中国政府が、日本に対する同時多発的な経済報復措置に続き、国際社会での世論戦を通した「日本孤立戦略」に乗り出している。日本の高市早苗首相の「台湾有事で自衛隊介入の可能性」発言をきっかけに高まった中国と日本の緊張関係を、早期に解消する糸口がつかめない状況だ。
産経新聞は22日、「中国の李強首相は21日、訪問先の南アフリカ・ヨハネスブルクで同国のラマポーザ大統領と会談した」とし、「中国外務省の発表によると、ラマポーザ氏は会談で『台湾は中国の領土の不可分の一部だ』と述べるとともに、『一つの中国』政策を揺るぎなく堅持すると表明した」と報じた。
同紙によると、李強首相とラマポーザ大統領は、南アフリカ共和国のヨハネスブルクで開かれた主要20カ国首脳会議(G20サミット)で会談し、「両氏は『核心的利益の相互支持』で一致した」。中国が南アフリカ共和国との首脳会談で「核心的利益」に言及したのは、高市首相の発言で中日間の緊張がピークに達している状況で、南アフリカ共和国政府の側面支援を要求したものとみられる。中国は台湾問題を「核心利益のなかでも核心であり、レッドラインでありマジノ線」である点を何度も強調した。
また、この問題をめぐり、「グローバルサウス」(南半球の開発途上国)の代表の一つであり、今回の首脳会議の議長国である南アフリカ共和国の「中国支持」を確認し、国際社会における日本政府の立場を弱めようとする意図だとする見方も出ている。
実際に高市首相は、今回の首脳会議の課題の一つとして「グローバルサウス諸国との協力強化」を挙げたが、中国が巨額の投資を通じてすでに関係を構築している南アフリカ共和国、ブラジル、インドなどのグローバルサウス諸国の支持を利用し、日本により強い圧力をかけられるということだ。時事通信は「米国の欠席に伴い中国の存在感が相対的に増す」として、「中国は豊富な資金力を背景にこうした国と距離を詰めており、初参加の首相にとっては新興国首脳との信頼関係構築が課題となる」と指摘した。
中国政府は21日、国連のアントニオ・グテーレス国連事務総長に、高市首相の「台湾有事発言」が不適切だったとする書簡を送るなど、世論戦を国際社会で拡大している。中国の傅聡国連大使は書簡で「日本が台湾海峡情勢に武力介入する場合、これは侵略行為に該当する」として、「第二次世界大戦の敗戦国として、日本が歴史的責任を深く反省し、誤った発言を撤回しなければならない」と主張した。
さらに、「日本が台湾問題に軍事的に介入しようとする野心を初めて示したものであり、中国の核心利益に公の場で挑戦し、中国に武力で脅した初の事例」だとして、「このような発言は大変な誤りであり、かつ危険であり、その性格と影響はきわめて悪質」だと述べた。この書簡は国連の公式文書として全加盟国に送られる予定だ。毎日新聞はこの日、「習近平指導部は日本の孤立化を狙う国際世論の形成にも動いている」と指摘した。
今回のG20サミットをきっかけに、李強首相と高市首相が接触して緊張を緩和できるかどうかが注目されたが、両首脳間の会談は実現しなかった。これに加え、両首相は互いに接触を意図的に避ける態度を示し、神経戦も続いた。
会議初日の主要国首脳の写真撮影の際、李強首相は他の首脳3人の近くに高市首相がいたにもかかわらず、視線を向けず冷たい態度を示した。高市首相も同様に、写真撮影後に自由に言葉を交わす場で、李在明(イ・ジェミョン)大統領を含む他の首脳たちに近付いて握手と挨拶を交わしながらも、李強首相とは距離を置いた。
時事通信は、中国政府が高市首相の「存立危機事態」発言の後、「日本への渡航を控えるよう自国民に呼び掛け、日本産水産物の輸入を事実上停止した。『対日カード』を次々と切っている状況だ」としたうえで、「首脳レベルで意思疎通を図り、決定的な対立や偶発的な衝突」を避けようとしているが、「中国側は態度を軟化させる兆しを見せていない」と指摘した。