約2年かかる裁判所の判断を待つ等して、当事者をこれ以上苦しめるべきではなく、日本政府は勧告に従い、直ちに不処分決定を撤回し、朝鮮学校に無償化制度を適用すべきである。

師岡康子 大阪経済法科大学客員研究員

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/because/591204.html 韓国語原文入力:2013/06/10 19:45
(1740字)

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