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トランプに続くバイデン…同盟国を絞り上げ、米経済を優先

登録:2022-09-05 11:12 修正:2022-09-13 08:25
[ニュース分析]自由貿易を揺るがす米国 
インフレ抑制法など自国だけ優遇 
「米国第一主義」でサプライチェーン再編 
同盟産業を吸収して雇用創出 
白人労働者層のための政策に集中
ジョー・バイデン米大統領が先月30日、ペンシルベニア州ウィルクスバリで銃器規制強化をテーマに演説している=ウィルクスバリ/ロイター・聯合ニュース

 「米国を再建し納税者のお金を使う時には我々は米国産を買う。米国人の雇用を支えるために米国産を買う」

 米国のジョー・バイデン大統領は今年3月1日、一般教書演説で「バイ・アメリカン」(Buy American)を強調した。空母の甲板から高速道路ガードレール用鉄鋼まで、すべて米国産を使うと発表した。また「より多くの自動車と半導体を米国で作らなければならない」と述べた。このような約束は、先月の「CHIPS法」と「インフレ抑制法」の発効で現実化している。今年4月、米国産の鉄鋼だけを使うようにした「インフラ投資と雇用法」のガイドラインが出たことも含めれば、インフラ、電気自動車(EV)、半導体で米国産の使用を強調した一般教書演説の内容が着々と実行されているということだ。

 しかし、米国の競争力強化と中国牽制を名分に掲げた立法の動きは、韓国や日本、欧州連合(EU)など同盟に対する差別と疎外にともなう逆風も起こしている。特に、北米製のEVだけに最大7500ドルの補助金を与えるという「インフレ抑制法」は、世界貿易機関(WTO)の差別禁止規範や自由貿易協定(FTA)の最恵国待遇条項違反という議論に見舞われた。韓国が対応に乗り出し、EUも「外国製に対する差別」であり「WTOと両立しがたい法律」と反発している。

 半導体の生産比重を上げようとする目標と中国牽制の意図が調和し、「第3国への投資禁止条件つき補助金」という聞き慣れない企業活動制限規定を盛り込んだ「CHIPS法」も、議論の的となっている。米国の半導体生産の比重は1990年には37%だったが、今は12%まで落ちている。米国に大規模投資をする予定のサムスン電子やSKハイニックスが補助金を受けようとすれば、中国事業への支障が避けられなくなる。

 米国は生産能力を考慮して自国産の割合を調整する計算的な姿も大っぴらに示している。ホワイトハウスは5500億ドルを投入する「インフラ投資と雇用法」で米国産の鉄鋼だけを使うようガイドラインを定め、他の製造品は55%のみ米国産にするようにした。「インフレ抑制法」のEVバッテリー条項でも、素材・部品・時期によって米国産の割合を段階的に引き上げるようにした。

 「インフレ抑制法」と「CHIPS法」のつながりも、米政府と議会の周到さを示している。バイデン政権は2030年までにEVが新車の半分を占め、そのうち相当量を米国で製造することを目標にしている。半導体はEVの重要部品だ。国家・企業間の競争が激しく、高賃金の雇用が多い半導体、バッテリー、完成車の米国内生産を有機的に拡大する「ビッグピクチャー」の中で動くわけだ。

 米国内外の専門家らは、生産施設を誘致するために同盟を疎外し、自国産を堂々と優遇することは、サプライチェーン再編戦略の核心を示していると指摘する。コロナ禍、ウクライナ戦争、中国牽制の必要性を契機に推進されたサプライチェーン再編は、生産基地の米国移転と同盟・パートナー国家とのサプライチェーン協力強化が二つの軸だ。この中で生産施設の誘致に重きを置きながら、外国に出た企業の本国回帰を意味する「リショアリング」を越え、同盟国の生産施設まで吸収しようとする動きが続いている。

 米国の国内政治もこのような「経済ナショナリズム」の背景となっている。バイデン大統領は主要支持基盤である白人労働者層に訴える政策に集中している。民主党は2016年の大統領選でヒラリー・クリントン候補がドナルド・トランプ候補に敗れたのは、白人労働者層の開放的貿易政策に対する反感が大きかったためとみている。バイデン大統領は「CHIPS法」署名式で「我々は日常的な費用を下げ、雇用をつくりだすために半導体チップを米国で作らなければならない」とし、「雇用」を繰り返し強調した。前任のトランプ政権が掲げた「米国第一主義」(アメリカファースト)の流れが、バイデン政府まで続いているという指摘も出ている。

 米国の保護主義強化は、第2次世界大戦後に自国が主導した自由貿易秩序に打撃を与えるという点で、長期的に世界経済全体に負担を与えかねない。「通商タカ派」と呼ばれるキャサリン・タイ貿易代表部(USTR)代表は昨年、承認聴聞会で「関税と貿易の壁の除去に重点を置くか」という質問に、「5年か10年前ならそうだと答えたと思うが、(中略)一番最近の歴史を見ると、我々の貿易政策は非常に苦しいものだった」とし、自由貿易政策からの大転換を予告した。「グローバル化の敵が徘徊している」というタイトルの「フィナンシャルタイムズ」の最近のコラムは、「10年前までは米国政治で保護主義は口にすることもできない言葉」だったが、今は違うと述べた。

ワシントン/イ・ボニョン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/america/1057452.html韓国語原文入力:2022-09-0507:00
訳C.M

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