「どちらからいらっしゃいましたか? 住民でなければ近づかないでください」
29日、埼玉県八潮市の県道交差点付近に近づくと、ヘルメットをかぶった工事関係者が手を振りながら急いで出てきた。彼は両手を横に振りながら「外部の人は絶対に入ることができない。写真撮影もだめだ」と警告するように言った。約200メートル前には道路補修工事用の大型クレーン2台が立っており、道路を囲んで設置されたバリケードが進入を遮断していた。付近をくまなく回ったが、状況は同じだった。スマートフォンの地図アプリにも近隣道路はほとんどが赤く表示され、通行止めを知らせるバリケードのマークも20個以上表示されていた。別の道路で会った工事関係者は「現在は住民のうち希望する人に限り内側に入ることができる」とし、「申し訳ない」と言った。
八潮市の交差点にシンクホール(道路陥没)が発生したのは1月28日午前9時50分頃。突然直径5メートルの大きさの穴ができ、道路のアスファルトが地面から10メートル下へと崩れ落ちた。道路を走行していたトラック1台とともに、運転手1人もこの中に吸い込まれた。救助隊が出動して車の後部を持ち上げたが、車の前部が外れ、運転席とともに運転手は下水道管の中に落ちていった。現在分離された運転席の部分は、当初事故現場から下水道管路に沿って30メートル以上流されたものと推定されている。その後、地盤沈下が広がり、穴は直径40メートル規模に拡大し、事故現場は大規模な建設現場を彷彿とさせている。事故から3カ月が過ぎた現在、救助隊は行方不明の運転者を捜索するため、下水を迂回させる「バイパス管」を設置した。また、運転席があると予想される位置の上部道路で、二方向に掘削作業を試みていることが分かった。特に、日本でも直径40メートル規模の超大型道路陥没は異例のことで、事故原因に注目している。
最近、日本では韓国以上に多くの道路陥没事故が発生している。特に道路陥没の原因には地形にともなう地盤沈下や漏水、周辺工事などが挙げられるが、最大の原因は老朽化した下水道管とみられている。韓国の場合、国土交通部と消防庁の資料によると、2019年以降5年間の地滑りや地盤沈下事故957件のうち、約半数(50.7%)が上下水道管の損傷によるものだという。一方、日本では2022年基準で老朽化した下水道管による道路陥没が2625件発生した。埼玉県の道路陥没事故現場の下水道管も1983年に設置されたものと把握されている。
専門家たちは古い下水道管の連結部位が腐食して隙間が広がり、その間に周辺の土が吸い出されたのが道路陥没の主要原因とみている。国土交通省所属の埼玉事故対策検討委員会の家田仁委員長は3月の対策検討委員会で、下水道管を連結する『セグメント』という接続部に隙間が生じ、地盤の土砂が吸い出されたという見解を述べた。地盤を維持していた多くの土砂が管内に吸いこまれ、空洞になった地面の下に道路が崩れ落ちるということだ。管内の生ゴミなどからの炭化水素や、地球温暖化による夏場の管路内の温度の上昇が下水道管の連結部分を腐らせる原因だという分析もある。
老朽化した下水道管は時間が経つほど増え、その分陥没事故もさらに頻繁に起きる。国土交通省の統計によると、2022年現在、日本全国の下水管路49万キロメートルのうち約3万キロメートル(7%)が耐用年数の50年を超えているという。2032年に9万キロメートル、2042年には全体の40%を越える20万キロメートルに達すると推定される。一方、下水道管の整備・交替事業は老朽化の速度に追いついていない。 日本では毎年3千〜5千キロメートルの下水道管が耐用年数を超えているが、補修や交換作業は1千キロメートル程度に止まっている。「予見された道路陥没」という火種を抱えているわけだ。
国土交通省は八潮市の道路陥没事故直後、全国の地方公共団体に事故の陥没箇所と同様の大規模な下水道管路の緊急点検を要請した。また、政府傘下の「下水道等に起因する大規模な道路陥没事故を踏まえた対策検討委員会」は3月17日、「1994年度以前に設置された内径2メートル以上の管路を全国特別重点調査の対象とし、まず調査箇所は夏頃までに、それ以外の箇所は1年以内を目途に調査完了を目標とすべき」と提言した。しかし、道路下の地下に埋められた下水道管の特性上、施設の点検が難しいうえ、下水道管の交換にかかる莫大な費用も悩みの種だ。
最近、下水道管点検の正確さと頻度を高めるためにドローンや地表透過レーダー、人工衛星まで動員されているが、方法によって適用可能な地形的限界があり、費用も障害となっている。また、下水道管の交換費用のため住民の水道料金が値上がりする可能性や、上水道とは違って下水道管の整備の時は住民たちの不便ははるかに大きい。今回の交差点事故の時は、近隣住民120万人余りが2週間以上不便を強いられた。ただ、日本では1980年代後半から都心の道路陥没研究に本格的に着手されており、2016年には東京都に道路陥没などと関連して下水道管再構築5カ年計画が樹立・施行された。