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キッシンジャー氏「ウクライナ戦争後、中ロ連帯を壊す別々のアプローチが必要」

登録:2022-05-11 07:26 修正:2022-05-11 08:04
キッシンジャー元米国務長官「フィナンシャル・タイムズ」対談 
「中国とロシアを団結させる敵対的なアプローチは愚かだ」 
「『民主』対『独裁』の枠組みでの政権交替の追求も避けるべき」
ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官が7日、ワシントンで「フィナンシャル・タイムズ」米国版編集者のエドワード・ルース氏と対談している=フィナンシャル・タイムズのウェブサイトよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 冷戦で米国が勝利を収めた決定的なきっかけとなった「デタント」を実現した戦略家のヘンリー・キッシンジャー元国務長官(98)が、ウクライナ戦争が終わった後、米国は中国とロシアの連帯を「弛緩」(弱体化)させる別々のアプローチを取らなければならないと忠告した。

 キッシンジャー元長官は、9日付の英国紙「フィナンシャル・タイムズ」米国版の編集者エドワード・ルース氏との対談で、1970年代に中国とロシアの連帯を壊し米中和解を主導した自身の経験を回想し、「中国とロシアの同盟は固定された利害ではない。今はそれが作られているが、私には本質的に永遠の関係であるようにはみえない」と評した。キッシンジャー元長官は、冷戦期にイデオロギー論争と領土紛争で悪化した中ロ間の亀裂に入り込み、中国と奇跡的な和解を実現した。米中の関係改善で孤立したソ連は、結局は1980年代末に崩壊の道を進むことになる。

 キッシンジャー元長官は、「ウクライナ戦争が終わった後、地政学的な状況は重大な変化をもたらすだろう」とし、「中国とロシアが、すべての予測可能な問題で同じ利害を持つということは自然でない」と指摘した。さらに「私たちが(意図的に中ロ間の)意見の違いを作りだすことはできないが、状況によってはそのようなことは可能だ」とし、「二人のライバルを一つにまとめさせるやり方で敵対的な立場を取ることは、賢明ではないと思う」と述べた。米国は、中国とロシアに別々のアプローチをして、両国関係に亀裂を入れなければならないという主張だ。

 これに先立ち、ホワイトハウス国家安全保障会議のカート・キャンベル・インド太平洋調整官は、ウクライナ戦争勃発直後の2月28日、米国が「同時に二つの紛争地域に深い関与を継続しなければならない時期に入ったようだ」と述べた。米国がアジアで「中国の浮上」に対応するために、クアッド(QUAD)やオーカス(AUKUS)などを通じて同盟国や友好国をまとめる過程で発生した今回の戦争では、欧州戦線でロシアとも敵対せざるをえなくなった「戦略的な苦境」を示した言葉だった。キッシンジャー元長官のこの日の発言は、米国が「二つの戦争」で中国とロシアを同時に相手にしてはならず、両国に異なるアプローチをし、長期的には二つのうち一つとの関係を友好的に変えなければならないという意味だと読み取れる。彼は「中国とロシアのうち、どちらか一つの国が西側の親密な友人になるはずだということではなく、特定の事案において私たちが別々のアプローチを取る選択肢があるということを意味する」とし、「今後、ロシアと中国をひとまとめにしてはならない」と繰り返し忠告した。

 キッシンジャー元長官はさらに、人類は現在、民主主義と権威主義が競争する「変曲点」上にいるとするジョー・バイデン大統領の認識に対しても、批判的な立場を示した。彼は「技術の進化と現在存在する兵器の途方もない破壊力を考えると、私たちは政権交替の追求を避けなければならない」と述べた。

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と中国の習近平国家主席に対する個人的な経験と評価も示した。キッシンジャー元長官は、過去15年間、プーチン大統領に1年に1回は会ったと述べ、「彼の基本的な確信は、ロシアの歴史に対する神秘的な信念のようなもの」だとしたうえで、「(かつてソ連の影響下にあった東欧の)全領域がNATO(北大西洋条約機構)に吸収されるということに脅威を感じたため傷ついた」と語った。さらに、「プーチンは、自身が国際的に直面する状況を誤算し、ロシアの能力を確実に誤算した」とし、「解決の時期が来た時、そうしたことを考慮する必要がある」と指摘した。習主席に対しては、「いかなる中国の指導者であっても、プーチンが直面したような状況を避け、いかなる危機でも自分たちが不利な立場に陥らない案を講ずるものとみられる」と述べ、中国が台湾海峡などでウクライナ戦争のような危機を作ることはないと診断した。

チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1042299.html韓国語原文入力:2022-05-11 02:46
訳M.S

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