米国の未成年性搾取犯であるジェフリー・エプスタインは、単なる億万長者の投資家ではなく、外国に取り込まれたスパイだったのか。陰謀論扱いされていたこのような主張が、昨年末の米国政府による関連捜査資料の公開以降、さらに勢いを増している。特に、ドナルド・トランプ大統領を支持した「米国を再び偉大に」(MAGA)陣営が提起した「エプスタインはイスラエルの情報資産」という主張がさらに広まっている。
1月30日に米国司法省が公開した300万件以上の文書や写真、動画などのエプスタイン捜査資料には、エプスタインを追跡した連邦捜査局(FBI)の潜入捜査官が、彼を「モサドに取り込まれた工作員」だと報告した資料も含まれていた。2020年にFBIロサンゼルス支局が残した報告書では、自分たちの情報部員の一人が「エプスタインは取り込まれたモサドの工作員だと確信するに至った」と報告していた。この文書では、エプスタインはイスラエル情報機関のために「スパイとして訓練された」と描写されている。もちろん、この報告は、情報部員のこのような主張は独立して検証されてはいないと記している。
報告書によると、この情報部員は、エプスタインの弁護士であるアラン・ダーショウィッツが、2007年にエプスタインが連邦検察による捜査を受けた際、アレクサンダー・アコスタ連邦検察官(当時)に、「エプスタインは米国と同盟国のいずれの情報機関にも所属している」と述べたと主張した。エプスタインとダーショウィッツの電話を盗聴してメモしたというこの情報部員は、2人の通話後、モサドがダーショウィッツに接近し、エプスタインとの通話内容の報告を受けたと記した。アコスタとダーショウィッツは、そのようなやり取りをしたことはないと否定している。エプスタインは当時、検察側と量刑交渉(司法取引)を行い、州法違反の2件を認める代わりに、連邦法上の重大容疑は不起訴処分となり、わずか13カ月の服役後に釈放された。アコスタは、第1次トランプ政権時代に労働長官として抜擢されたが、後にエプスタイン・スキャンダルが再燃すると、手抜き捜査を行った疑惑をかけられ、2019年に辞任した。
報告書によると、エプスタインは弁護士のアラン・ダーショウィッツを通じて、米国と同盟国の情報機関と関係を結んだ。ハーバード大学ロースクールの教授でもあるダーショウィッツはユダヤ人で、米国における著名な親イスラエル派の大物だ。ダーショウィッツはイスラエルのパレスチナ占領と権利を主張する代表的な理論家でもある。ダーショウィッツはトランプ大統領の婿であるジャレッド・クシュナーなど富裕層の子弟を弟子にするなどして、上流階級の人脈を構築している。
報告書は「ダーショウィッツは情報部員に、もし自分が若返るのであれば、自分はイスラエル情報機関(モサド)の要員としてスタンガンを持つことになると述べた」として、情報部員は「ダーショウィッツはモサドに取り込まれており、彼らの任務に同調していると信じている」と記した。
また、この情報部員は、エプスタインがイスラエルのエフード・バラク元首相とも近く、エプスタインは「バラクの下でスパイとして訓練された」と報告した。エプスタインとバラクの関係は、彼がイスラエルの工作員だとするMAGA陣営から出ている主張の代表的な根拠でもある。
アルジャジーラなどの報道によると、公開されたエプスタインの電子メールも、彼がバラクの側近であり、イスラエルのベテラン情報要員であるヨニ・コーレンとの幅広い関係を示している。コーレンはモサド出身のベテラン情報要員で、バラク元首相の在職時代、イスラエル軍の情報機関トップを務めた。コーレンはエプスタインのニューヨークにある邸宅に定期的に滞在し、2012年のがん治療の際には、エプスタインが治療代を支払ったことで知られている。
エプスタインとイスラエルの関連性は以前から提起されていた。ユダヤ人である彼は、交際相手であり共犯でもあるギレーヌ・マクスウェルの父親のロバート・マクスウェルを通じて、イスラエル情報機関と関係を結んでいたといううわさが取り沙汰されていた。ユダヤ人であり英国の出版財閥のトップだったマクスウェルは、イスラエル経済に多額の投資をしたが、1991年にヨットで転落死した。死亡直前に彼は会社の年金から巨額を横領しており、彼の死には疑問が呈された。
エプスタインも2018年に送信した電子メールに、マクスウェルはイスラエル情報機関を脅迫していたと主張した。彼は「もし、彼ら(モサド)がマクスウェルの没落する帝国(事業体)が求める4億ポンド(約830億円)を提供しなければ、彼(マクスウェル)は(自身が)彼らのために行ったすべてを暴露すると脅迫した」と書いた。エプスタインはまた、マクスウェルが米国、英国、ソ連に関する情報を収集する非公式工作員として働いていたと主張した。
イスラエル軍情報局出身で著名な情報要員のアリ・ベン=メナシェは、マクスウェルが1980年代にイスラエルとイランの間の兵器取引や情報作戦に関与し、その際にエプスタインも関与し、イランとの兵器密売などに関与したと主張している。ベン=メナシェは「米国政府はイスラエルの罠にかかった」として、「エプスタインは米国政府を罠にかけた道具の一つであり、彼らはエプスタインを用いて米国の大統領を捕獲した」と主張したと、デイリー・テレグラフが昨年9月16日に報じた。彼はまた「これは単にセックスに関するものではなく、金銭問題でもあり、その金銭はどこから来たのか」として、疑問を投げかけた。高校教師出身のユダヤ人であるエプスタインが突然、ニューヨークのウォール街で億万長者の投資家として台頭した背景を指摘したのだ。
昨年末のエプスタイン捜査資料の公開以降、「エプスタインはイスラエルの情報資産」だとする主張が広がると、イスラエルのベンヤミン・ネタニアフ首相は6日、Xを通じて公式に反論した。ネタニアフ首相は「ジェフリー・エプスタインとエフード・バラクによる異例の密接な関係は、エプスタインがイスラエルのために働いたことを示唆しない」として、「これはその逆であることを証明している。バラクは20年前に選挙の敗北に執着し、反シオニズム主義の急進左派主義者たちと手を組み、選出されたイスラエル政府を打倒しようとする失敗した試みを行った」と主張した。
米国司法省は「エプスタインが外国の情報機関の資産だとする決定的な証拠は発見されなかった」と議会に報告した。イスラエルのナフタリ・ベネット前首相は「エプスタインがモサドの工作員だとする主張は完全な偽りであり、悪意のある嘘」だと、複数のメディアとの会見で述べた。