イスラエル国防軍(IDF)が国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のパレスチナ・ガザ地区の食糧配給センターを攻撃し、20人以上の死傷者が出た。国連は「イスラエル軍が国際人道法を露骨に無視するのが日常となっている」と批判した。
英BBC放送などの報道によると、UNRWAは13日(現地時間)、「イスラエル軍がガザ地区南端のラファの食糧配給センターを攻撃し、職員1人が死亡、22人が負傷した」と発表した。ガザ地区保健省は今回の攻撃で同機関の職員1人だけでなく、住民など計5人が死亡したと発表した。
UNRWAは、イスラエル軍がラファ東部にある配給センターを空爆したと明らかにした。配給センターで働くサミ・アブ・サリムさんはAFP通信に「国連が運営するセンターなので安全だと思っていた。(イスラム教の断食月の)ラマダンの間、食糧を必要としている住民たちに物資を配るために来たが、突然ミサイル2発に襲われた」と語った。
当時、配給センターには職員60人余りが勤務していたという。現場を撮った写真を見ると、イスラエル軍の空爆であちこちに穴があき、犠牲者の血がたまっていた。配給センターは飢餓に苦しむガザ地区住民のための食料を配り、生活必需品などを保管する倉庫としても使われていた。UNRWAのジュリエット・トウマ報道官は声明で、「現場にいたチームが死傷者と被害状況について報告してきた。イスラエル軍の仕業であることはわかっている」と述べた。フィリップ・ラザリーニ事務局長も「住民たちが食糧不足と飢餓に苦しんでいる状況で、イスラエル軍がガザ地区に残り少ないUNRWAの配給センターを攻撃した」と批判した。さらに「私たちは毎日ガザ全域のすべての(国連)施設の(緯度と経度の)座標をイスラエルとハマスの双方の紛争当事者と共有しており、イスラエル軍も昨日この施設の座標を受け取った」と指摘した。UNRWAは、ガザ戦争勃発後、パレスチナにいる同機関の職員1万3千人のうち160人以上が死亡し、150カ所以上の施設がイスラエル軍の攻撃を受けたと明らかにした。
イスラエル軍はUNRWAの施設であることを知りながら空爆を行ったことを否定しなかった。イスラエル軍は、同機関の職員の一人であるモハメド・アブ・ハスナ氏が武装組織ハマスの隊員であり、彼を殺害するための「軍事作戦」だったと主張した。イスラエル軍は声明で、「ハマス作戦部隊のテロリスト、ハスナを精密爆撃で殺害した」とし、「彼は人道主義の救援物資をコントロールし、テロリストに分配することに関与していた」と主張した。
1月、イスラエルが同機関の職員の一部が昨年10月7日のハマスによるイスラエル奇襲攻撃に関与したという疑念を示す報告書を発表したことを受け、米国やドイツ、英国、オーストラリアなど少なくとも9カ国は同機関に対する支援を中止した。イスラエルは同機関の活動中止まで要求し、国連はこれを批判した。国連のファルハン・ハク副報道官は当時「少数の職員をめぐる疑惑への対応として、基金に対する支援を中断することは衝撃的」だと批判した。
ガザ地区では現在、UNRWAの他に、飢饉に苦しむ住民を助けることができる団体がない。米国国際開発庁(USAID)のサマンサ・パワー長官はCBSニュースのインタビューで、「ガザ地区の人口の90%が難民だが、(UNRWAを除くと)ガザ地区に生活必需品を配給する効果的な代案が事実上ない」と指摘した。米国務省のマシュー・ミラー報道官も12日、記者団に対し「UNRWAは人道支援分野で他のいかなる機関にも代えられない重要な役割を果たしている」と認めた。ミラー報道官は「米国政府はこれに代わる団体と組織を探している」と付け加えた。