私には今長文を書き残す力がありません。昨日突然激しい腰痛に襲われ、救急車で病院に運ばれ応急処置を受け数時間前に退院したのですが、まだ痛み止めを飲み続けている関係上、集中することがとても困難なのです。それでも、病院で感じた印象深いある部分については吐露しないと、安心して病床に伏すこともできそうにありません。どの階に行っても掃除する人々はすべて黒人か南アジア人などといった非西欧出身の移民者たちでした。まあ、病院もそうですが、私はオスロ大に12年間勤めてきましたが、その間「地元」のノルウェー人が掃除の仕事をするのを見たことがありません。逆に、オスロ大の教授の中には少数の中国人とインド人などのアジアの「科学技術大国」で教育を受けた人々や私のような東欧出身の人々もいるものの、外国人教員の絶対多数は西欧人たちです。職員の場合は非西欧出身の移民者たちが3~4%くらいはいますが、やはりノルウェー人と西欧、北欧、南欧出身者たちが絶対多数です。病院の場合であれば、私が見た看護士たちの中にはたまにノルウェーに移住しているフィリピン、ベトナムなどの出身者たちが少しはいたものの、やはり多数はノルウェー人でした。それから医師たちの中からは白人でない顔を見つけることはほとんど不可能でした。外国出身者たちはいることはいるのですが、ドイツなどといった西欧出身者たちが主でした。「種族間の序列秩序」とでも言いましょうか。それは学校や病院のみならず、ノルウェーのどの機関に行ってもすぐに目につきます。娘のサラが通っている規模の大きな私立幼稚園でも、やはり掃除=非ヨーロッパ人移民者、保母=南欧・東欧・少数の中東移民者、管理人及び所有者=ノルウェー人、といったふうです。
もちろん韓国内でも「3K職種なら外国人労働者」という等式がないわけではありません。しかし、韓国内での外国系人口の割合(2.5%)はまだノルウェー(約10%)よりかなり低い上、その「外国系の人口」のかなりは「目立たない」朝鮮族なので、「人種の秩序」は簡単には把握することができません。しかし、オスロのように、非西欧系外国人の人口が約17%にも達する「グローバル」な都市であれば、「人種的なピラミッド」の構造は直ちに確認できます。果して非西欧出身の移民者たちは掃除以外にできることがなく、誰しもが清掃員に就職するのでしょうか?まったくそうではありません。職場の学校で掃除する人々と人生談を話してみると、ソマリアやイラクから来た医師やエンジニアをよく見かけます。ただし、彼らはいくら学位を持っていようと、多くの場合は極めて難しい医療資格試験などをパスしてノルウェーで医師などとして働くための兔許を得ることができないか、有効な資格証があるとしても、決して専門にあわせて就職できなかったケースです。よくは見えないものの、あまりにも強固なこの社会の人種主義は、彼らを低賃金高難度の単純肉体労働へと追い込んでいるということです。つまり、「人種的なピラミッド」は絶対に自然発生的な現象ではなく、非西欧的ニューカマーたちに対する「主流」社会の排除と序列化、すなわち社会的な暴力の結果なのです。ある意味では強制された肉体労働ともいえましょう。
あるいはこんなことも考えてみましょう。スターリン時代のソ連で、たとえば偉大な日本文学研究者ニコライ・コンラド博士は、何の罪もなく「日本のスパイ」の疑いをかけられ、何年も工事現場や伐木現場で過重な強制労働を強いられたことを、私たちは憤慨すべき「スターリン主義の暴力」と言います。これは当然スターリン主義の暴力に間違いありません。そうだとすれば、ソマリアやイラク出身者を本人の趣向や夢、そして資格や専門と無縁な単純肉体労働に無条件に追い込み、一生ノルウェー人たちの嫌う仕事を強いるのは一体何でしょうか?コンラド博士は、それでも3年間苦しんでから再び学者という本業に復帰できましたが、ノルウェーにきている多くのソマリアやイラクの知識人たちは一生彼らの本業と無縁に生きていかなければなりません。「技術強国」と認められない第3世界の弱小国出身という唯一の罪(?)のせいでです。こんな暴力はスターリン主義の暴力より何倍もひどいものではないでしょうか。しかし、スターリン主義の弊害については世間に知れ渡っているものの、「ノルウェー」は果してこの世界で何を象徴していますか?そうです。福祉と平和、そしてオバマとヨーロッパ連合のような偉大な平和主義者(?)たちが幸運にも手に入れたノーベル平和賞です。まあ、鉄条網がなければ収容所ではないということでしょうか?ある面では、弱い非西欧的な他者には、この華やかで世界で最も物価の高いオスロという都市は、鉄条網がなくても一つの大きな強制労働収容所になりうるということです。彼らの涙を平和賞までも与えている「殿さま」たちはどうして見ようとしないのでしょうか。また、ギリシアの労働者たちの最後の希望を奪ったヨーロッパ連合に平和賞を与えたノーベル委員会委員長のトールビョルン・ヤーグランが所属する政党である労働党を、どうして国内の一部の自称「社民主義者」たちは今も「進歩」と見做しているのでしょうか。ああ、息が詰まりそうです。強者主導の人種主義的「種族間の序列秩序」を当然視するこの世の中はとても息苦しいものです。
朴露子(パク・ノジャ、Vladimir Tikhonov) ノルウェー、オスロ国立大教授・韓国学