イラン戦争をめぐり、米国政府の報道官役を担っているピート・ヘグセス国防長官(戦争省長官)の発言が乱暴で過激だとして、非難が集まっている。
ピート・ヘグセス国防長官は8日(現地時間)、CBSの番組「60 Minutes」に出演し、「誰もわれわれを危険にさらしはしない。われわれこそが他者を危険にさらしている。われわれは心配していない」としたうえで、「いま心配すべきなのは、自分たちは生き残れると信じているイランの人たちだけだ」と述べた。ロシアがイランに情報を提供しているとの報道があり、米軍が危険な状態にあるのかどうかを問う質問に対する答えだった。
この発言は、ソーシャルメディアなどで激しい非難を浴びた。MS NOW(旧MSNBC)のニュースキャスターのクリス・ヘイズ氏は、ソーシャルメディアに「純粋にプロパガンダ的な観点からみれば、われわれは9100万人以上のイランの民間人を殺そうとはしていないというメッセージを送るほうが有用だと思われる」と投稿した。
ヘグセス長官は4日の会見の際にも、「戦闘機が(イランの)上空で一日中、死と破壊をもたらすだろう」「初めから公正な戦いをするつもりもなかったし、今も公正な戦いではない。われわれは彼らが倒れたところに追い打ちをかけており、当然、そうしなければならない」と発言した。戦略的洞察と慎重さが求められる国防長官には不適切だとする指摘がなされた。英紙ガーディアンは「ピート・ヘグセスがイラン戦争の惨状を楽しむ姿に驚いた」と題した記事で、ヘグセス長官の姿は「政治家というよりも、漫画に出てくる悪党のようだ」と指摘した。
ホワイトハウスの元スタッフたちもヘグセス長官の発言を懸念している。オバマ政権時代にグローバル・エンゲージメント・ディレクターを務めたブレット・ブルーエン氏は、ヘグセス長官が「虚勢を張り、傲慢な」姿をみせているとして、「米国と同盟国が必要とする確信と戦略を提供すべき国防長官にはふさわしくない人物」だと批判した。
米軍将兵の死亡を報じるメディア報道に対するヘグセス長官の発言も物議を醸した。ヘグセス長官は「ドローン数機が防空網を突破したり、悲劇的なことが起きたりすると、1面のニュースになる。メディアが望むのは、トランプ大統領のイメージが傷つくことだけだ」と述べた。米軍将兵の死亡を主要ニュースとして報じるのは、メディアの党派性によるものだとする趣旨の発言だ。
イラク戦争・アフガニスタン戦争の退役軍人出身のヘグセス長官は、FOXニュースの司会者として活躍し、トランプ大統領の当選後、国防長官に任命された。示談金による性的暴行隠蔽疑惑、過度の飲酒問題、三度の結婚での不倫、前妻への暴力行使疑惑など、多くのスキャンダルが取りざたされ、かろうじて上院の承認を得た人物だ。ウォール・ストリート・ジャーナルは、ヘグセス長官が3回も記者会見を開きインタビューに積極的に応じるなど、トランプ政権の前面に立ち「フロントマン」としてイラン戦争の広報戦を率いているとしたうえで、「ドナルド・トランプ大統領は、イランとの戦争において、戦争に懐疑的なMAGA層と大衆を説得するために、テレビに最適化されたヘグセス長官に依存している」と報じた。