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ロシアの侵攻でドイツは「時代転換」を宣言…米中に続き国防費3位の国に

登録:2023-02-24 10:53 修正:2023-02-24 12:23
[ウクライナ戦争1年、変わる欧州] 

国防費、GDPの2%以上支出…連邦軍が復活 
ショルツ首相「ドイツ、欧州の安全保障の責任認める」
17日(現地時間)、ドイツのオラフ・ショルツ首相(社会民主党)がミュンヘンで開かれた第59回ミュンヘン安保会議の開幕式で演説している/EPA・聯合ニュース

 「2022年2月24日は、欧州大陸の歴史における『時代転換』(Zeitenwende)となる日です。世界はもはや以前通りには在り得ないでしょう」

 ロシアがウクライナに侵攻した3日後の昨年2月27日、ドイツのオラフ・ショルツ首相は、ドイツの現代史に長く記録されるであろう異例の演説に臨んだ。ショルツ首相はベルリン連邦議会の演壇に上がり、ロシアの侵攻が「ほぼ半世紀にわたって続いてきた欧州の安保秩序を崩している」とし、第2次世界大戦以後維持されてきたドイツの防衛政策を大転換すると宣言した。具体的には、ドイツが1千億ユーロ(約14兆3000億円)規模の特別防衛基金を作り、北大西洋条約機構(NATO)の政策目標に合わせて国内総生産(GDP)の2%以上を国防に投資すると明らかにした。70年間にわたり眠っていたドイツ連邦軍を「復活」させるという宣言だった。

 ウクライナ戦争開戦から1年を控え、今月17日(現地時間)に開幕したミュンヘン安全保障会議は、欧州の安全保障の地形がこの間にどれほど大きく変わったかを実感できる場だった。ショルツ首相は同会議で「ドイツは欧州とNATOの安全保障に対する責任を前提条件なしに認める」とし、「今後さらに多くの任務を遂行するために、ドイツ連邦軍をこれ以上放置しない」と述べた。また、世界を二度の大戦の泥沼に陥れた「強いドイツ」の再臨を心配する人々には、「我々の兵器供給が戦争を延長させるのではない」とし、「プーチン大統領が帝国主義的目標を達成できないという事実を早く認識すれば戦争が早く終息し、ロシア軍が撤退する可能性が高くなる」と述べた。

 実際、ショルツ首相率いる「信号連立」(社会民主党・緑の党・自由民主党)政権が2021年12月にアンゲラ・メルケル首相(在任期間2005~2021)の後を継いで登場した時には、このような事態を予想した人は多くなかった。二度も全世界を戦争の惨禍に巻き込んだという反省から、ドイツは戦後一貫して「非軍事的」な外交安保政策を守ってきた。1950年の朝鮮戦争を機にドイツ連邦軍が創設されたが、「ナチス・ドイツ」の過ちを記憶するドイツ人は、これを独自の武力手段ではなくNATOに貢献するための付随的な存在として受け入れた。その後、ドイツの外交安保路線は「小切手外交」(莫大な経済力を前面に立て国益を貫徹する外交戦略)を通じて軍国主義に反対し、外部紛争に介入しない方向に固まっていった。冷戦終結後もこの伝統は続いた。ドイツは米国主導のイラク戦争(2003)への参加を拒否し、リビア内の飛行禁止区域設定に関する国連安保理の表決(2011)で棄権した。

 さらに、連立政権を率いるようになったドイツ社民党は、ヴィリー・ブラント首相(1969~1974)時代から続く東方外交政策の遺産を継承する。同党は中国・ロシアとの関係を重視するメルケル元首相(キリスト教民主同盟)の「バランス外交」路線まで引き継いだ。「ロシアにエネルギーを依存してはならない」という米国などの引き止めを振り切って、ガスパイプライン「ノルドストリーム2」事業を続けた。

 国防分野への投資を最小限に抑えてきた政策も、そのまま続いた。ロシアが2014年3月にクリミア半島を不法合併した後、ドイツは国防予算を国内総生産の1.1%から1.5%に増やしただけだ。2022年1月までしても、ドイツは兵器支援を求めるウクライナの要求に対し、非破壊兵器である防弾ヘルメット5千個を送るという極めて消極的な対応にとどまっていた。

ドイツのボリス・ピストリウス国防長官が1日(現地時間)、ノルトライン=ヴェストファーレン州のドイツ連邦軍戦車大隊訓練場で開かれた火力試験で、レオパルト2戦車に搭乗している。ピストリウス長官はドイツがウクライナにレオパルト2を提供することを決めた後、戦車大隊を訪れ火力試験を参観した=アウグストドルフ/DPA・聯合ニュース

 2022年2月に入り、変化が始まった。ロシアの侵攻が行われる直前、新政府は「ノルドストリーム2」プロジェクトを突如中止した。24日に侵攻が行われると「大転換」が本格化した。2022年1月にはエストニアがドイツ製兵器をウクライナに支援するのを許容しなかったが、戦争が勃発すると、「時代転換」を宣言し兵器輸出を認めた。

 ドイツ政府が16日に発表した軍事援助リストによると、ドイツは戦争勃発後からこれまでウクライナに、ゲパルト自走対空砲▽ドイツ主導で開発した短距離空対空ミサイル「アイリスティー(IRIS-T)」▽各種弾薬など、100種類に及ぶ兵器と各種の装備を支援した。さらに、長い苦悩の末に、主力戦車レオパルト14台▽マルダー装甲車40台▽パトリオット防空ミサイルシステムなどを追加で支援することを確定した。ドイツ政府が昨年1月から今月13日までの約1年の間に支援した軍事支援額は25億ユーロを超える。ドイツのキール世界経済研究所の集計(2022年1月24日~2023年1月15日現在)によると、ウクライナに対する軍事援助額は米国(約443億ユーロ)が最も多く、英国(約49億ユーロ)、ポーランド・ドイツ(約24億ユーロ)の順だ。

 ドイツ連邦議会は昨年6月、1千億ユーロ規模の特別防衛基金を新設するためにドイツ基本法を改正した。この防衛基金は、米国製の戦闘機F-35A、ユーロファイターの購入などに使われる。ドイツ政府は昨年12月、80億3千万ユーロをかけて古いトーネード戦闘機に代わるF-35A戦闘機35台の購入を決めた。この戦闘機には米国製の核弾頭を搭載できる。今後、ドイツは毎年国防費としてGDPの2%(750億ユーロ)を「永久に」使うことになる。眠っていたドイツが、米国・中国の次に最も多くの予算を国防に注ぎ込む国へと変わったのだ。

ベルリン/ノ・ジウォン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/europe/1080670.html韓国語原文入力:2023-02-22 09:20
訳C.M

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