本文に移動
全体  > 文化

ネットフリックスの「n番部屋」追跡ドキュメンタリー監督「あなたたちは必ず捕まる」

登録:2022-05-21 00:52 修正:2022-05-31 10:35
ネットフリックス公開「n番部屋」ドキュメンタリー監督インタビュー 
『サイバー地獄:n番部屋 ネット犯罪を暴く』18日公開 
事件を追跡したハンギョレ記者ら24人のインタビュー
韓国社会に衝撃を与えた「n番部屋」事件の実体を追跡するネットフリックスドキュメンタリー映画『サイバー地獄:n番部屋 ネット犯罪を暴く』のポスター=ネットフリックス提供//ハンギョレ新聞社

 韓国社会に衝撃を与えた「n番部屋」事件の実体を追跡するドキュメンタリー映画『サイバー地獄:n番部屋 ネット犯罪を暴く』が18日、グローバルオンライン動画サービス(OTT)ネットフリックスで公開された。映画は公開後、韓国のネットフリックス映画部門で2位にランクインするなど、話題を集めている。

 『サイバー地獄:n番部屋 ネット犯罪を暴く』は、n番部屋事件の真相究明にかかわった記者やプロデューサー、警察など24人のインタビューを通じて犯罪の実体を明らかにしていくサイバー犯罪追跡ドキュメンタリーだ。初めてこの事件を追った「追跡団火花」から本格的に取材して報道した本紙のキム・ワン記者とオ・ヨンソ記者、サイバー捜査隊警察まで、彼らの生の声をカメラに収めた。

 映画を演出したチェ・ジンソン監督は、ネットフリックスが公開したインタビューで「この作品を通じて言いたいことは、いくら隠れても『犯罪者は必ず捕まる』ということ」だとしたうえで、こう述べた。「同じ言葉を犯罪者たちにも聞かせたい。『あなたたちは必ず捕まる』と」。以下はネットフリックスが公開した一問一答の全文。

-『サイバー地獄:n番部屋 ネット犯罪を暴く』はどのような作品なのか。

「これまでネットフリックスで紹介された実話を取り上げた犯罪キュメンタリーは、連続殺人やサイコパス、性犯罪など長い歴史を持つ犯罪に関するものだった。しかし、『サイバー地獄:n番部屋 ネット犯罪を暴く』は人類史上初めて試みられた新しいタイプの『サイバー性犯罪』を記録して追うものだ」

-『サイバー地獄:n番部屋 ネット犯罪を暴く』を企画するきっかけと過程、その始まりについて知りたい。

「2020年初め、以前には全く想像できなかった新しい犯罪の話が少しずつ聞こえてきた。性搾取映像やテレグラム、ハッキング、暗号資産、非対面集団犯罪など、普通の人々には理解困難な犯罪が私たちの日常の裏側で残酷に行われていたことを一歩遅れて知った。それでこの事件を初めて追った市民たちの『追跡団火花』に会い、事件を初めてメディアで公論化した記者たちにも会った。彼らに会って、n番部屋の犯罪がこれまで知られていたよりもさらに組織的で、さらに恐ろしく、さらに残酷であることを知り、ドキュメンタリーで取り上げたいと思うようになった」

-n番部屋事件関連ニュースや記録、コラムなど膨大な資料の中でどんな基準に基づいて調査を進め、まとめたのか。

「最初はn番部屋と博士部屋の実体を把握するのが難しかった。その中に入ったことがなく、すでに事件がかなり進んだ状況だったので、いったいその中で何が起きたのか『実体的真実』をまず把握しなければならなかった。これまでの報道で一部明らかになった内容も、真実を把握するには不十分だった。『追跡団火花』とジャーナリストたちから、彼らが事件を追跡しながら集めてきたn番部屋と博士部屋の資料を提供してもらえた。被害者が明らかになる部分は塗りつぶした状態の資料であり、この資料を通じてオンライン犯罪の現場を探索することができた。苦痛だったが、必ず必要な過程だった」

-インタビュー対象はどのような基準で選び、どうやって出演交渉をしたのか。

「誰を作品の主人公にするかが重要だった。この事件を真っ先に追跡しはじめたのが、記者を夢見ていた平凡な大学生だったというのが興味深かった。『追跡団火花』いう名前で彼らはn番部屋に潜入し、取材し、その存在を世に知らせた。事件の真相も気になっていたが、事件追跡の発端となったのが平凡な市民だったということに意味があり、彼らを主人公にしたいと思った。また、この作品は映画『スポットライト 世紀のスクープ』のようにジャーナリストが真実を追跡する作品でもある。この作品を通じて私が会ったジャーナリストたちは、警察以上に犯罪者を捕まえたいと思っていた。彼らはn番部屋に自ら潜入し、被害者に会い、犯罪者とのインタビューを試みた。彼らは『必ず捕まえる』という一心で取材に取り組み、ついにそれを成し遂げた。韓国のサイバー捜査隊は、世界最高の捜査官だと言いたい。彼らはオンラインとオフラインを行き来しながら犯罪者を追跡することに死力を尽くす」

-モバイルチャット画面を通じて事件の展開を見せる演出方式を選んだ理由があるか。

 「n番部屋事件がテッド・バンディのような連続殺人事件やジェフリー・エプスタインのような性犯罪事件といった古典的な犯罪様式ではなく、ネットワーク上で最新テクノロジーを通じて起きた新しい形の犯罪というのが非常に重要だった。さらに、視聴者にもこれの持つ意味に注目してほしいと思った。まるで映画『search/サーチ』のようにソーシャルメディアとオンラインUIを通じて事件が表現されれば、この犯罪の特異性が視聴者によく伝わると思った。被害者に直接インタビューすることは最初から排除した。彼女らに対するもう一つの加害になりかねないと考えたからだ。取材とインタビューを通じて把握した被害事実を視聴者に映画的にちゃんと伝える方法として、このような画面構成にすべきだと考えた」

-一本の追跡スリラー映画を見ているような印象を与える作品だ。このような演出を試みた理由があるか。最も力を入れた部分があるとしたら。

「ドキュメンタリーも劇映画と変わらないと思っている。特にジャンルを区分をしないのが演出スタイルだ。だからこそいつも念頭に置いているのが『面白くなければ意味もない』ということだ。作品の重要な意味が観客にちゃんと伝わるためには、ジャンル的でなければならず、面白くなければならない。ビジュアル的にも魅力的でなければならない。初めて企画した時から犯罪追跡劇にしようと考えていた。そうしてこそ、この作品の中の犯罪の特異性や追跡者の苦悩がよく伝わり、被害者に対しても深く共感できると考えた。インタビューをする時も犯罪映画に似合うセットと照明を用意し、編集と音楽は犯罪映画のプロットとリズムで作ろうとした。また、被害者が経験した犯罪の残酷さを最大限直接的かつ倫理的に表現するため、モノトーンのアニメーションを使った。」

-作品を撮影しながら難しかった点があるとしたら。

「難しかった点としては、どうしても実際の被害者が多い作品なので、その方々に被害が及んではいけないという考えが最も大きかった。インタビュー対象者たちもこのような悩みを共有し、インタビューに応じてくれた。事件の実体をよく表わしながらも、被害者に被害が及ばない演出でなければならなかった。性犯罪事件だが、できるだけ扇情的ではなく倫理的に表現しようとした」

-作品を見る時、どんな部分に重点を置いて見るのがいいか。

「韓国の観客ならn番部屋事件について誰もが少しは知っているだろう。しかし、この作品を見れば、私たちが知っていた事件の実体というのが氷山の一角にすぎなかったと思うようになるだろう。事件の惨状は、私たちが知っているよりもさらに残酷で、犯罪の手口は私たちが知っているよりもさらに複雑かつ巧妙で緻密だった。また、この事件の追跡者たちは私たちが知っているよりもはるかに熾烈で熱い人たちだった。被害者の方々に、追跡者の方々に、そして視聴者の方々にこの作品を通じて言いたいことは、いくら隠れても『犯罪者は必ず捕まる』ということだ。そして、同じ言葉を犯罪者たちにも聞かせたい。『あなたたちは必ず捕まる』と」

ソ・ジョンミン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/culture/culture_general/1043698.html韓国語原文入力:2022-05-2017:28
訳H.J

関連記事